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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングseventh【03】


《先生! 今度はいつ病院にお越し下さいますか? われら一同先生のお話をぜひ時間を掛けてより詳しくお聞きしたいと思っております》


「留守電にまで信者のメッセージが来てるぞォ」


 留守電のメッセージに憐みの目を博士に送る仁樹。当の本人はそんな願いなど聞かないとでもいうように戸惑いなく削除ボタンを押した。


「尊敬してくれるのは嬉しいが、プライベートを壊す勢いで電話を掛け続けるのは止めて欲しいな」

「もはやストーカーじゃねェかよ」


 久しく天気が晴れた今日。博士と二人で書斎にて大量のファイル整理を行っていた。

 一つ一つが厚くて重いそれらには膨大な情報が書かれているのだろう。大量の紙の束にカラフルな付箋が所々に挟まっているのが目の入る。


「一族会議に参加するためのはずが、予定よりも何日も夜遅くまで緊急講義やら俺がやらなくていい手術やら……」

「まァ医者の天才がすぐ近くにいるんだ。何でも聞きたがるってのが人間ってもんなんだろうな」

「医者でも闇医者だぞ」

「免許持ってんだろ」

「持っていても国で認められた範囲を著しく逸脱していたら闇医者だ」


 仁樹が『人形』だった時代、博士が彼のメンテナンスを行っていた。『一族の思い』を叶えるためには万全の状態でなければならなかったため、主に肉体的損傷について日々細かくチェックを行っていたのだという。幸いにも『眠れない四年間』の間に仁樹の肉体が大きく損傷することはなかっただが、もし彼の身体に弾丸が撃ち込まれようとも博士の腕なら死の淵から生還させることができるだろう。


「そういえば。今回の会議内容をお前に話していなかったな」

「財峨の中で行方不明者が出たって話だろ? 進展あったのか?」

「いや、そっちの方は停滞中だ。今回の会議では連続犯罪者について調査報告されてな」

「え、そっちの方も調べてたのか?」


 連続犯罪者、別名は死の遊び人(デスプレイヤー)。その名前を聞いて、仁樹は先日雨の中で行われた戦いを思い出す。

 あの時真っすぐに落とした傘は貫通することなく脇腹辺りで寸止めした。

 元々刺す気などさらさらなかったのだ。だが、犯人には絶大なる効果だったらしくそのまま泡を吹いて気絶。その姿は情けないを通り越して哀れとも見えるが同情はしなかった。

 他人にした行為は必ず自分に戻ってくる。犯人が感じた『死への恐怖』は、巡り巡って戻ってきた『恐怖』。

 彼が周りに与え続けた『罪』への『罰』なのだから。


「普段なら議題にも上がらない内容なんだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()。もしかしたら保守派の財峨が裏で動いているのでは、と『主』が心配して調査していたんだ」

「あァ、『主』が……」


 合点がいったのか。『主』という言葉に仁樹は軽く何度か頷いた。


 財峨一族は現在、二つの派閥に分かれている。

 長年の『一族の思い』を叶えようと神の一族と世界に罰を与えることを願う保守派。

 過去の出来事に捕らわれず、()()()()()()()()()()()()未来を見ていこうと唱える革命派。

 現在は革命派の方が圧倒的に優勢であり、そんな彼らを率いているのが財峨の最高責任者――現在の『主』である。


「財峨は関わってたのか?」

「いや、今までの事件を併せても関わっているとは言えないという結論になってな。『人を殺す』という目的は同じだが、お前の時と比較するとあまりにも証拠があり過ぎる」

「……確かに。俺の時は証拠が残らないように徹底してたのに対して、最近の事件は証拠となるものが多すぎる」


 だけど、偶然という言葉では片付けられない違和感が仁樹を襲う。


「仁樹くん、博士。そろそろ灯真くんが学校行きますよ~」


 頭を抱えていると扉が開いて朋音が覗き込んできた。


「あァ、もうそんな時間か」

「灯真くん久し振りの登校でウキウキしてるよ」

「そうか。ならその姿をちゃんと見送らなければな」


 数週間振りの我が子のお見送りに嬉しくて綻ぶ博士。いつもの親バカ姿に呆れながら仁樹も続いて弟の見送りのために玄関へと向かった。


「今日はお父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもいるー!」


 玄関では既に靴を履いて通学帽子を被った灯真が嬉しそうにニコニコしながら待っていた。まだまだ小さいその身体ではランドセルが大きく見えて、その姿が微笑ましくも感じる。


「さて、灯真くん。ハンカチとティッシュは持ったかな?」

「持った!」

「給食セットは?」

「持った!」

「体操着は?」

「持った!」


 朋音の忘れ物チェックに元気よく答えながら証明するために灯真はチェック物を手に持って大きく腕を上げる。


「忘れ物はないね!」

「ないよー!」

「本当かァ? 前みたいにピアニカ忘れて俺が走って届けるってことにはならないかァ?」

「ならないよー!」


 ちょっと意地悪したくなって揶揄うと灯真はプクーっとフグみたい頬を膨らませる。その顔が可愛くて朋音と笑っていると隣から小さいシャッター音が聞こえ、振り向くと博士がスマホを向けて何度も写真を撮っていた。


「あァいつも通りかァ」

「息子の成長は常に写真に残したいからな」

「博士~後で送ってください」

「勿論いいぞ。さて、灯真」


 博士が灯真の前にしゃがみそのランドセルに引っ掛かっている巾着の中を確認する。


「うん、薬の数は足りているな。今日も元気に、でも気分が悪くなったらすぐに先生に言うんだぞ?」

「はーい、お父さん! じゃぁ行ってきまーす!」


 そう言って灯真は玄関の扉を開いて外の世界へと出かけていく。扉が閉まる前に振り返って元気いっぱいな笑顔を見せて。


「行ってらっしゃい」

「車に気をつけろよ」

「今日も頑張ってきなさい」


 三人に見送られながら灯真は久しぶりに大好きな学校へと向かっていった。




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