神と罪のカルマ オープニングsixth【05】
携帯からは通話終了時の音が流れる。
華花菜の想いの強さによるものか。気付かぬうちに歩んでいたはずの仁樹の足が止まっていた。
「……」
縁 朋音───
彼女の力────
仁樹は思い出す。
数年前に、始めて出会った彼女に一番近い人物を――
『朋音はね。とても幸せな家庭に生まれて来たんだ』
『優しい伯父さんと伯母さんの元に生まれて』
『大切に育てられて』
『親戚中に可愛がわれて』
『朋音ってさ。素直だろ?』
『優しくて、おっとりしてて』
『ちょっと子供っぽいところがあって』
『近所の人にも人気があってさ』
『幼い頃』
『公園で死んでいた野良猫を見つけたんだ』
『朋音はさ』
『躊躇いもなく、自分の腕の中に抱いたよ』
『いっぱい涙を流してね』
『初めて見たはずの猫に』
『生きてくれてありがとうって』
『ずっと泣きながら言ってた』
『最後には自分の手をボロボロにしてまで』
『穴を掘って、墓を作ってあげて』
『名前までつけてあげた』
『そういう子なんだ』
『優し過ぎる故に』
『命を大切にしてきた』
『だからなのか』
『運命の悪戯か……』
『気まぐれか……』
『好きだからこその虐めるのか……』
『あの子に世界は』
『あんな力を与えた』
『あの子の霊能力は』
『他者を救う事が出来て』
『己を滅ぼす事も出来るもの』
『あの子や僕以外にも』
『霊能力を持ってる人はいる』
『だから、僕たちだけが』
『悲劇のヒーローやヒロインというわけではない』
『だけど』
『この力のせいで』
『人生を狂わした人も沢山いるだろう』
『この力と』
『一緒に生きて行くということは』
『自分自身が強くなければならない』
『生き抜く強さ』
『‶精神の強さ〟』
『あの子は』
『朋音は』
『君よりも』
『強いよ』
(わかっている……)
そんなこと、とうの昔にわかっている。
朋音の〝精神の強さ〟には自分なんて敵わないってことなんか。
仁樹が彼女を愛する前から――あの夕日の世界で出会った日からわかっているのだ。
あの時――『人形』であった仁樹は彼女の精神の強さに救われた。
仁樹だけでない。海琉も、華花菜も。彼女に出会った者は、みんな救われた。
朋音がいたから、自分たちは誰一人壊れることも、死ぬこともなかった。
仁樹は強い。しかし、所詮は『暴力』だ。
どれだけの敵を薙ぎ倒し払おうとも、『人形』であった仁樹にはそれ以上の強さを手にすることはできなかった。
もし、それ以上の強さがあったのならいまの自分はここにはいない、とはっきり言える。
「……帰るか」
もう遅い。考えるのは止めよう。
仁樹は再び歩み始める。
時間確認のためにスマホの画面に目を向けると、雨粒が画面へと落ちた。拭こうにも拭くものが無い。ずぶ濡れの服では尚更だ。
雨や曇天、湿度が高い日々が続いている今日この頃。今日の出来事も加えて気が滅入ってしまう。
「誕生日があるにしても梅雨の時期は、好きになれないな……」
雨が大変な六月──
(早く帰ろう――……)
朋音に会いたい。朋音に抱き付きたい。
自分を覆ってしまおうと襲い掛かてくる不安から。影から。何かと上手く言えないものから早く逃げたくて。
この弱くてどうしようもない精神を彼女に抱きしめて欲しくて。
仁樹は歩くスピードを上げた。
神と罪のカルマ オープニングsixth 終
神と罪のカルマ オープニングseventh 続




