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雷の国

 身支度を整え、俺たちは再び雷の国を目指して森を歩く。

 モンスターに遭遇した際、俺は眷属の魔法を試すことにした。

 最初に試したのはリザードマンという二足歩行であるくトカゲのような獣人。

 この森にいるモンスターの中では上位の強さらしい。

 イグノスとエノンが前方に出て戦ってくれたが、リザードマンの動きは素早く倒すのにてこずっていた。


「イグノス、火の剣を使ってみてくれ」

「え、どうやって……」


 イグノスに火の剣を渡したがどう使えば良いのか困惑していた。


「眷属」


 そう唱えると、火の剣が赤く発光した。イグノスは生唾を飲み込むと、鞘から剣を抜いた。

 イグノスのステータスが一気に跳ね上がる。


「すごい……これが神器の力」


 神器の力を解放したイグノスは鮮やかに地を駆け抜け、火を纏った剣でリザードマンの身体を真っ二つに切り裂いた。


「あー! いいなー、イグノス。ねぇタケル。私にもやってよ!」

「分かった。それじゃ行くぞ。眷属」


 エノンに神器を解放するための呪文を唱える。しかし、エノンは首を傾げた。


「あれ? 何も変わらないんだけど……」

「本当か? おっかしいな」

「私、思うんだけどタケルがまだその槍を使いこなせていないからじゃない?」


 考えてみれば心当たりがあった。雷の槍を持つと確かにステータスは上がるが、俺はあの槍を使いこなせてはいない。


「えー! それじゃ早く使いこなせるようにしてよ」

「ぜ、善処するよ……」


 それまで周囲には木や草しか見えない状況だったが、少し先に建物群が見えてきた。


「もう少しで雷の国に着くよ!」

「雷の国……私も初めて入るわね」


 ようやく森を抜け、大きな門の前で俺達は立ち止まった。

 辺りを見渡したが、門番的な人はいなかった。


「誰もいないな」

「ま、うちは良くも悪くも管理が適当だからね。さ、早く行こう」


 門を潜り抜け、しばらく歩いていると商店街に辿り着いた。

 火の国とは違い、陰鬱とした空気は流れておらず、店の外でお酒を飲む人などが見受けられた。


「生贄が捧げられている国にしては随分とみんな余裕そうだな」

「まぁね。基本的に男が生贄にされることはないからね。ダンジョンの主がいつも指定くるのは女性ばっかりなんだよ」

「そ、そうなのか……」


 女性ばかりを狙うダンジョンの主。一体、狙いは何なのだろうか。


「ねぇ、エノン。このままダンジョンに向かうの?」

「いや、少し寄って行きたいところがあるんだ」


 エノンがそう言うので、彼女に付いていくことにした。街の外れにある小さな木造建ての家の前に着くと、エノンがコンコンとノックをした。


「おじいちゃーん!」

「ほーい」


 ギィッと鈍い音を立て、扉が開く。家の名から出てきたのは初老の男性であった。

 髪はエノンと同じく金色であり、どことなくエノンの面影を感じさせる顔立ちをしている。


「おお、エノン! 火の国から戻ったのだな。そちらの二人は?」

「まぁ、色々あってさ。二人もダンジョン攻略に付いてきてくれることになったんだ」

「初めまして、タケルと言います」

「イグノスです。よろしくお願いします」

「そうか。よろしく頼む。ささ、二人とも。入りなさい」


 エノンのお爺さんは俺達を家の中に招き入れた。家の中は少し薄暗く、壁には銃や剣が掛けられている。

 俺達がテーブルの椅子に座ると、エノンのお爺さんがコーヒーカップを持ってきてくれた。


「良かったら、これを」

「ありがとうございます」

「おっと、自己紹介が遅れたね。ワシの名はブロン。エノンの祖父だ」

「ここでお祖父ちゃんと二人暮らしをしてるんだー」


 エノンと二人暮らしか。両親は住んでいないのだろうか。


「エノンの両親は二人とも冒険者をしていてな……五年前だったか、ダンジョン攻略に行ったきり戻ってこなくなったのだ。それ以来、ワシがエノンの面倒を見ている」

「そうだったんですか」

「あの、ブロンさん。ちょっと聞きたいんですけど、どうして生贄には男性が選ばれないんですか?」


 イグノスが質問をする。俺もダンジョンの主が生贄に女性ばかり狙うのか気になっていた。


「ダークエルフは多種族の魔力を吸収して生き長らえていると言われる。ダンジョンの主は女性の魔力が好み……そんなところだろうな」

「ダークエルフにそんな性質があったのね。知らなかったわ」

「エノン。やはり、ワシもダンジョンに付いていこう。少しは役に立つはずだ」

「お祖父ちゃん。大丈夫だって。タケル、神器を見せてあげて」

「分かった」


 俺は火の剣を取り出し、鞘を抜いた。神器を解放した俺のステータスを見たのか、ブロンさんは感心したように「ほう」と感心したように呟いた。


「驚いたな。神の力を扱えるという神器。本当に存在したのか」

「そうだよ、お祖父ちゃん。しかも、タケルとイグノスはね、火の国にあるダンジョンを攻略したんだ」

「何と……ふむ、そんな二人に協力してもらえるなんて、やはりエノンにはスサノオ様のご加護があるようだな。これも日頃の行いが良いからだな」


 ブロンさん。自信満々で言ってるけどあなたのお孫さん、俺から金貨を巻き上げましたよ?

 だが、俺は空気を読んでこのことは黙っておくことにした。


「まぁね。だから、お祖父ちゃんは心配しないでドッシリ構えてなよ。必ずダンジョンを攻略してみせるから」

「うむ、分かった。今日はここでゆっくりしていきなさい。二人も良かったら泊まっていってくれ」

「ありがとうございます。それじゃ、お言葉に甘えて……」


 やった。昨日はテントで雑魚寝であったが、今日はちゃんとした家で泊まることができる。

 いや、待てよ? 見たところ部屋は余り無さそうだし、俺はどこで寝るのだろうか。


「タケル、イグノス。私の部屋で一緒でも良いよね?」

「私は構わないわ。タケルは……?」

「いや、俺は……」


 返答に困っていると、ブロンさんが顔を近づけ、小さくこう話してきた。


「エノンを嫁にする覚悟が出来ているのなら、一緒に寝ることを認めよう」

「…………それじゃ、俺はブロンさんの部屋で寝るわ」

「なるほど、あえてのワシを選ぶか。じじい好きとはお前さん、中々マニアックじゃな」

「何言ってるんですか……」


 この軽いノリ、やはりエノンの家族だな。


「冗談だ。来客用の布団があるからそれで寝るといい」


 来客用の布団か。助かった。床で寝ることを覚悟していたがゆっくり休めそうだ。

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