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二つの神器

 俺達は大広場へと移動した。人通りも少なく戦う場所としては最適だろう。


「ザラム、受け取ってくれ」


 手に持っていた闇の鎌をザラムに渡した。ザラムは驚いた様子で闇の鎌を受け取った。


「ちょっとタケル! 何してるの!」

「悪いなイグノス。けど、前に言ったんだ。ザラムには闇の鎌を使って欲しいって。ザラム、これを使って俺と戦え。俺に勝ったら火の剣と雷の矢をお前に渡す」

「その条件で本当に良いのですか? タケルさんにとってかなり不利だと思いますが」

「構わない。ザラム、全力で来い」

「承知しました。では本気で行きます」

「望むところだ。眷属!」


 眷属の魔法で神器の力を解放した。元より高いザラムのステータスが更に上がっていく。


 腕力:220

 脚力:230

 防御力:200

 走力:170

 魔力:250


「とんでもないステータスね……」

「やっぱり全員で戦った方が良い気がしてきたよ」


 俺一人で戦うことを認めていたイグノスとエノンは心配そうに呟いた。

 だが、俺はここで引くつもりは全くなかった。


「イグノス、火の剣を貸してくれ」

「う、うん! 分かった」


 イグノスから火の剣を受け取り、右手で鞘を力強く掴む。


「神器解放!」


 鞘から剣を抜くと、身体中から力が漲ってきた。

 俺は三つの神器の中で扱いやすい火の剣で戦うことにした。


「この世界にしては高いステータスですが、私には到底及びません」

「だろうな。けど、戦いってのはステータスだけで決まるわけじゃない!」


 火の剣を縦と横、交互に振って炎を飛ばした。ザラムは黒いバリアを展開し、炎に直撃した。

 周囲に煙が吹き荒れ、視界が見えづらくなった。


「うわ!」


 いつの間にかザラムが俺の近くに接近し、鎌を斜め下に振り下ろしてきた。何とか避けることに成功するも地面は深く抉れていた。

 こんな恐ろしいので斬られたなら俺の身体は真っ二つになるだろう。


「避けられましたか。やりますね、タケルさん」

「ザラムこそ……」


 恐るべき速さで放たれるザラムの斬撃を必死に火の剣を使って防いだ。

 顔にいくつもの傷口ができ、手に痺れるような痛みを感じた。

 こちらかも仕掛けたいが防御するので手一杯である。

 ずっと攻めに徹していたザラムが急に俺から距離を取る。

 『パチン』と指のなる音が聞こえてきた。まずいこれは……

 俺は急いでその場から離れた。凄まじい爆風が吹き荒れ、身体の何箇所かを火傷してしまった。


「完全には避けきれなかった。ザラム、本当に強いな」


 劣勢になのに不思議と恐怖心はなく、戦いへの楽しさが心を満たしていた。


「タケルさん。やはり理解不能です。どうしてわざわざ一騎打ちを? 全員で戦えば私を簡単に殺すことができるはずです」

「そうかもしれないな。けど、それじゃダメなんだ。戦いを通してザラムのことを知りたい」

「それは……どういう意味ですか?」


 ザラムは父さんのことを崇拝している。きっと父さんの命令なら何でも言うことを聞くのだろう。

 だが、そんなのはまやかしだ。本当の意味で行動しているとは言えない。


「ザラム。お前は俺と同じ父さんの子供だ。子供ってのは親の言うことを聞く道具じゃない」


 ザラムは父さんの魔法によって生まれた存在。

 そういう意味では父さんの子供と言って差し支えないだろう。


「私は道具じゃない……?」

「そうだ。ザラムは一人の人間なんだ。自分の意思で行動すればいい。良かったら俺達の仲間にならないか?」


 俺がザラムと一人で戦おうと思った本当の意味。それはザラムの説得であった。

 ただの話し合いではザラムは納得しないだろう。

 お互いの全力をぶつけ合うことでザラムの本当の気持ちを知りたいと考えていた。


「私だって……できることならタケシ様やタケルさんと楽しく暮らしたい。けど、私は自分の役目を果たさなばならないのです!」


 ザラムは鎌を構えると黒いオーラを身に纏った。

 どうやら俺がギガロドンを倒した時の技を使うようである。

 必殺技同士のぶつかり合いならステータスが高い方が有利。

 ザラムに勝つためには……


「エノン、神器を貸してくれ!」

「え、でも……」


 二つ以上の神器を持つことはできない。だが、俺は一か八かやってみようと思った。


「今のタケルさんなら出来るかもしれません。エノンさん、神器を渡してください」

「わ、分かった!」


 エノンが雷の槍を投げ渡してきた。神器を受け取ると自分の身体に凄まじい電流が流れ、激痛を感じた。


「な、何の……これしき!」


 気合いで痛みに耐えていると火の剣が赤色に、雷の矢が黄色に輝きだした。

 それと同時に今なら何でも出来るんじゃないかと思うくらい力が漲ってきた。


「全てのスタータスが三百越え……タケルさん、やはりあなたはあのお方の子供なのですね」

「そうだ。だが、父さんの子供なのはザラム。お前も一緒だ」

「いいえ、違います。私は……タケシ様の忠実なら僕です。ヘルスラッシュ!」


 斜め上から迫る斬撃を俺は二つの神器で受け止めた。俺とザラムの周囲に凄まじい風が吹き荒れる。


「タケル!」

「いけータケル!」


 俺にとっての『神』はイグノスやエノン、この異世界で親切にしてくれた人達だ。

 自分の世界も大事であるが、俺は異世界の人達も救いたい。


「ダブルアタック!」


 火の剣と雷の槍を前に突き出した。ザラムの身体が前方に大きく吹っ飛んでいった。

 俺はザラムの近くまで歩いた。ザラムは起き上がろうとするも力が入らないのか身体が震えていた。


「どうやら、私の負けみたいですね。どうぞトドメを刺してください」


 ザラムは死ぬつもりのようである。

 俺は手に持っている神器を地面に置き、ザラムを起き上がらせようとした。


「どういうつもりですか? 早くトドメを……」

「刺すわけないだろ。とりあえず治療していく」


 ひとまず俺はザラムを病院に連れて行こうと考えた。

 これだけ傷だらけなのにこのまま放っておくのは気が引けた。


「後悔しますよ」

「かもな」


 ザラムに肩を貸し、三人のいる元へ向かった。俺は治癒魔法が使えないのでイグノスに治癒魔法を掛けてもらうか。


「タケル。戦いお疲れ様。ザラムのこと、どうするの?」

「頼むイグノス。ザラムに治癒魔法を掛けてやってくれ」


 俺はイグノスに頭を下げた。過酷な異世界で生きるイグノスから見れば俺の行動は甘いと思うかもしれない。

 だが俺はザラムを救いたい。ザラムは父さんの魔法によって生まれた。

 言ってみれば妹のようなものである。


「タケルの頼みだったら断れないわね。ザラム、タケルに感謝しなさいよ。ヒール」


 イグノスは治癒魔法を使用した。腕や脚に出来ていたいくつかの傷が消えていく。


「ザラムを病院に連れていく。誰か場所を知っている人はいるか?」

「私は分からないわね」

「私もー」


 俺は闇の国の土地勘が全くない。誰も知らないとなると街にいる人に尋ねるしかないな。


「タケルさん。私が案内します。付いてきてください」


 アマテラス様が案内を申し出てくれた。

 確かに人間界の様子を伺っているアマテラス様なら病院の場所を知っていてもおかしくはない。

 病院は思ったよりも近くにあり、歩いて五分もしないうちに辿り着いた。


「ザラム、俺達に出来ることはここまでだ。俺達はこれから父さんを倒しに行く」

「タケシ様には誰にも勝てません。例えタケルさんであっても」

「そうかもな。だけど、戦うよ。それじゃザラム。元気でな」


 病院の前で俺達はザラムと別れることにした。これから父さんのいる城へと向かう。

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