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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングseventh【02】


「朋音の『力』のために……、まだまだ必要なんだ」

「朋音様のためにも。そして千架様のためにも」

「そうさ!!」


 突然の大声。同時に無残な姿のケーキにフォークを先程よりも深く差し込み、そのまま立ち上がった。

 テーブルが揺れ、僅かだが珈琲が零れる。


「私たちのために必要なのさ! ()()()()()()()()()()()()()!」


 意気揚々としたその顔で、その声で。芸術という素晴らしさを語るように。

 恐ろしきことを高々と言い放ち、そのまま千架はソファーへと倒れ込んだ。


「朋音の『力』は素晴らしい。もっと磨けばより優れたものになるのは間違い無い」

「おっしゃる通りです」

「ふふ。……なぁ」

「はい」


 零した珈琲を綺麗に拭くリアムだが、千架の声を聞き逃すことはない。すぐに返事を返した。


「この前、気まぐれで作った動画はどうなった?」

「動画再生数はトップ十に入りました」

「適当に考えた玩具は?」

「即日完売です」

「ふざけて考えた携帯デザインは?」

「人気機種に」

「面白半分で怒らした社長の会社は?」

「倒産させました」

「途中で飽きたアプリのゲームは?」

「未だにアクセスが途絶えることはありません」

「ふーん。……では」


 千架は不敵に笑った。


()()()()気合いを入れて書いた小説『狂い人(クレイジーヒューマン)』は?」

「売り上げ書籍第三位です」

「……ふふ。ふは、ふはは、ふははは!!」


 腹を押さえて足をばたつかせ、笑い声を上げる。

 庶民にとって震えるほどの高価な食器たち。千架が作り上げた色とりどりの折り鶴の束。

 周りにあるものなど一切気にかけることもなく、その長い足を大きくばたつかせた。


「ホント、ホント簡単だな!! ひ、ひ、腹痛い!! 私が本気を出せば、ふ、ふふ、一位だって、普通に取れる!!」

「当たり前ですよ」

「そう!! ()()()()!!」


 笑いによって目から流れる涙を腕で擦るように拭き、リアムの方へ顔を向ける。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 当たり前。誰もが簡単に、辿り着けない高みへ辿り着くことが。

 血が滲む努力をしようと報われない道を。挫折を繰り返し歩むこと諦めてしまう困難な夢を。

 千架は『当たり前』だという。出来て、当然だといってしまう。


「いや、()()()()()()()()()()()()()()――?」


 私は、『()()()()()()──!!


「全ての者が畏れ、願い、望む。穢れ無き、気高き、白き存在である『神』なのだから──」


 いかに、『神』が偉大な存在であるか。尊い存在であるか。果てしなき存在であるか。

 彼が放つ一言一言に、『神』を感じさせる。

 『神』の意思を感じさせる――


 千架は――『神』であり、

 誠の名は――紳畏千架(しんいせんか)――


 『紳畏(しんい)』――

 『神意(しんい)』――


 『神』と『意』――


〝『神として意を決する者なり』〟―――ー


「『神』である私に『普通』なんてものは似合わないだろ?」

「『神』に相応しいものではないといけません」

「それが、〝朋音〟だ」


 ケーキ、と呼ばれていたものを下げさせて新しい珈琲を淹れるように命令する。置かれているタオルで手を拭き、そしてまた新たな色紙を手に取った。色は青。


「私の持っていないものを朋音は持っている……。本当に、素晴らしい」


 三角に折り、また三角に折る。二回折ったあとは、紙と紙の隙間に指を入れて広げて開き潰す。


「『死の瞬間を見る力』――」


 止めることなく手を動かし、あっという間に三百六十九羽目の折り鶴を完成させた。

 糸に通し、また新たな色紙を摘み取る。色は黄。


「『世界に愛された存在』――」


 折った後に指をスライドさせ、綺麗な折り目を作る。


「愛されたが故に与えられた力。そして、それに耐えゆく朋音の『精神(こころ)』――あぁ、最高ではないか――!」


 千架の口が弧を描く。


 『死の瞬間を見る力』。

 その名は、霊能力。


「朋音以外にも、その力を持つものは存在する。……だが、全員が全員、朋音のようではない」


 霊能力と聞いて何を想像するだろうか。そして、考えたことはあるだろうか。

 彼らの苦痛を。心の叫びを。

 彼ら自身の立場になって、考えたことがあるか。


 能力を持って生まれた彼らが。目覚めた彼らが全員、その力を受け入れられると思うか。

 答えはノー。受け入れられない者だって存在する。


 受け入れるべきか。無視するべきか。拒絶するべきか。

 彼らの苦悩は、ここから始まるのだ。


 例え、自分自身が受け入れられても周りはどうだ。

 普通とは違う。可笑しい、狂っていると周りが受け入れなかったら。

 その力を持っているがゆえに。ただそれだけで孤独を味わい、理解されない辛さに苛まれる。


 能力を認められなくて、逃げたくて。

 そうして自分自身を傷付けてきた者たちだってこの世に大勢いるのだ。


 朋音のように受け入れ、力と共存することは簡単ではない。

 容易に考えるものではないのだ。

 彼らには、彼らの痛みがあるのだから――


「朋音のような者はそう簡単にはいない」


 彼女は壊れずに生きている。その力を己の運命だと、宿命だと受け入れている。

 周りにいる者たちが理解し、支えているからか。

 世界が彼女を愛しているからか。

 その身に宿る、彼女の『精神(こころ)』が強いからか――……


「そんな、朋音だからこそ……」


 三百七十羽目。慣れた作業は時間が経つにつれ、完成させる時間を短くさせていく。

 流れるような動きでまた糸に通し、新たな色紙を手に取った。色は緑。

 三角に折り、また三角に折る。二回折ったあとは、紙と紙の隙間に指を入れて広げて開き潰す。

 ……だが。この作業の間、彼の意識は色紙などには向かれていなかった。


 意識するは、ここにはいない彼女のこと――

 明るい髪の色。ブラウンの瞳。長いまつ毛。ぷっくらと膨らんだ唇。桃色の頬。白い肌。美しき身体。

 女性が焦がれるもの全てを揃えた『絶世の美女』と称されし朋音を千架は想い浮かべる。


「彼女は、私の『妻』に相応しい」


 手には三百七十一羽目の折り鶴。それもまた糸に通し、その手は新たな色紙へと伸ばした。


「だから、美しくなれ―――」


 色は再び、『白』を選ぶ。


「より、私に相応しい『妻』となれ――」


 そして、三百七十二羽目を作り始める――……




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