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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングseventh【04】


「大きくなったよなァ、灯真」

「そうだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と心配だったもんだ」


 しみじみと弟の成長を感じながら居間で茶を啜る。目の前では朝食を食べる博士。朋音は早朝から依頼が入っていて見送った後そのまま仁樹の部屋へと向かい、いまはオンラインで相談を受けている。


「ジャーマンポテトか。この前の食べたポテトサラダといい、兄弟揃ってジャガイモ料理が好きだな」

「遺伝かもしれねェな。お母さんもジャガイモが好きだったんだよ」


 兄弟だからと言って好みが必ずしも一緒とは限らないが、弟と好物が同じであることは仁樹にとって恥ずかしくもあり嬉しいものだ。


「というか。ジャガイモ、人参、玉葱と相変わらずこの三つは段ボールで買い込んでるな」

「その三つがあれば大抵の物は作れるからな」

「確かに。それに棚にあるうどんやら蕎麦やらトマト缶やらのあの大量ストック見れば一か月は籠城生活できるぞ」


 防犯力の強い一軒家に大量の食糧備蓄、そして医者の天才。ここに戦力である仁樹が加われば最強の城の完成である。何と戦っているのか、と聞かれてしまうと黙ってしまうが。


「本当にスーパー嫌いだよなァ」

「嫌いじゃない。苦手なだけだ」

「スーパーに行かないってことは同じだろ」

「今の時代、買いたければ通販でも買える。わざわざ苦手な場所に行かなくてもいいだろう」


 そう言って博士は野菜たっぷりのコンソメスープを口に流し込む。確かに便利な時代にはなったが通販では手数料が掛かるし割高だ。だが、そんなことを気にもしていない博士に「このブルジョワが」と目を半目にして呆れる。勿論、そんな目を向けられても博士はどうってことはなくそのまま話を続けた。


「今日はアパートに帰る日だったな」

「あァ。俺は遅番だけど朋音の依頼の関係上昼前にはここを出る予定だ。夕飯は作っていくからリクエストあれば言ってくれ」

「和食が食べたいぐらいだな。灯真からのリクエストはなかったのか?」

「その灯真が博士の意見を優先してくれって言ったんだ」

「灯真……!」


 愛息子の優しさに思わず箸を止めて感動する博士。いつもの光景に冷ややかな目で見ながら「豚汁でも作るかァ」と立ち上がって夕飯の準備をし始めることにした。


 トゥルルン、トゥルルンーー


「おっと、食事中失礼」

「おォ」


 突如着信を知らせる博士のスマホ。食べていたものを飲み込んで一言断ってから電話に出た。その姿を横目に見ながら仁樹は材料を台所に並べて調理器具を棚から取り出す。まずは食材を切るところからだろう。慣れた手つきで並べられた食材である野菜の皮次々とを剥いていく。

 

「……妙なことはわかった」

「妙なこと?」


 暫くの間、電話をしていた博士だったが通話を切って話しかけてきた。

 財峨の調査員からの報告だったのだろう。箸を持たずにさっきと打って変わって険しい顔の博士に一度は振り替えながらも仁樹は食材を切りながら続きを促した。


「犯人が目覚めた後、すぐに警察の姉ちゃんたちによって取り調べが行われたらしい」


 財峨の人間はどこにでもいる。故に世間に公表される前の情報など容易に手に入れられる。


「赤いスプレーのことを覚えているか?」

「あァ。いつも壁などに掛かれるメッセージだろ?」


 毎度事件が起こる度に 『Hello. I'm a player! Let's play together!』と現場に書き残される赤い文字。

 連続犯罪者、死の遊び人(デスプレイヤー)のメッセージ。


「それがどうしたんだ?」

「それを知らないと言っていたらしい」

「知らない……?」

「あぁ……。()()()()()()()()()()()()()()()()

「えッ……?」


 聞き間違えたのではないか、と。手を止めて聞き返すように博士に視線を向ける。だが、その目は聞き間違えではないと語っていた。


「どういう意味だ?」

「そのままの意味だ。犯人はメッセージなど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「だったら、誰が――ッ!」


 華花菜たち相手に犯人が嘘を付く事なんて無理に等しいことを二人は知っている。

 ()()()()()()()。犯人ではない『誰か』が。

 突然出てきた謎に混乱しながらも必死にその『誰か』を考え始めた。


 相手は素人。殺戮を好む素人の犯罪者だ。

 そして、言動全てが子どもに見えてしまう程に愚かだった。

 だからなのか。目立ちたがり屋のように見えてしまい、そのメッセージも当然犯人の仕業だと勝手に思い込んでいた。

 だが、その考えは「知らない」という答えにて否定される。


(目立ちたがり屋――……)


『その第三者さえ襲われていたのなら無理は無いけど、彼らは全員無傷』

『無傷で無事。そして犯行を見つけて警察に連絡したんなら……』

『それが全くないっていうのが、不自然ってもんだ』

『第三者が脅されていたとかは? そして、一ヵ月もこんな派手な行動をして見つからないと考えると……』

「共犯者がいるってことかな……?』


 推理の内容を思い出す。


(共犯者――……!)

「何か気になる点があったか?」

「博士。その犯人は共犯者がいるって言ってたか?」

「いや。言っていない。警察の姉ちゃんはいるに決まっている、と主張しているらしいがな」

「あァ。いるに決まっている」


 あのような男が一人で完璧かつバレずに犯罪を連続ですることなどどう考えても無理だ。犯人と対面したこともあってそれを迷いも疑いも無く言い切ることができる。

 ……ということは、メッセージの件については共犯者が書いたという考えになる。


 協力しているのではなく、利用していた共犯者。

 しかし。それでは、何故その共犯者はこんな子供染みたことをしたのか。

 捕まらない自信を見せたかったのか。本当に遊び心でやったのか。

 証拠を残さないほどの凄腕であるにも関わらず、わざわざ犯人を決定づける証拠を書き残していったのか。


「……」


 犯人を決定づける証拠──……


「……そうか」


 ぽつりと仁樹は溢した。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 犯人がミスを犯したあの日。グーテンタークの爆発事故の時に共犯者は犯人にもバレずにずっと傍にいて監視していたはずだ。そうでなければ仁樹に狂いなく命中させるタイミングで看板を落とすことなど不可能なのだ。

 そして、あの事件ではメッセージは残していない。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 事件現場は爆発が起きた後、警察が到着するまで雅晴を含めた数名の店員たちが見張っていた。またこの時は犯人の隠れ家がバレてしまったこともあって、あの時は流石に共犯者も諦めたのだろう

 だが、今回はどうだ。今回も共犯者は監視していたはずだ。

 仁樹が犯人を倒して警察が到着するまでの僅かな時間。それだけの時間があれば、手際のよい共犯者ならメッセージを残して犯人の回収ぐらい容易であろうに。回収するどころか、赤いスプレーを倒れた犯人に持たせて警察に引き渡すように置き去りにしていった。


(利用し終えた犯人を切り捨てたんだ――……)


 そして、


『第三者が脅されていたとかは? そして、一ヵ月もこんな派手な行動をして見つからないと考えると……』


 この会話から導く答えは一つ。


()()()()()()()()()()()


 看板が落ちた現場から店へと引き返したとき。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 証拠を消さなければならないというのにどうして仁樹を襲わなかったのか。


 共犯者は知っていたのだ。

 仁樹の強さを。異常性を。危険性を――


 何を目的に。共犯者は犯人を利用したのか。

 今回の事件はまるで遊びに付き合った……、いや、犯人で遊んだいたかのように何処となく感じてしまう。


 人を殺す行動に協力し、仁樹を知り、財峨ではない。


 人をまるで駒のようにして、残虐を楽しむ人物。


 ()()()()()()()()()()()()――


 人の死。死の運命――


『素晴らしいじゃないか――!』


「――ッ!!」


 息が、止まった。


「そう、かよ……」


 全ての謎が――

 ()()()()()()()()()――……


 頭の中でバラバラになっていたピースが全て、額縁の中に当てはまっていく。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――……


「お前も知っている相手か?」

「あァ……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 一度だけ。たった一度だけその姿を見れば忘れることができない。

 彼の存在は見た者すべてに焼き付ける。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


『彼女こそ、私に相応しい――!』


「――ッち!!」


 握っていた包丁を湧き上がる感情のままに木のまな板へ突き刺す。

 手が震えている。だが、それは『恐れ』を表しているものではない。


「こんなことする奴は『あいつ』しかいねェ……!!」


 腹の中で煮えくり返る『感情』。それに反応して握る手に力をを入れる。

 包丁を握りつぶしても可笑しくない『感情』を表すその力で――


 仁樹はその『感情』を作り出した男の名を口にする。


 『()()()()()()()()()()()。地を這うようなその低い声で――


「千架ァ――!!」


 その漆黒の瞳には激しき、『憎悪』しか秘められていなかった――……




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