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父さんとの再会

「タケルが神器を二つ扱った時は本当に驚いたわ」

「自分でも驚きだよ。この力があれば父さんにも何とか勝てるかもな」


 あの時、とんでもない力を感じた。さっきみたく神器を二つ使えば何とかなるかもしれない。


「確かにあの力は脅威ですがタケシさんも二つの神器を扱っていましたよ」

「ま、マジですか……」


 俺に出来ることは父さんにも出来るということか。さらに父さんには想造の魔法がある。

 気を引き締めていかなければ。


「二つの神器を使えばステータスは上がりますが、戦いは一対一ではありません。複数人での連携が今回の戦いの鍵となるでしょう」

「つまり、私達の力が必要ってことね! エノン、頑張りましょう」

「勿論。タケルの父さんをぶっ倒してやろう!」


 話し合いで解決できればそれに越したことはないのだが、ザラムの様子を見る限り、正直厳しそうだな。

 目的地であるダンジョンは遠くにあるため、俺達は馬車に乗って向かうことにした。

 馬車から外の景色を眺めていると森にいるゴブリンやオークといったモンスターを見かけた。

 馬車から降り、改めて城の様子を確認した。近くで見ると城の大きさはかなりのものである。

 やはり、トラップがたくさん仕掛けられていたりモンスターが城中に配置されているのだろうか。


「タケルさん。緊張してますか?」

「あ、いえ。大丈夫です」

 俺はつい虚勢を張ってしまった。本当はとても緊張している。命懸けの戦いというのは何度経験してもなれない。

「心配しなくても大丈夫ですよ。タケルさん、あなたは私が守りますから」

「アマテラス様……ありがとうございます。少し落ち着ついてました」


 俺が緊張している反面、イグノスとエノンは丘の上から見える国の景色を興奮した様子で眺めていた。


「すごい景色ね! 城に住んでるタケルのお父さん、毎日この景色を見れるなんて羨ましいわ」

「本当だよ。明るくてこれなら、夜景ならもっとすごそうだよね!」


 今はダンジョンの影響で常に明るいままであるが、ダンジョンを攻略すれば再び夜が訪れる。

 新しい世界を創る前にここから見える夜景を二人に見せてあげたい。


「イグノスさん、エノンさん。リラックスしているのは良いことですがこれからダンジョンに足を踏み入れるのですよ。もっと気を引き締めてください」

「そうですね。それじゃみんな、気合い入れていきましょうか」

「よーし! 私もひと暴れしちゃおうかな」


 城の扉を押すと『ギィ』と鈍い音を立てて簡単に扉が開いた。

 城の中に足を踏み入れ、中を見渡した。城の中はかなりの広さであり、壁には神を祀っている様子の絵がいくつも掛けられていた。

 さらに中央には長い螺旋階段があり、上を見上げると、階段の先には鉄扉がある。


「感じます。この上の先に膨大な魔力を秘めた者の存在を」


 俺も何となく分かった。おそらくこの上に父さんが……俺は高ぶる気持ちを抑えながら一段づつ階段を昇っていった。

 階段を登り始めてから十分ほどで頂上にある扉に辿り着いた。


「何事もなく着いたわね」

「確かにな……」


 俺は不気味で仕方なかった。階段を上っている時、てっきり何かが起こるのではないかと警戒していたのだがそんなこと全くなかった。


「気にしていても仕方ありません。皆さん、中に入りますよ。覚悟は良いですか?」


 全員頷き、アマテラス様が扉に手を掛ける。扉には鍵が掛けられていないようであっさりと開いた。

 扉の先にある部屋の向こう側に二人の姿が見えた。一人は椅子に座っており、見た目は四十歳くらいの男。

 もう一人は白い髭を生やしている仙人風の老人であった。


「来たか」


 四十歳くらいの男が呟いた。見た目に関してかなりの低い声である。

 そして、この人物こそ……


「父さん……なんだな?」


 俺は恐る恐る尋ねた。

 目の前にかつて死んだはずの父さんがいる。そう考えると胸の昂りを抑えられなかった。


「そうだ。大きくなったな。タケル」


 息子である俺のことを見ても父さんは相変わらず冷静な様子だった。

 父さんと色々と話したいことがあったのに、いざ目の前にすると何も言葉が出なくなってしまった。


「アマテラス、久しぶりだな」


 老人が言葉を話した。厳かな印象を感じさせる渋い声であった。

 この人がアマテラス様の父親であるイザナギ様か。


「久しぶりですね。父上、今まで何をしていたのですか?」

「この世界で魔王になった後、タケシと戦ったのだ。無事、ワシの説得に応じてくれたよ」

「そうですか。タケシさんはこの世界を滅ぼすことに決めたのですね」


 椅子に座っている父さんは立ち上がった。よく見ると父さんの右手の人差し指には指輪が嵌め込まれている。


「その通り。タケル、おとなしくその神器を渡してくれ。この世界を滅ぼす」

「断る……って言ったら?」

「力づくで奪うしかないな。お前も知っているだろう。この世界が存在する限り、俺達がいた世界が無くなってしまう。母さんのこと、守りたいとは思わないのか?」

「思う……思うよ! けど、イグノスやエノン、それにこの世界で出会った人達だって大切なんだ。父さんの想造は新しい世界を創れるんだろう? だったらその力でみんなを救ってよ!」


 そうだ。父さんが新しい世界を創ってくれるなら全て解決するんだ。

 俺は祈るような気持ちで父さんに頼み込んだ。


「そんなこと、出来るなら最初からやっている。いいか? 新しい世界を作ることが出来る確率は一パーセント以下……いや、ゼロに等しいと言ってもいい」

「けど、ゼロじゃないんだろ? だったら俺はその可能性に賭けてみたい」

「本当に愚か者だなお主は。タケシが言っていることまだ理解できぬのか。どちらかの世界を選ばなければいけないのだ。ここで戦うということはお前が自分の世界を見捨てるということと同義なのだぞ」

「違う、俺は……」


 イザナギ様の言葉に対して否定しようとした。

 だが、言葉が出てこない。グルグルと思考を巡らせていると『パン』と手を叩く音が聞こえてきた。


「あーあーあー。ウジウジとめんどくさいなぁ。どうせこのまま滅ぶくらいならその一パーセント以下の望みに賭けてみればいいじゃん。バッカなの?」

「き、貴様! ワシを誰だと心得るか。ワシは神だぞ!」


 激昂するイザナギ様に対し、エノンが雷の槍を向ける。出来れば父さん達を説得するつもりであったがエノンは無理だと判断したようである。


「だから何? 私達の世界を救う気もないくせに。あんたなんかよりタケルの方がよっぽど神様にふさわしいよ」

「エノン……」

「その通りよ。私はタケルに付いていくわ。もしも邪魔するなら神様だろうがタケルの父さんだろうが全力で戦う」


 二人の言葉を聞いて迷いが吹っ飛んだ。戦おう。だって俺はこの世界が大好きだから。


「イグノス……よし。決めた。父さん。俺と一戦ってくれ。その神器を賭けて」

「いいだろう。お前のワガママに付き合ってやる」

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