神と罪のカルマ オープニングforth【09】
〇
「仁樹君?」
「ん……」
朋音の呼びかけにゆっくりと覚醒していく。
外はすでに暗く、雨がまた降り始めていた。
「おはよう、朋音……」
「おはよう。でも……まだ寝る?」
「いや、大丈夫だ……ありがとう」
帰宅後、仁樹はソファーで眠ってしまった。
肉体的にも精神的にも疲れていたのだろう。朋音が掛けてくれたであろう布団にも気づかないまま、途中で起きることもなく眠り続けた。
仁樹が寝ている間、灯真は朋音と遊んでいたらしい。
兄と遊ぶことが好きな弟も疲れたように眠る兄を起こす気にはならなかったようで、そんな弟の頭を申し訳なさそうに撫でて、世話をしてくれた彼女にもう一度へとお礼をいう。
「朋音、ごめん……」
夕食後。寝る準備ができた灯真を寝かしつけて下りてきた仁樹は、リビングで手芸に励む朋音に頭を下げた。そんな姿に彼女は慌てて立ち上がる。
「どうしたの、仁樹くん?」
「いや、不安にさせて……生き急いで悪かったなって」
何がなんだかわからなく若干困惑した彼女をソファーに座るよう促し、その隣に座る。
「……仁樹くんの気持ちはわかるよ。やっぱり焦っちゃうよね、こういう状況になると。……でも、仁樹くんがなんともないって言っても心配しちゃう……」
「心配させるし、あんなこと言わせちまうし……最低だ、俺」
「最低じゃないよ。最低なのは何もできない私……」
頭を仁樹の肩に頭を乗せ、その逞しい手をその柔らかくて小さな手で握る。
「なら、最低同士だな。お前も俺を利用しているし、俺もお前のその力を利用している。何も後ろめたく思うことはないよな」
「利用、かぁ……」
「利用しているけど、誰も不幸にならない」
静かな夜。耳を澄ませば雨の音がするほどで、他の音は聞こえない。
ソファーに寄り掛かり、二人して深くその身を沈める。
「ごめんね、仁樹くん」
今度は朋音が謝る。
「何がだ……?」
「『無茶しないで』って言えなくて」
『無茶』――……
それがどんなことを表しているのか。どんな思いが込められているのか。
仁樹は知っている。
「私にはそれを言う資格がない……私がみんなを危険な目に合わせてるのに……」
「朋音」
「私が強くないから、みんなを巻き込んで……」
「違う」
「私が弱いから、みんなに迷惑を掛けちゃって……」
「頼むから、これ以上自分を嫌いにならないでくれ」
繋いでいた手を解き、自身を否定し続ける彼女を仁樹はそっと抱きしめた。
「これ以上、傷つかないでくれ。お前だって、沢山傷ついてきたじゃねェかよ」
世界を殺したいと思ったことがあるか。
もし、そう聞かれたとしたら仁樹は迷わず頷くだろう。
それが朋音を愛してくれる世界だとしても、「傷付けるだけの世界ならいらない」と言ってその逞しい手で握りつぶすように粉々に砕くようにして殺してしまうのだろう。
でも、きっと。世界を殺すことが出来ても、仁樹はしないのだろう。
それを彼女は望んでいないから。ただそれだけ。
「なんで、世界は自分勝手なんだろうな」
抱きしめながら、優しくあやす様に朋音の頭を撫でる。
「自分勝手で理不尽な世界に、なんでお前らはいるんだろうな」
違う世界があったとしたら、そこは一体どんな世界なのだろうか。
いくら問い掛けても答えてはくれない世界に仁樹の口から零れるのは溜息ばかり。
「勝手に愛して、勝手に背負わして……」
胸に火が付いたのが仁樹にはわかった。
それは徐々に広がっていき、己の持つ心の世界にて燃え上がる。
(なァ――)
心の中で呟く。
炎は紅蓮に、赤々と燃え続ける。
それは仁樹の怒り。世界への怒り。
(これがもし遊び半分ならやめろ。朋音を傷つけるな――……)
返事の返ってこない心の世界でその怒りは響きわたる。
(除外した俺にここまで言わせるな――……!)
だけど、返事は返ってこない。
神と罪のカルマ オープニングforth 終
神と罪のカルマ オープニングfifth 続




