神と罪のカルマ オープニングsixth【02】
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財峨一族は許せなかったのだ。
この世界が――
自分たちの『犠牲』の基にのうのうと生きている者たちが――
どうしても許せなかったのだ。
百年以上も前の話。
かつて、日本の繁栄を願った『神』たちは一つの実験を試みた。
――『強き人間』を作ること。
これからの世界と戦うために全ての分野に長けた戦士を人為的に作ろうとしたのだ。
一つの孤島を実験場に『神』は影である財峨一族の人間を使い、長い間『強き人間』をつくる人体実験を行った。
財峨たちの身体へ容赦なく劇物を使い、その身をメスで切り割いた。触れてはいけない領域である遺伝子すらも操作しようと何度も薬物を注入していった。
生まれてくる子どもすら人体実験のモルモット。遺伝子組み換えによって生まれた命は生物上の親にすら顔を見せることなく、実験の犠牲となっていく。もし、実験に耐えきれないほどに脆弱な体として生まれてしまえば、慈悲もなく生まれた瞬間に息の根を止められてホルマリン漬けとなる。
だが、『神』を名乗っていても成功することはなかった。
『神』と名乗る彼らすら生命の神秘――『神の領域』には踏み込んではいけなかったのだ。
実験は失敗。
彼らはその失敗を歴史上なかったことにするために、実験体であった財峨一族全員を島に置き去りにして、火を放ったのである。
その島で生まれた命を合わせ、総勢五十七名が大火に飲まれて死亡した。
残された財峨一族は皆、慟哭した。
何百年と『神』に仕えて彼らの闇、穢れ、軽蔑されしことを全部背負ったのに。
この事件により全てが裏切られた。
『罪』の一族として、『平和』を願ったのに――
何百年にも渡った『誓い』を『神』は破ったのだ。
道徳も何もない。醜く最低で最悪なことを『神』は財峨一族にへとしてしまった。
多くの財峨一族の――『人間』の人生を壊した――……
「お前たちは、我々の『所有物』だろう――!」
その言葉が響き渡ったとき、『神』と財峨一族が決別した。
許せない――
『誓い』を破り、それすら忘れた『神』を。
自分たちを『所有物』と言い切った『神』を。
背負わした『罪』の人生を軽々しくみた『神』を。
許せない――!!
何も知らない『世界』を。
自分たちの存在を知らないで生きている『世界』を。
『神』だけを称える『世界』を。
許すものか――!!
だから思い知らしてやろう、と思った。
自分たちの存在――『罪』の恐ろしさを。
『罪』を忘れたことへの『罰』を『神』と『世界』に与えようとした。
『罪』とは『責任』だ。
犯してしまい間違ってしまった過ちを誰もが背負わなければならない。
押し付けてしまった『罪』を決して忘れてはならない。捨ててはならない。
『神』だからといって逃げてはならない。
だから『罰』を与えよう、と思った。
『復讐』という『罰』を。
『罪』を軽んじた『罰』を。
『神』と――
彼らが守りたかった『世界』に――
だが、相手は『神』と名乗る者たち。容易ではなかった。
何度も財峨は『罰』を与えるべく立ち向かっていったが、願いは虚しく全てが失敗に終わる。
『罰』を与えるどころか窮地に追い込まれ、その度に北へと逃げて行った。
『神』に敵うわけがない。逆らうな、と――
まるで批判されているようだった。だが、それでも諦められなかった。
自分たちの仲間の人生を壊し、奪い、忘れ、あまつさえ所有物扱いをして見下した。
そんな『神』を許せなかった。
『神』という存在を否定したかった。
「ならば、時を待とう―――」
財峨一族の『主』が言った。
「盛者必衰の理。『神』だからといって永遠ではない。生まれてくる子が必ずしも天才とは限らない。持って生まれた才能を使えないかもしれない。無駄に終わらせるかもしれない。利口ではないしれない」
この世に、絶対的なものはない。
必ず穴は生まれる。
滅びへと誘う地獄の穴が――……
「――ならば、我らはその時の為に力を蓄えようぞ。あやつらに与える『罰』の力を」
『主』の言葉は財峨一族に希望を与えた。皆の悔しくてたまらない心に光を与えた。
「この世で最も恐ろしいものを……誰もが恐れる『罰』を与えよう」
誰もが恐れるもの――
誰もが必ず訪れるであろう、『恐怖』を――
「それを与える存在を作ろう」
これが――
「人を躊躇わずに殺せる存在を――」
新たな『罪』の始まり――
「『死』を与える存在を作ろう――」
それから約百年後。
『罪』は待ち続けた。
『神』が衰えるその時を――
『罪』は作り続けた。
『罰』を与える存在を――
幾度となく我慢と失敗を繰り返してはこの思いを――
『一族の思い』を叶えるために――――。
「完成だ」
そうして生まれたのだ―――。
『神』が衰えた時代。
『神』の世代が変わったこの瞬間――
『罰』を与えるために作られた存在は誰も気付くことが無く、財峨一族によって作られた。
新たな『罪』を犯してしまったことに気づかないまま作られた存在。
『一族の思い』に捕らわれ続けた、哀れな人間が犯してしまった『罪』の証。
「……」
作ってしまった――
『人形』を――
意思を、感情を持たない『操り人形』を――……
壊してしまった――
『人間』を――
生きるはずだった、歩むはずだった『人生』を――……
『仁樹』を――……




