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光の巫女  作者: 雪桃
第4章 次への訓練
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機関って何?

「機関ってどこにあるの?」


 リースに繋がる泉の前で開口一番千花は興人に昼の疑問を出す。

 興人ははじめ理解ができていないようだったが、しばらくして指を上に向けた。


「上?」


 千花が指通り上を向くと、興人は曖昧に頷く。


「俺もよくわかってない。安城先生から聞いた話だから本当だとは思うが」

「わかってないのに機関に戻れるの?」

「こっちから申請すれば迎えが来る」


 千花は興人の説明下手を理解しているため、先に泉に飛び込んでから更に話を聞く。


「機関はリースを管轄できるような魔法を使ってることは知ってるだろ?」

「うん」

「記憶の書き換えも扉の維持も、全部機関の人間が1つ1つ魔法を使ってる」

「それならもっと有名になってもおかしくないよね?」


 邦彦や興人からはよく機関の名を聞くが、城でも街中でもほとんどその話は聞かない。


「機関の人間は、皆日の目を見れない人達ばかりなんだ」

「日の目?」


 千花の聞き返しに興人はすかさぞ頷く。


「俺みたいな身寄りのない子どもだけじゃなく、国から犯罪者として扱われる者、実験体として虐げられた者、異端児として追放された者、そういう人達が機関に寄越される。だから国が機関を認めることはない」

「……人として認められないなんてことがあるの?」

「地球にも差別はたくさんある。機関はそんな差別から人間を守る保護施設だと考えればいい」


 ここまでリースの役に立っているというのに国からはならず者として認識されているなど、許されることなのだろうか。


「犯罪者として、奴隷として見られているから私は安城先生に機関を紹介してもらえないのかな」


 千花の無意識に出た思いに興人はしばし考えた後、首を横に振って否定する。


「犯罪者、ならず者は国が勝手に付けたレッテルであって機関の人間が罪を犯したことはない。ただ……」

「ただ?」

「機関の人はみんな性格も特性もクセが強すぎるから、もう少しこの世界に慣れた方がいい。多分、今行ったら潰されると思う」

「潰される!?」


 何をとは怖かったのでこの際聞かないことにした。

 とりあえず興人の声音から危ない人達ではないことはわかった。


「いつかは会わせてくれるのかな」

「きっと、田上の人柄なら機関の人達も快く迎えてくれるよ」


 興人が和やかに微笑みながらそう言うので、千花は少し照れくさくなり、目線を外す。


「と、ところで興人。第2属性の魔法は上手くいってる?」


 千花が無理に話を変えたことには特に気づかず、興人はまた表情を戻して頷く。


「興人の第2属性って」

「雷だ。リョウガと同じ」


 ああ、と千花も思い出す。

 確かに千花とシモンが光魔法に苦戦している間、興人は基本的に炎と雷の魔法を自主練習していた。


「上達がすごく早いよね」

「他の属性ならともかく、べモスと戦っている時にリョウガの魔法は何度も見たから。覚えている動きを真似しているだけだ」

「結構すごいことだよね、それ」


 死闘を繰り広げている間にリョウガの魔法を覚える余裕があることが本当に感心する。


「いや、これから先魔王と戦うことになるなら田上も相手の間合いを覚えておいた方がいい」

「間合い?」

「この前の俺とリョウガのように、突然初対面の奴と共闘することもありえる。そういう時に相手の動きの癖や魔法の威力をよく観察しておく必要がある」

「……癖を知っていれば連携が上手く行くってこと?」

「そう」


 肯定する興人に千花は納得する。

 要は、攻撃範囲や動きのタイミングを理解していれば動きやすいということだ。


「でも練習の仕様がないよね。いつも訓練してる興人ならともかく、初対面の人の癖を見分けるって難しそう」


 興人とまともに戦えたのも初の訓練から1か月以上経ってからだ。

 そんな千花の心配を見越してか、興人は口を開く。


「魔物や猛獣相手でも訓練はできる。人間と共闘するのであれば流石に限界はある。でも、慣れるくらいでいいなら依頼の中で人外と戦うこともいい経験になる」

「……へえ」


 一度、シモンと洞窟に迷い込んだ時にミミズのような魔物を退治したことがある。

 あの時──シモンのサポートはあったものの──確かに魔物の動きをよく見ながら考えて動いていた。


「シモンさんに言えば依頼させてくれるかな」

「次の土曜にでも俺と2人で行くか? 午後に訓練すればいいだろ」

「そっちの方がいいかも」


 訓練も楽しいことには楽しいが、何時間もひたすら同じ動きを繰り返すより実践を取り入れることもシモンなら了承してくれるだろう。


「そしたら俺達でもできそうな依頼を用意してもらおう。田上は頑張って土曜までに光魔法ができるようにな」

「……善処します」

「曖昧だな」


 ギルドに着くまでの間に千花達は新たな約束を結んだ。

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