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闇の国までの道のり

「眷属」

「すごい。力が漲る。これが……神器の力!」


 エノンは重力の束縛から抜け出すと、ザラムから距離を取った。俺はエノンのステータスを確認した。


 腕力:112

 脚力:195

 防御力:51

 走力:173

 魔力:94


 ものすごいステータスである。難点があるとすればやはり防御力だが、攻撃を全て躱すことができればデメリットは無いに等しい。


「なるほど……確かに恐るべきステータスです。では、私も本気で行きましょう」


 ザラムは青白い障壁を二枚追加し、計三枚のシールドを展開した。

 名付けるとしたらトリプルシールドといったところか。


「三枚でいいの? そんじゃ行くよ!」


 ビュンと空気を切る音が聞こえると、エノンの姿が見えなくなった。

 次の瞬間、ザラムがいた周辺に爆発がした。


「な、何だ!?」


 俺は一体、何が起こったのか分からなかった。煙が薄れ、エノンとザラムが倒れている姿が見えた。

 俺は急いで二人の元に駆けつけた。


「おい! 大丈夫か、二人とも」

「私は大丈夫です。ヒール」


 ザラムは自分に回復魔法を掛けると回復したようで何事も無かったかのように立ち上がった。

 俺は意識が朦朧としているエノンにポーションを飲ませた。

 エノンは正気を取り戻し、キョロキョロと辺りを見渡した。


「は! ここはどこ!? 私はエノン?」

「そうだ、お前はエノンだ。大丈夫か?」

「うん。さっきまで戦っていたはずだけど、どうなったの?」


 俺もどうなったのかよく分からなかった。さっきの爆発はザラムが起したものだったのだろうか。


「先ほどの爆発は私が起こしたものです。エノンさんの攻撃を避けることが出来ないと考えた私は全てのバリアが割れたら爆発するよう魔法を掛けておいたのです」


 つまり、エノンがトリプルバリアを突破するのを見越して、爆発させたというわけか。

 仮に倒れても自分は魔法で回復することが出来ることまで見据えていた。


「エノン。この勝負、お前の負けみたいだな」

「えぇー!? そんなぁ……」


 エノンはしょぼくれた。神器を使ってもなおザラムに勝てないとあっては相当ショックだろう。

 ザラムが神器を使えば確かに父さんに勝てるかもしれない。


「エノンさんの力は大体分かりました。ダンジョン攻略に十分な力を有していると判断します。一緒に闇の国に来てくれませんか?」


 それは願ってもいないことなのだが……エノンはそっぽを向いてしまった。


「やだ! 私、そいつとは行きたくない!」


 あぁ、やっぱり……拗ねている。何とかエノンには機嫌を直してもらわないと。


「エノン。ダンジョンを攻略するには一人でも協力者がいた方がいいと思うんだ。それにだ、さっきのはかなり惜しかったと思うぞ」

「そうですね。もっとも私は神器無しで勝利しましたが」


 おいコラ空気読めや。状況は悪化し、エノンはさらにヘソを曲げた。


「やっぱ無理! 私、ここに残る」


 こいつ、あんな盛大に送り出してくれたブロンさんに申し訳ないと思わないのか。

 戻ってきたらブロンさん、驚愕するぞ絶対。


「ちょっとエノン。このままでいいの? 強くなってリベンジしたいと思わないのかしら」

「イグノス……確かに悔しいけどさ」


 イグノスがエノンへの説得を試みた。頼む、イグノス……うまく立ち直らせてくれ。


「悔しいけど神器無しじゃ私もザラムには敵わないわ。けど、必ず追い越してみせる。エノン、どっちがタケルの右腕になるか勝負しましょうよ」


 エノンは目を輝かせ、立ち上がった。今のでやる気が出たのか……というか、何だ右腕って。


「右腕か。いいねそれ。分かった。そいつをぶっ倒してタケルの右腕どころか頭になる! うぅん、タケルそのものになるよ」


 何だかよく分からないことになっていたがひとまずこれで安心である。

 ザラムを仲間に引き入れたことで戦力が大きく向上することだろう。


「それでは、私もこのパーティに入れてもらえるということでよろしくお願いします」

「よろしくな。そういやザラムは闇の国出身なのか?」

「ご明察の通りです。私は闇の国から来ました」

「それじゃ、船でここまで?」

「はい。私は闇のダンジョンを攻略しようと思い、ダンジョンマスタータケシと戦いました。しかし、結果は惨敗でした。そこで神器を手に入れようと思い、火の国を目指したのです」


 やはりザラムは既に父さんと戦ったことがあるようである。

 父さんがどんな魔法を使うのか知ることができるだろう。


「神器のことはどこで知ったんだ?」

「それは……神からのお告げです」


 神からのお告げとなると、大方アマテラス様だろうか。

 この世界の人間にもダンジョン攻略を促していたとはな。おかげで神器の奪い合いになりそうになったが。


「けどさ、どうしてわざわざ火の国まで行ったの? この国にだってダンジョンあるじゃん」


 エノンの言う通り、位置的には雷の国にあるダンジョンの方が近いだろう。

 もっとも、ザラムが単身で挑んで勝てるかは疑問ではあるのだが。


「勿論、この国にもダンジョンがあることは知っていました。しかし、火の国が滅亡の危機であることは闇の国にも知れ渡っていましたので」

「そうなの。それじゃ、ザラムは火の国を救うつもりだったのね。とんだ行き違いだったわ」

「はい。タケルさんとイグノスさんがダンジョンを攻略したことは国の人から聞きました。お二人のこと、随分感謝しているようで今度銅像を建てる予定らしいですよ」

「ど、銅像!?」


 まさかそんな話になっているとは思わなかった。思い返せば確かに国から出るとき、たくさんの人から感謝はされたが……自分の銅像なんて余りにも恥ずかしすぎる。


「いいなー、銅像。ねぇ、タケル。私の銅像も建つかな? 雷の国で」

「いやー、どうだろうな……俺達がダンジョンを攻略したことブロンさん以外に伝えてないし」

「えー……それじゃ、私がダンジョン攻略したこと触れ回ってこようかな」

「やめなさいエノン。私達はこれから闇の国に行くんだからそんなモタモタしていられないわ。ねぇ、ザラム。あなたがここに来るときに使った船はまだ残っているのかしら?」

「いえ。途中でモンスターに船を襲われて、バラバラにされました」

「バラバラに!? 船を壊された後はどうやって港まで辿り着いたんだ?」

「泳いできました。幸いにも残り十キロくらいだったので何とかなりました」


 海を十キロ泳ぐなんて普通の人間には到底出来ないだろう。

 その上、モンスターが生息する海となると、より過酷なものになる。


「ザラム。その船をバラバラにしたっていうモンスターはまだいるのか?」

「います。私も倒さずに足止めだけしましたからね。戻るときは警戒しなければいけませんね」

「どんなモンスターなの? まぁ、どんな奴でもこの雷の槍で葬ってみせるけどさ」

「ギガロドンという大きな鮫です。とても凶暴で決して戦ってはいけない相手と言われています。本来、闇の国から雷の国を船で移動しようとするのは得策ではありません」


 聞いた限りだとかなりやばそうなモンスターだな。

 神器を持っているとはいえ、ザラムが倒すのを諦めたとなれば戦闘はなるべく避けるた方が良さそうだな。


「けど、ザラムは船で戻るつもりなんだろ?」

「はい。船が一番速く辿り着きますからね。ですが、奴との戦闘は極力避けるべきです。足止めには私の魔法が最適です」

「分かった。なら、船で行こう。その前に誰かから船を借りないとな……」

「でしたら心当たりがあります。付いてきてください」


 ザラムを先頭に港へと足を運んだ。ザラムの歩きが早かったせいか、あっという間に港へ着いた。

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