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プロローグ

「この世界を作ったのは神器を持った人間ねぇ……ふわぁ」

 俺の名前は伊藤健いとうたける。どこにでもいる高校二年生である。

 日本神話を読み、感想文を書くという宿題をやっているのだが、読み終わった頃にはいつの間にか深夜となっていた。

「とりあえず適当に書くかな……」

 神話の内容は思ったよりも堅苦しくなくラノベっぽい印象でスラスラ読むことができた。

 特に神器を持った人間同士である親子との戦いは中々面白かった。

 適当に感想文を書き終えた俺は就寝し、スマホのアラームで目覚めた。

 欠伸をしながらリビングに入ると既に家族全員が朝食を食べていた。

「おはよう健」

「おはよう父さん」

 俺の父である伊藤剛いとうたけしは消防士として働いている。

 日によって朝番、夜番と出勤する時間が異なる不規則な勤務形態のため、家族全員揃って昼食を食べるのはかなり珍しい。

「健。急がないと遅刻するわよ。早く食べちゃいなさい」

「はーい……」

 椅子に座って、昼食のトーストを齧った。妹は「ご馳走様」と言うと、リビングから出て行った。

「兄さん。私、先に言ってるね。遅れちゃダメだよ」

「あいよー」

 妹の伊藤沙羅いとうさらは双子の妹であり、同じ学校に通っている。

 双子ではあるのだが、地味な俺と違い沙羅は美人で俺と違い、かなりモテる。

 本当に双子なのか俺は疑問に思っている。ちょっとDNA鑑定をしてみたい。

「そんじゃ、言ってきまーす!」

 結構時間もギリギリであったため、俺は急いで学校に向かうことにした。

 ここから走っていけば何とか間に合うだろう。

「おっはよー! 健。相変わらずギリギリだねー。私もだけど」

 バンと強く背中を叩いてきたのは金髪の少女であり、俺の幼地味である。

 この少女の名前は雷雲絵音らいうんえのん。俺と同じクラスであり、仲が良い。

「そうだな。明日は余裕を持って家を出るよ」

「そう言っていっつもギリギリだよねー。ま、私もだけどさ。それよりさ、宿題やった?」

「あぁ、一応やったよ」

 全く担任の海照あまてらす先生め。変な宿題だしやがって。

 いつものプリント課題ならさほど時間が掛からなかったのだが。

「一生のお願い! コピペさせて!」

「ダメに決まってんだろ! 俺も怒られるわ!」

 プリント課題ならともかく、感想文の内容が一緒とかやばすぎる。さすがに断った。

「いやね。一応、神話は読んだんだよ。感想書こうと思ったら眠くなっちゃったってゆーか」

「お前なぁ……」

 呆れて言葉も出ない。絵音はいつも宿題を忘れてくる。ちゃんとやった試しがない。

「ねー、見せてよ。表現を上手い感じで変えればバレないと思うんだ」

「国語の評価が一のお前にそんな高度なことが出来るのか?」

 すると、絵音がなぜかピースをした。

「失礼な。二だよ二。よーし、それじゃ私が先に学校に着いたら宿題を見せるってことで良いよね? 答えは聞いてない!」

 何だその無茶苦茶な条件は。俺にメリットが全くないではないか。

「え、ちょ、ま……」

「よーい、どん!」

「ちょっと待てー!」

 絵音は陸上部に所属している。結局、勝負に負けた俺は絵音に宿題を見せてやることにした。

 一応は放課後にミセスドーナッツを奢ってもらうということで手を打った。

「皆さん。朝のホームルームを始める前に転校生を紹介します。イグノスさん、入ってください」

 教室に入ってきた少女は髪が赤く端正な顔立ちをしていた。

 イグノスという少女は軽く頭を下げた。

「皆さん、初めまして。フランスから来ましたイグノスと言います」

 男女ともにイグノスに注目している。こんな美少女が転校してきたとなれば無理もないだろう。

「イグノスさんはご両親の仕事に関係で日本に転校してきました。それじゃ、イグノスさん。健君の隣に座ってくれるかしら?」

「はい。分かりました」

 イグノスは空いている俺の隣に座った。彼女と目が合い、思わず心臓の鼓動が高まった。

「よろしくね、タケルくん」

「よ、よろしく……」

 何故だろう。彼女とは初めてあった気がしない。昔、どこかで会った気がする。

 これが所謂デジャブとかいう奴だろうか。

「ありがとうね」

 今、イグノスがお礼を言った? イグノスの方を見たが彼女は何事も無いように正面を向いていた。

 きっと、さっきのは……聞き間違えだよな。


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