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スサノオ

 男はじーっと俺のことを見つめてきた。しかし、この男……とんでもなく臭い。汗くさいとかそういうレベルでは無い。生ゴミのような悪臭であった。


「がーっはっはっは! どうやらお主が我を解放してくれたようだな」


 男は豪快に笑った。耳が痛くなるような大声にびっくりした。誰なんだ、この男は。


「あ、あの……あなたは一体?」

「何と我のことを知らんのか……我の名はスサノオ。アマテラスの弟だ」


 俺はアマテラス様の言葉を思い出した。確か弟達がダンジョン攻略に向かって、失敗したとか言っていたな。


「それじゃ、あなたも神様なんですね?」

「いかにも」


 スサノオ様が強く肯定する。


「ちょ、ちょっと! タケル、この人誰なの? それに神様って……」

「お、可愛い子発見。ちょっと君? 名前教えてくれる。後、良かったら一緒にお茶でもどう? あと良かったらそのおっぱい、触らせてもらっても……」


 スサノオ様はいやらしく指先を動かしながら手をイグノスの胸に近づけていった。このやろう、切り落としてやろうか。


「うわ……すごい匂い……」


 イグノスは手で鼻を覆い隠した。匂いを指摘され、スサノオ様は少し悲しそうな表情になった。


「そ、そんなにひどい臭いか……確かに封印されてたせいで何年も風呂に入ってなかったがな」


 ――スサノオ! ナンパなんてしてないで今すぐ天界に戻ってきなさい。


「えぇ!? でも、せっかく出てこれたのに」


 ――戻りなさい! いつ待た『敵』が襲ってくるか分からないんですよ!?


「わ、分かったよ……それじゃ、二人とも。また後でな」


 天空から突然、光が差し込むとスサノオ様の身体に当たると、スサノオ様はどこかに消えてしまった。


「アマテラス様! 教えてください。災厄のダンジョンが出来た経緯を。あと、父さんはこの世界にいるんですか!?」


 ――いずれ、機会が来たら教えて差し上げます。タケルさん、あなたはこれから雷の国に向かってください。


「あ……ちょっと、アマテラス様! アマテラス様!」


 アマテラス様の声が聞こえなくなった。しょうがない。ひとまず山を降りて、雷の国に向かうか。


「ねぇ、タケル。どういうことなの? アマテラス様だとか、神様だとか」


 もう隠すのも限界か。俺はイグノスに全てを打ち明けることにした。




「タケルが異世界から……正直信じられないわね」


 俺が異世界にやってきた経緯を全てイグノスに打ち明けたが、彼女は信じていないようであった。


「本当だ。俺はアマテラス様から頼まれてこの世界にやって来た。この火の剣はアマテラス様から貰った神器なんだ」

「確かに……信じられないくらいにステータスが上がってるわね」

「そうだろう。これも神器の力なんだと思う」

「ねぇ、その槍も神器なの?」


 イグノスは雷の槍を指差した。そういえば、この槍も俺が使っていいのだろうか。


「多分な。スサノオ様の力が宿っている槍だろう」


 俺は雷の槍を掴もうとした。すると、左手に持っていた火の剣からバチッとした電気が発生し、俺は思わず火の剣を手放した。


「な、なんだ……?」


 再び雷の槍を掴んでみたが今度は何も起こらない。落とした火の剣を掴もうとするも、今度は雷の槍から電気が発生し、槍を落とす。


「なるほどね……神器を二つ同時に持つことは出来ないってわけか」


 理由は不明だが、神器と神器の二刀流という訳にはいかないようだ。

 俺はひとまず雷の槍を持ち、その力を試してみることにした。

 火の剣を持った時と同様に力が漲るが、何だが身体が異様に軽い気がした。


「イグノス。今の俺のステータスはどうなってる?」

「腕力100、脚力180、防御力50、走力150、魔力80ね。すごいステータスだわ」


 数値を聞いてフラットのステータスに近いなと思った。どうやら雷の槍を持つと攻撃特化のステータスになるらしい。

 俺は少し離れた岩盤を槍で突いてみようと思い、地面を強く蹴った。


「うわ!」


 自分でも制御できないほどのスピードが出て、目標の岩盤からは大きく離れたところで止まった。


「こりゃあ、使いこなすのに少し時間が掛かりそうだな……」

「すごい槍ね。それ。私にも貸してくれる?」

「イグノスの方が上手く使いこなせるかもな。はい」


 俺はイグノスに雷の槍を渡し、彼女のステータスを見た。


 腕力:62

 脚力:104

 防御力:53

 走力:63

 魔力:74


 変だな。ステータスが昨日見た時よりほとんど変わっていない。イグノスは不思議そうな様子で槍を見つめていた。


「タケル、私のステータス上がった?」

「いや……特には」


 神器は俺にしか使えないとか? いや、けどフラットも使えていたわけだしな。どうしてだろうか。


「私が持っていてもしょうがないわね。これ返すわ」

「いや、それが……火の剣と一緒には持てないみたいなんだ。ひとまず持っていてくれるか?」

「え、そうなの。分かったわ」


 俺はイグノスと共に山を降りた。何度かモンスターとも出会ったが、イグノスと神器のおかげで特に苦戦することもなく倒すことが出来た。

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