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新しい世界

 次の話で最終話になります。

「タケル。全力を持ってお前を倒す。イザナ斬り!」


 黒く禍々しい剣圧が神速で俺に迫る。アマテラス様に言われた通り、心を落ち着かせて使うことにした。


「スリーゴッドビーム」


 小さな声で呟くと右腕から金色に輝く細いビームが出た。

 そのビームは父さんが放った剣圧とぶつかり激しく拮抗する。

 俺と父さんの周囲には衝撃波が発生し、神様達も戦いを止めた。


「押し切れタケシ! 自分の世界を救いたいのだろう!?」

「そうだ……俺は世界を守る! 例え、立ちはだかるのが自分の息子であっても!」


 この拮抗した状況に苦しそうな父さんであったが、イザナギ様の言葉に感化されたのか必死に剣を振り上げた。

 新たに生じた剣圧が最初の剣圧と重なり、俺を絶対絶命な状況まで追い詰めた。


「こ、ここまでか……」


 これ以上、高出力のビームを出すことは出来ない。間も無く俺は死ぬのだろう。

 これまでの冒険が走馬灯に思い出される。

 イグノス、エノン、ザラム、そしてこの世界で会った全ての人達。本当にすまない。

 俺が諦めかけた時、誰かが俺の腕を掴んだ。


「まだよ。諦めなないで。私も手伝うから」

「イグノス……」

「全く。本当タケルは世話が焼けるね。私も助けてあげるよ」

「エノン……」


 二人が俺に魔力を送ってくれたおかげでビームの出力が強くなった。

 さらにザラムが俺の腕を掴む。


「お兄様。お願いします。私の望む未来を実現してください」

「任せろ、ザラム。俺は……父さんを超える!」


 三人の魔力を譲り受け、ビームは太くなり勢いが増した。

 押し負けていたビームは徐々に父さんがいる方へ押し返す。


「くそ! まだだ想造」


 最後の抵抗か父さんは三重のバリアを張った。

 しかし、あっさりとスリーゴッドビームはバリアを打ち破り父さんに命中する。

 スリーゴッドビームの威力は凄まじく、爆風で部屋の天井や壁を粉砕してしまった。

 俺の眼に映ったのは仰向けになって倒れている父さんであった。

 治癒魔法する魔力も残っていないのか全く動こうとはしない。

 俺はイザナギ様の神器を回収しようと父さんの元へ向かおうとした。


「や、やめろ!」


 イザナギ様が俺の元に駆け寄ると両手を広げて通せんぼしてきた。


「父さん。往生際が悪いですよ。あなた達は負けたんです。いい加減諦めたらどうなのです?」

「い、嫌だ! ワシの大切な世界を消させはしない」


 俺はイザナギ様に深々と頭を下げた。意味は二つある。一つ目は感謝。


「イザナギ様。ありがとうございます。俺がいた世界を作ってくれたこと。この異世界も大事ですが、元の世界も確かに俺にとって大切な世界です」

「そうだろう? だからこの異世界のことは……」

「いえ、諦めたくありません。確率が一%より低かったとしても可能性があるなら俺は試したいんです。お願いします……神様、二つの世界をどうか見捨てないでください」


 二つ目は懇願。俺がしようとする行為をイザナギ様に認めて欲しかった。


「う……ワシは……」


 イザナギ様が両手を下ろした。俺は頭を上げ、イザナギ様の横を通る。

 倒れている父さんの元へ行き、薬指に嵌められている神器を見つめた。


「ほらよ」


 父さんが手を差し伸べた。指輪を掴み、父さんの薬指から外した。


「割とあっさりと譲ってくれるんだね」


 父さんが微笑んだ。勝負に負けたのに清々しさを感じさせるような笑顔である。


「男と男の勝負だからな。タケル。強くなったな」

「ありがとう。父さん。俺、絶対に成功させるよ」

「あとは頼んだぞ、タケル……」


 父さんはゆっくりと目を閉じた。父さんの腕を掴んで脈を測ると止まっていた。

 勝手に涙が溢れてくる。だが、悲しんでばかりもいられない。

 これから俺がすべきことは神の領域に踏み込むことなのだから。

 だが、その前に……


「そのタケル。だ、大丈夫?」

「大丈夫って言ったら嘘になるかな」

「そうよね。ごめんなさい。無神経なこと言って」

「良いんだ。みんなに会えて本当に良かった。なぁ、エノン。約束覚えているよな?」

「う、うん! 約束したんだからちゃんと付き合ってよね!」

「オッケー。それじゃ、帰ろうか」


 神器と世界の存亡を賭けた戦いが終わり、しばしの間、俺達は平和な日常を過ごした。

 エノンとも約束通りデートをし、世界滅亡の日まで俺達はイグノスの宿屋で過ごしすことにした。




 そして、あっという間に運命の日がやってきた。


「いよいよね……」

「だな」


 俺達は火の国にある大広場にいた。空には大きな地球が映っている。

 あれがかつて俺のいた世界であることは明白だ。外にいる人たちは物珍しそうに地球を眺めていた。


「それでやり方はどうやるの?」

「神器を解放して想造を使う。それだけだ。ただ、成功する確率は……」


 一パーセント以下。そう言いたかったが怖くて口に出せなかった。


「フィフティフィフティですよ。お兄様なら大丈夫」


 ザラムの言葉で少し冷静になることができた。大丈夫、きっと成功するはずだ。


「そうだよな。それじゃみんな。早速、始めるぞ」


 どんな世界を作るべきか、あらかじめ三人の意見を聞きつつ考えておいていた。


「タケル。しっかりね」

「うん。それじゃ、いくぞ。神器解放!」


 神器の指輪が金色に光る。俺は目を瞑り、自分の望む世界を思い浮かべた。

 グラグラと地面が大きく揺れ動き、外にいる人達が悲鳴を上げ始めた。

 俺が望むのはまず父さんが生きていること。だが、家族構成は元の世界とは違う。

 ザラムが俺の妹になっているのが理想の世界。

 ものすごい音が聞こえてきた。ふと目を開けると、火山が噴火していた。


「ほら、もっと集中してタケル。理想の世界を作るんでしょ?」

「悪い、エノン。そうだな」


 次にイグノスとエノンが俺のクラスメートになっていること。

 新しい世界は俺がいた元の世界を元にしつつも二人と関わっていたかった。


「うわー!」「に、逃げろー!」


 街に火山岩が降り注いできた。身の危険を感じた街にいる人達は次々と避難していった。

 まさに阿鼻叫喚である。

 空に浮かんでいる地球がどんどんこの星に接近してきていた。

 きっともう少しで新しい世界を想造することが出来るのだろう。


「お兄様。あと少しみたいですね」

「うん。もう少しだけ待ってくれ。あとは……」


 最後に元の世界よりも神の信仰が深いこと。元の世界、具体的に日本ではあまり神に関心がなかった。

 新しい世界ではもっと神を信仰し、この国の成り立ちに関心を持って欲しい。

 元の世界における神話は古事記だったが、新しい世界での神話はもっと堅苦しくない内容でラノベみたいなタイトルで、そうだな……『神器で攻略する異世界ダンジョン』ってのはどうだろうか。


「それじゃ、みんな。また新しい世界で会おうな。想造!」


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