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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングfifth【07】


 男の考えは単純だ。

 つまりは、殴り合いなどに勝てなくても刃があれば勝てる。

 そんな馬鹿な考えにたどり着いたのだ。


 刃は肉を切る。

 ただ、それだけだ。隙を見つけて切りかかろう、と。


「色々と邪魔したからなぁ。切って切って殺してやるよ!!」

「……どうして」

「あぁ!?」

「人を殺してェんだ」


 仁樹は問う。


「どうしてだぁ……?」


 その問いに、男は気持ち悪い笑みを浮かべた。


「んなの……、これから死ぬ人間には関係ねぇええええ!!」


 刃物を持つことで己が一気に有利となった。そんなくだらない勘違いをした狂い人(クレイジーヒューマン)は再び仁樹へと突っ込んだ。


「おらぁあああああ!!」


 無茶苦茶に包丁を振り回して襲い掛かる。しかし、仁樹に避ける気配はない。

 先ほど拾った傘の手元と受け骨を束ねて握るように両手で持ち、低く構えた。


(馬鹿だ――!)


 男は嘲笑った。逃げることなく、刃物相手に真っ向勝負を挑む姿勢に。

 しかも先ほど邪魔したときに役立ったとはいえ、武器は耐久性の低い傘だ。


「しねぇえ!!」


 これは勝ち戦だというばかりにオープニングfifth【05】が大きく振りかざす。

 狙うは仁樹の首。深い、赤い線を刻むために力を入れる。


 だが、次の瞬間―――。


「死なねェよ――!」


 両手に持っていた傘を振りかざした腕の手首に下から押し当てた。


「――!?」


 力を入れるがビクともしない。

 何が起きたのか。すぐに傘から腕を離し、瞬時に次の場所を狙う。

 次は、脇腹だ。


「なッ――!!?」


 だが、またしても止められる。

 傘を垂直に、手首へ押し当てられた。


「っち!!」


 ならば、ランダムではどうか。

 刃物を仁樹の身体のいたるところへ滅茶苦茶に、適当に、好き勝手に狙い、再び振り回し始めた。


 何処に当たるか。振り回すことしか意識していない動き。型も何もない素人の動き。

 しかし、速さは違う。倉庫やビルで鍛えていたこともあって刃物を振り回す速さは素人の目では追うことが出来ない。


 尋常ではない速さで煌めく刃は宙を切り、音を立てる。

 正気を感じられない目で。防がれたことで血が上った頭で。怒涛の勢いで襲い続ける。


 一生のトラウマを植えつけるであろう姿で殺しにかかってくる――


「オラオラオラオラオラァァァアアアアアアア!!」


 だが、しかし――


「……うっせェな」

「――!?」


 仁樹は怯まない。

 その怒涛の勢いに押し負ける気配を感じさせない。


 繰り出され続ける刃の嵐。

 だが、尋常ではない速さで次々と己を狙う攻撃を仁樹は容易く防いでいく。


 傘の動きは最小限に。無駄な体力を使わないように、と。暴れ回る刃物の軌道を読み、「確実に狙う」という意思のない刃を次々と傘で防ぎ続けていく。


 目で追うことのできない刃物に匹敵するは、同じく目に負えない傘の防御。


 もはや人間業とは思えない攻防戦。こんな状況ではなかったら曲芸、パフォーマンスとして観客を沸かせることが出来ただろう。まるでこの日の為に練習したようなキレのある動きで、仁樹からは焦りの一欠片も感じることはない。


 だが、反対に男は焦り、動きがだんだんと鈍くなっていくのが分かる。


「はぁ! はぁ!!」


 無理もない。仁樹とは違い、湧き上がる感情のままに体力を考えることも無く刃物を振り回し続けたのだ。

 それに加えて手首へのダメージだ。いくら相手が傘でも、同じ場所に何度もあの速さで押し当てられ続ければ……いや、あの速さ同士で〝衝突〟し合え続ければ、ダメージは蓄積される。


 疲れだけではない。感情で無視し続けた痛みをも狂い人(クレイジーヒューマン)の身体を鈍くさせているのだ。


「ちくしょぉおぉぉおおおおおお!!!」

(負ける? 冗談じゃない――!!)


 運命に選ばれた自分が負けるはずない、と。今度こそ狙いを定めて仁樹の腹を狙う。

 渾身の一撃……が――


「―――ッ!」

「はぁッ……!!?」


 防がれた。

 最早、男は舌打ちも、叫び声も上げられない。

 そのまま仁樹は防御しながらも器用に傘で狂い人(クレイジーヒューマン)の腕を下へと力づくに押した。その瞬間、狂い人(クレイジーヒューマン)のバランスはわずかに崩れる。


 その崩れを見落とさない。見過ごさない。


「残念だったな――ッ!」


 わずかにガラ空きとなった腹めがけて膝を打ち込む。


「ガハッ―――!!?」


 強烈なる痛み。先ほど打ち込まれた『牙砲』とは違い吹っ飛ばされることはなかったが、それでも同じく腹に受けたためダメージは腹に追加される。

 我慢できない、感情では忘れられない痛みに狂い人(クレイジーヒューマン)は腹を抑え、足が崩れて地に蹲る。


 だが、手に持った包丁を放す気配はない。それどころか先程よりも強く握り、必死に痛みを耐える。

 その間に仁樹は後ろへと距離を取った。警戒は解いていない。いつ男が襲ってくるか、視線を外すことはない。


「ふ、ふふ……、ふふ……」


 狂い人(クレイジーヒューマン)の口が開いた。




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