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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングseventh【01】


「~♪」


 青年が一人、ソファーに座っていた。


 広々とした部屋に壁一面に広がる大きな窓。そこから見えるのは緑の木々や月を映す湖といった自然溢れる風景が広がっている。

 続いては部屋の中。家具も食器も衣類も食べ物までもが全て素人が見ても一目でわかる高級品で揃えられている。一体この部屋にあるものだけでどれぐらいの金を注ぎ込んだのかわからないほどにだ。

 数々の高級品に囲まれた世界。返って息苦くなりそうな部屋で青年は鼻歌を奏でながら、その手で色紙を折っていた。


 紙は白。真っ白。純白。三角に折り、また三角に折る。二回折ったあとは紙と紙の隙間に指を入れて広げて開き潰す。


「出来た♪」


 細かな作業を続けていると、最後には折り鶴が完成していた。

 歪みもなくてズレもない。綺麗に仕上がった折り鶴はそばにあった糸付きの針に通される。

 糸には既に何百羽ものの折り鶴が繋がっていて鮮やかな束が出来上がってきていた。


「こいつで、三百六十七羽目」


 折り鶴の束を傍らに置き、次の折り鶴である三百六十八羽目を作る為に新しい色紙を手に取る。

 次の色は赤。


 コンコンー―


 後ろのドアからノックの音が聞こえた。


「入れ」

「失礼します」


 ドアが内側に開かれる。

 入ってきたのは黒いスーツを着た男。肌が黒く、ガタイがいい。

 男は背筋を伸ばして一礼してから部屋に入り、ソファーに座る青年へと歩みよってまた一礼を行う。


千架(せんか)様」

「元気か、リアム?」


 名を――、『千架』と呼ばれた青年は振り向いた。


 一度だけ。たった一度だけその姿を見れば忘れることができない。

 彼の存在は見た者すべてに焼き付ける。

 目。鼻筋。口元――どれ一つ欠点のない端麗な顔立ち。

 もはや「美しい」という言葉さえも無礼と思えてしまう程に無駄のない完璧な容姿。

 何よりも印象的なのはその整った口で作る妖艶な笑み。それを見ただけで老若男女すべてが心を乱され、見惚れてしまう。

 『絶世なる美男』――

 残念ながら、それ以上に彼の魅力的な姿を表現できる言葉が無い。言葉に出来ないのだ。

 だが、これだけは言える。

 彼を見れば『忘れる』という『愚かなこと』は誰もがしないであろう――……


「ワタクシ如きの体調をご心配いただき光栄です」

「お前が動けないと私が困るからな」


 千架は振り向いたにも関わらずスーツの男――リアムを視界に入れないまま、手に持っている色紙のみを見ている。宙に浮いているにも拘らず、端と端を狂いもなく綺麗に合わせて折り鶴を作り続けていた。


「それで、どうした?」

「ご報告があります」

「あぁ、報告しながらでいいから珈琲をいれてくれ」


 三百六十八羽目の折り鶴を完成させて糸に通し、鶴の束を今度は適当にそこら辺に投げ捨てて床に無造作に置かれていたアイパットを拾う。


「ついでに甘い物も欲しい」

「お作り致しましょうか?」

「いや。私が作ったケーキが冷蔵庫にあるだろう? 共に食べようじゃないか」

「わかりました」


 命令に従い、リアムは部屋についている広いキッチンへ向かった。

 千架はその男性として魅力的な指でホームボタンを押し、真っ黒だった画面を起動させて適当なアプリから今日の世界の情報を流し読みし始める。


「報告は何だ?」

「例の男が捕まりました」

「例の男……、あぁ、『死の遊び人(デスプレイヤー)』とかいう()()()()()か」

「はい」

「お前が拳銃やるって言ったらはしゃぎ回ったあの愚か者だな」

「その通りです」


 すると千架は次に何やら表みたいなものを画面上に開き、文字や数字を打ち込み始めた。


「一ヶ月……」


 整った口からため息が零れる。


()()()()()()


 上質な素材でできたソファーに寄りかかり、良い結果を書き残せなかったアイパットを片手で適当に後ろへと放り投げた。ガシャン――とフローリングへと落ちていったアイパットは高い音を立てる。


()()()()()()()は遅くても二回目ぐらいには警察に捕まっているのに」

「褒美をやらないと本気に人を殺しにいきませんでしたから」

「本当に……使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 キッチンから匂う淹れたての珈琲。それをケーキと共に千架のもとへは運んでくるリアム。


「次のアテは?」

「残念ながら」

「そうか。まぁ、座れ」


 テーブルへと並べられていく珈琲とケーキ。

 リアムはまた一礼し、千架の座っていないL字に並ぶソファーに座る。

 置かれたケーキはまるでパティシエが作ったといっても不思議ではない華やかなもので、飾られたフルーツはまるで芸術品の花のように咲き誇り、食べることが勿体無く思えてしまう程の出来栄えだった。


「そういう人間は少ないから困る」


 だが、千架はプロ顔負けのケーキを躊躇なくフォークで刺した。そして刺したまま口に運ぶことなく、珈琲の入ったカップに口を付ける。


「……うん。お前の珈琲はやはり美味しい」

「勿体無きお言葉です」


 自分の言葉に深々と頭を下げるリアムの姿に、「ふふ……」と笑いが千架の口から零れる。


「どういたしましたか?」

「お前はいつも機械ように話すと周りから言われているのが、私と話すときは『感情』を見せる」

「ワタクシにとって、千架様以外はどうでも良いのです」

「嬉しいな。けれど。今後は私と――」


 カップを皿に戻し、ケーキに刺したフォークを抜き取り、


()()()()()


 再びケーキに突き刺す。


 刺して、刺して、刺し続ける。

 豪華な飾りつけはボロボロに。フルーツもスポンジもクリームも。

 原形をなくしていき、食欲を無くす無残な姿へと変り果てていく。




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