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世界の始まり

「うわー! この部屋、めっちゃ広ーい! それにベッドがめっちゃフカフカだよ!」


 エノンはベッドにダイブし、ポンポンと跳ね上がった。まるで修学旅行ではしゃぐ生徒のようである。


「窓の景色、素敵ね。火の国には劣るけど中々の眺めだわ!」


 イグノスはうっとりとした様子で窓の景色を眺めていた。

 イグノスを見ていると何だかドキドキするため、思わず視線を逸らした。


「ど、どうしてこうなった……」


 ザラムは四人部屋を選んだ。エノンが言う通り、この部屋はとても広く一人一人ベッドが設けられている。

 しかし、できれば俺は一人の部屋が良かった。

 勿論、四人部屋の方が宿代を安くなるのだが。心は休まらないだろう。

 ザラムはベッドの上に座って何やら本を読んでいた。


「なぁ、ザラム。何を読んでるんだ?」

「神話を読んでいました」


 神話とは世界の始まりや超自然的存在を神と関連付けて説明する物語のことである。

 アマテラス様を始めとする神達も日本神話『古事記』のことを思い出した。

 アマテラス様と出会った日、俺は神話を読んでいたな。


「そうか。どんな内容なんだ?」

「イザナギがこの世界を作り出した話です。中々面白い内容ですよ。良かったら読んでみますか?」


 アマテラス様達の父親が出てくるのか。折角の機会だし、俺は読んでみようと思った。

 もしかするとアマテラス様達のことも書かれているかもしれない。


「読んでみたいな。ちょっと借りても良いか?」

「はい。お貸しします」


 ザラムから本を受け取った。

 少し分厚いがこれでも本を読むのは早い方だ。ありがたく読ませてもらうことにしよう。


「ねー、エノン。ザラム。ちょっとお出かけしない?」

「良いよー! けど、タケルは呼ばないの?」


 俺としては一人になりたい気分であるため、三人には是非出かけて欲しいと思った。


「女性同士で買い物したいのよ。ザラム、どうかしら?」

「私は構いません」

「よし、決まりね! タケル、私達出掛けてくるけど良い?」

「あぁ。気をつけてな」


 三人は部屋から出て行った。さてと……俺はベッドの上から立ち上がるとトイレに向かった。




「ふー……」


 さっぱりした俺は何だか世界が違って見えた。今の俺は頭が冴えており、さながら賢者のようである。

 俺はベッドの上に置いてある本を手に取り、椅子に座ってゆっくりとページを捲る。

 世界の始まり――数千年前、最高神イザナギが混沌からこの世界の礎を作り上げ、数多の国々を、子供達であるアマテラス、ツクヨミ、スサノオを生み出した。


 種族と魔法の発達と共に世界は繁栄していったが。しかし、世界は突然滅亡の危機に陥る。

 その理由はかつてイザナミが作り出した別の世界とこの世界がぶつかり合い、ビックバンが発生し、全てが無に帰ってしまう恐れがあったからである。


 何とか世界の滅亡を防ぐため、アマテラス、ツクヨミ、スサノオは別の世界を破壊し、この世界を救うことに成功した。


 しかし、別の世界を滅ぼしたことに対してイザナギは激怒し、アマテラス達と対立することになったという。


「これ……作り話だよな」


 自分に言い聞かせるかの様に呟いた。

 前にアマテラス様達に会った時、別の世界を滅ぼしたことがあると言っていた。

 俺が元いた世界とこの世界がぶつかり合うとしたら、アマテラス様達は果たしてどちらを取るつもりなのだろう。


「今はそんなこと考えても仕方がないか」


 俺はひとまず眠ることにした。ベッドに潜り、ゆっくりと目を閉じるとあっという間に眠りに落ちることができた。





 夢の中で俺は例の場所におり、アマテラス様達が椅子に座っていた。姉妹三人並んで座っているため、まるで面接を受けているかのようだ。


「待っていました、タケルさん」


 アマテラス様に挨拶をされ、俺は軽く頭を下げた。


「アマテラス様、お疲れ様です。あの……アマテラス様。待っていたとは?」


 すると、スサノオ様が立ち上がった。いつもとは違い、深刻そうに俺を見つめている。


「実は……タケルに聞いておきたいことがあってな?」

「聞きたいこと……ですか?」

「うむ。船にいた時、三人の着替えを見ていただろう。三人の胸の大きさをワシに教えて欲しいのだ」

「な、何言ってるんですか!? スサノオ様」


 あたかも俺がジロジロと三人の着替えを見ていたかのような言い草だがそうではない。

 たまたま、そう! たまたま目に入ってしまったのである。

 大事なことなので二回言いました。

 それに、目に焼き付けた光景は俺の心にだけに留めておきたい……


「ちょっとスサノオ。黙りなさい」

「うぐおぅ……!」


 アマテラス様はスサノオ様の股間を拳で叩き付けた。

 スサノオ様は顔を青くし、両手で股間を押さえている。

 うわぁ……めちゃくちゃ痛そうだな。


「タケルさんをここに呼んだのはダンジョン攻略前に色々とアドバイスしておきたいことがあったからです」

「忠告……ですか」

「はい。天界からちょくちょくタケルさん達の様子は見ていました。タケルさん自分の父親と話をするつもりらしいですけどそれは止めておいた方が良いでしょう」

「け、けど!」


 俺はどうしても父さんが安易な考えで世界を滅ぼそうとしているとは思えなかった。

 いや、思いたくないと言う方が正しいのかもしれない。


「タケルさんの考えていることは理解できます。おそらくは魔王が残した呪いにでも掛かってしまい、邪悪な思考に陥っているのでしょう。辛いでしょうが速やかに倒すのが良いと思います」


 アマテラス様の言うことも分かる。

 簡単に説得できるくらいならスサノオ様とツクヨミ様が封印されることは無かっただろう。

 もしもアマテラス様の言う通りだったとしたら、俺が父さんに説得を試みても意味が無いかもしれない。

 そのことを考えたら何だかものすごく辛くなった。動悸が高まり、視界が歪んできた。


「もう止めないか、アマテラス。タケル君は世界を守るためにこれまで一生懸命戦ってきただろう。もうタケル君の好きにさせてあげなよ」

「ツクヨミ。本気で言ってるの? もしもタケルさんが失敗すればもう……」


 後はないということか。

 俺がしくじればイグノス、エノン、ザラムがいる世界が滅びるのだろう。

 それだけは……それだけは何とか食い止めたい。

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