神と罪のカルマ オープニングfifth【03】
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《――オキロヨ》
「――ッ!」
早朝。天気は快晴とは程遠い曇り空。
薄暗い部屋で刺さるような頭痛によって無理矢理覚醒し飛び起きた。
「朋音――!」
実家の自室。すぐに自分のベットで寝ているであろう彼女の傍により、その顔を覗き込む。
「うぅ……」
「朋音、起きろ! 気をしっかり持て!」
酷く魘されている。額には大粒の汗が浮き上がっていて、苦痛に満ちたその顔は見ている側まで息が詰まりそうに苦しい気持ちに襲われる。
「起きてくれ、朋音!」
早くその苦痛から解放しようと仁樹は必死に彼女を揺すって必死に声を掛け続ける。だが、どんなに激しく動かしても起きる気配がなく、ますますその美しい眉間に苦しさを現す皺が刻まれていく。
「や、やめて……、嫌だ……」
「起きろ! 起きてくれ!」
「殺したくない……!」
「朋音!」
バチンッーー!!
「……!!」
その苦痛に満ちた顔を仁樹は挟むように音を鳴らして叩いた。
その音が鳴り、痛みがその頬を走った瞬間――朋音は目を見開き、覚醒した。
大粒の涙をその両目から大量に流しながら。苦痛から解放されたのだ。
「朋音、大丈夫か?」
「いたい……」
「悪ィ、この方法しか考えられなかった……」
「ありがとう……」
その美貌を叩くなど。人々が知ったら叫び、仁樹を即非難して罵声を浴びせるだろう。
だが、どれだけ揺すって声を掛け続けても、彼女は覚醒しなかった。永遠と魘されるのではないかという恐怖すら感じられる光景に、仁樹は慄然して叩いたのだ。
そうでなければ、愛しい彼女の頬を叩くことなど仁樹がするはずがない。その証拠として、叩かれた朋音は痛みを訴えながらも彼の行動にお礼を言ったのであった。
「水とタオル……着替えも必要だな。ほかには?」
「抱きしめて……」
「わかった」
全身汗をかいた身体。大粒の涙。女性として早く着替えたいはずなのに、震える身体が言うことを聞かない。それをわかっていて仁樹もすぐに朋音を抱きしめる。
「仁樹君……」
腕の中で朋音が口を開く。
ボロボロと涙を流して、仁樹の服を濡らしていく。
「大丈夫。聞いてる」
「あのね……」
「あァ」
朋音の言葉一つ一つ、聞き逃さないように集中して返事を返す。
仁樹は朋音がこれから何を言おうとしているかわかっていた。
ただ、わかっていても。『それ』を言って欲しくなかった。
ただの悪夢だって言って欲しかった。
夢見が悪かったから一緒に寝て欲しいと言って欲しかった。
抱きしめて自分を安心させて欲しいと言って欲しかった。
どうか、『それ』が真実にならないように。
どうか、『それ』が現実にならないように。
そう願わずにはいられなかった。
……だが、運命は残酷だ。
「……雨」
世界は残酷だ。
「見えたの……。女の人を追いかけて、ナイフで……」
彼女の声が仁樹の耳の奥まで伝わってくる。
「雨の中で……、女の人が……、見えて、それで……!!」
その瞬間―――、
仁樹の目が変わった―――
縁 朋音――
霊能者――
彼女は人が殺される、『死の瞬間を見る力』を授けられた世界に愛された子である。
もう一度言おう。
世界は残酷だ―――。
彼女を愛する世界は、自分勝手で理不尽で――、
残酷だ、と――……




