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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングfifth【08】


「ふ、ふ、ふ……ふふ、ふざ、ふざけ」


 顔は見えない。しかし、笑っているのではない。

 震えた声でなんとか音を発しているのだ。


「ふふふ、ふざ、ふざけんなぁあああああ!!」


 途端、飛び跳ねるように狂い人(クレイジーヒューマン)は起き上がった。


「なんでだなんでだなんでだぁぁぁあああああ!!!」


 その姿に理性は無い。ただ、己の身体に湧き上がる感情を声に変えて喚いているだけ。


「運命よ!! 俺は選ばれた存在だろ!! クソの人間どもを恐怖のどん底に落とす『鬼』になる存在なんだろ!! なのに、なんでだ!! なんで、俺はこんな目に合ってる!! 何故、一度でも負けると思わせる!! なんで、二度もこいつに合わせるんだ!! 可笑しいだろう!! ふざけんなよ!!」 


 天へ――、ひたすら天へと必死に語りかける。


「俺は、俺は『鬼』だぞ!! 破壊と殺戮の、絶対的存在の!! 最低最悪最強の『鬼』になる男だぞ!! ふざけんな、運命!! そんな偉大な俺をこんな目に合わせんなよ!! 死ね!! ふざけんな!! ぶっ殺すぞ、この野郎がぁぁああああ!!」


 運命へ、世界へ罵声を浴びさせる――


「しかも、人間如きに!! こんなクソな人間如きに!!」


 狂っている。本当に狂っている―――。


「人間如きに、この俺がぁぁああああ!!」


 狂い人(クレイジーヒューマン)――


「お前もだろ」


 仁樹の口が動いた。


「アァ……?」


 その言葉に、天へと向けていた狂い人(クレイジーヒューマン)の目は仁樹に向く。

 ギロリ、と眼球が動いて呪うかのように睨みつける。


「人間」


 だが、仁樹は臆さない。戸惑うことも怯むことも無い。

 恐れることも無く。同情することも無く。


「お前も人間だろ」


 真実を告げる―――。


 その瞬間、狂い人(クレイジーヒューマン)の目に怒りの火が灯された。


「ちげぇええええ!!」


 狂い人(クレイジーヒューマン)は再び叫ぶ。睨みは射抜く鋭さに変わる。


「誰が人間なもんかぁああ!! ふざけんなぁあああ!!」


 拒絶の反応。否定の言葉。次々と男の全身、口から飛び出してくる。


「気持ち悪くてうじゃうじゃと沸いてくる奴らとはちげェ!!!」


 まるで、子どもだ、と仁樹は思った。

 思い通りに事が進まないことに駄々をこねる子どもと同じ。

 ヒーローごっこでヒーローになれなかった。やりたくない怪獣役になって苛立っている。そんな子供。

 狂いに狂い、騒ぎまくる狂い人(クレイジーヒューマン)の姿がそんな風にしか見えなかった。


「じゃァ、何者なんだよ」


 駄々を捏ね続ける男に仁樹は何処となく、呆れたような声で問いかける。

 その問いを狂い人(クレイジーヒューマン)はまるで待ってたかのように荒々しく……いや、子どものようなうるさい声で答えた。


「俺は人間の上に行くものだよ!! 『九年前』のように恐怖で人間共を支配してやるんだ!! 集団でしか何も出来ない馬鹿共を上から眺めてな!! 刃物、素手、銃、最後は爆薬なんかでよ!! 『鬼』となって俺の恐怖を知らしめてやる!! 俺が最強なのだと!! 誰にも俺には逆らえないのだとよ!! は、ははは、あははははは!!」


 雨で盛大に濡れた顔を歪ませる。

 全身に当たる冷たい水滴。すべてが吹っ飛んだ頭を冷やすことは叶わなかった。


 だが、しかし。


「そうだ……」


 狂い人(クレイジーヒューマン)に新たな考えを、()()()()()()()()()()()()


(こいつを殺そう───……!)


 運命は裏切っていない。そう思い込んだ。

 これは試練。これは訓練なのだ、と。


 (いや。そんな生ぬるいものではない――……!)


 これは『鬼』になる最終試験なのだ。

 仁樹を殺すことで、自分は大いなる存在に近付ける、と。


 きっとこの先、生きる人生の中で仁樹のような男は存在しない。

 人間の中で、人間を代表する、人間。人間のラスボス。

 ラスボスをクリアしなければ、ゲームにハッピーエンドは訪れない。


「お前を殺させて貰うぜ……!」


 痛みなど知るものか。足に力を入れ、立ち上がる。

 ゲームの登場人物たちも体力が残りわずかでも敵に立ち向かっていく。

 包丁という武器を片手に。自分の信じるハッピーエンドを目指す。


「俺の支配者への第一歩の死人になるんだからよ!!」


 ハッピーエンド。主人公が思い描く世界――。


 『鬼』が、最低の、最悪の、最強の―――。

 『鬼』が支配する世界。

 破壊に、殺戮に、非道に、外道に包まれた恐怖の世界に―――。


「光栄に思いやがれ!!」



()()()()()()()()()()()()?」


「あぁ?」

「言いてェこと言い終わったのかって聞いてんだよ」


 狂い人(クレイジーヒューマン)は、気付かなかったのだろうか。


 たった今、仁樹の表情が変わったことに――


 ()()()――……


「連続犯罪者さんよォ」


 ()()()()()()――……


「あぁ、纏めると───」


 そのことに興奮して気付かないまま、狂い人(クレイジーヒューマン)は続ける。

 包丁を持たぬ手で親指を立て、そのまま下にして大きく振り落とした。


「くだらねぇ人間共は踏み台なんだ―――よッ!!」


 言い切ると同時に狂い人(クレイジーヒューマン)は地面を蹴った。

 凝りもせず、仁樹にまたもや突っ込む形で。その腕を大きく振った。

 一刀両断する勢いで―――。


(殺す───!)


 野望と快楽を求めて。


(殺す―――!)


 刃に力を込めて。


(殺す───!)


 第一歩の壁に向かって。


(殺す───!)


 憧れの存在を目指して。


(殺す―――!)


 己を信じて。


「ぶっ殺す―――――――!!」


 その刃を振り落した――――。



()()()()()()





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