神と罪のカルマ オープニングforth【06】
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《いますぐ、そこから離れてください》
その言葉を狂い人は理解できなかった。
「はぁ!? なんで、俺がここを離れなきゃいけねぇんだよ、クソが!!」
《そこで捕まりたいのならお好きにどうぞ》
「――!?」
捕まる、とはどういうことか。何故、狂い人は自分が捕まらなければならないのか訳が分からなかった。
そもそも、捕まらないようにするのが電話越の相手の役目。なのに、今回は方法が違う。
男が移動する方法で捕まらないように細工しようとしているのだ。
そのことに気付いた狂い人は、頭に血が急激に昇り、怒鳴り込んだ。
「てめぇ!! さてはミスしやがったな!! 何してやがんだ!!」
《ワタクシがミス? 心外ですね。それに、ミスを犯したのは貴方ではありませんか?》
「あぁ!? そのミスを何とかするのがお前なんだろうが!?」
今回のミス。それは、あの料理人に追いかけられてしまったこと。
だが、所詮は狂い人にとっては一般人。そこらへんの雑魚と称す人間と一緒だ。
あんな一般人を片づけるのに手間などかかるものか。今までの第三者のように、証拠隠滅をすればいいだけ。
《貴方を追いかけたという人物は感覚が鋭いようで。手を出すことは危険、と言った所でしょう》
「使えねぇ奴が!! だったら、俺が殺してきてやる!!」
追いかけられた恨みもあるのだろう。ガラクタに突き刺さっていた包丁を抜き、目の前にその憎き料理人を想像した。
そして、その姿を八つ裂きにするように包丁を振り回す。
想像の中で、料理人の悲鳴、痛みに苦しむ声が響き渡る。必死に血が流れる場所を押え、地面に蹲る滑稽な姿。
「ぎゃははははああああああああ!! 死ね死ね死ね死ね!!」
頭の中で、血を大量に死んでいく相手の姿に笑いが止まらない。
いまにでも殺したい。いまなら殺せる。いますぐ殺させろ、と。
狂気にまみれた姿で、狂い人は包丁を振り回し続ける。
《殺したいのはわかりました。しかし、いまはそこを離れることだけを考えなさい》
「はぁ!? 折角、いい気持ちだっていうのに水をさすんじゃぁねぇよ!!」
《これは、これからの貴方の活動に深くかかわるのですよ》
頑として離れようとしない狂い人に、相手は理由淡々と話していく。
《どうやら警察の中にも鋭い者がいるらしく、貴方の放った『花火』で散った欠片を手掛かりに、そこに何かがあると感づいたようです》
「なんだって……!?」
「ちんけな『花火』をフォローしましたが、結局はこうなりましたか」
勿論、狂い人の用意した気体の『花火』ではあのような火力が出るはずがない。余計なことをする狂い人の行動を読めていたのか、はたまた監視していたのか。電話の男が『花火』に相応しいものを準備したのだ。
だが、狂い人は気付かない。偏に馬鹿であるからだ。
馬鹿過ぎて、祝して打ち上げた『花火』がまさかそんな事態を招くとは思っていなかったのだろう。
しかし、当然といえば当然だ。男は警察を舐めきっている。
そして、その油断が自身を捕まる危険へと陥れたのだ。
《新たな隠れ場所はこちらが用意しましょう。早くそこから離れて、出来るだけ遠くに逃げてください》
「っち!!」
イラついた手付きで終了のボタンを押し、急いでここを出る準備をする。
本当に困った――、と、狂い人は再び苛立ちの舌打ちを一つ。
此処には長いこと居座っていたのだ。指紋、髪の毛など手掛かりとなるものがそこらじゅうに散らばっているに決まっている。
ここを離れるとは思っていなかったのだ。いちいちものを触るときに手袋など身に着ける訳が無い。
しかし、それでも何処かであの電話の相手がどうにかするだろう、と思いながら、慌ただしく手足を動かすのであった。
段々、狂い人が馬鹿だってことをはっきりかけるようになってきた。




