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光の巫女  作者: 雪桃
第4章 次への訓練
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光属性のお勉強

 翌日は土曜日。

 千花は訓練が行われるよりも前、リースでは早朝と言われる時間から図書館にいた。

 周知の通り千花は勉強がとても苦手だが、シモンの手前予習はしておく必要がある。


(光魔法は他の属性とは魔力の流れ方が違う。これは興人に昨日教えてもらった)


 以前邦彦と一緒に読んだ魔法入門編の本をめくりながら千花は光属性が書いてある所を探す。


(確か光属性と浄化は別物なんだよね。光の巫女は全部の魔法が使えたから属性とは関係ないけど)


 千花は該当する箇所に目を通す。

 そこには光魔法の説明が記されていた。


(光魔法は闇に強く闇に弱い? 1つの魔法で攻撃と支援ができる? 光魔法はイメージではなく既存の魔法を覚える?)

「……難しい」


 シモンが難航するくらいの属性だから易しい魔法ではないことは理解していたが、まさか文章すらも理解できないほどだとは思わなかった。


「シモンさんって、本当にすごかったんだな」


 20歳という若さで全属性の魔法をマスターし、かつ教えられることは魔法素人の千花でもすごいとわかる。

 ただ1つ気になることと言えば。


(なんでシモンさんって光の巫女候補者の指導してるんだろう)


 それだけ実力があればわざわざ教師として時間を使わなくても好きなように仕事を選べるはずだ。


(でも3年前に国交が閉ざされたから仕事ができなくなったっていうのもあるかな。悪魔を倒し終わったら、自由に冒険するのもありかも)


 まだまだ到底先の話ではあるが、千花は悪魔に脅かされない平和なリースも見てみたいと1人夢に見た。


「……そのためには、光魔法をまず学ばないといけないんだけど」


 一気に現実に引き戻され、千花は肩を落としながら本の続きを読もうとする。

 しかしその前に頭上から名前を呼ばれた。


「あらチカちゃん?」


 目の前を見上げると、そこにはブロンドの髪を流し、ピンクのワンピースを着た可愛らしい女性──アイリーンが立っていた。


「アイリーンさん、おはようございます」

「おはよう。珍しいわね、こんなに朝早くから。まだシモン君もオキト君もギルドに来てないわよ」

「知ってます。今日は予習しようと思って」

「予習? なんの?」


 アイリーンが本を覗き込んで内容を確認する。

 タイトルが「光属性の魔法について」なので、すぐに理解ができたようだ。


「昨日言ってた第2属性のことね。予習なんてえらいじゃない」

「あはは。と言っても全く内容は理解できてないんですけど」


 千花が自虐のように乾いた笑いを出す中、アイリーンは「どれどれ?」と文章を読み進めていく。

 2分ほどしたところで何か閃いたのか1つ頷く。


「これなら私も説明できるわね。チカちゃん、臨時授業してもいい?」

「え、いいですけど。アイリーンさんは大丈夫なんですか?」

「ギルドも今人が少ないし、この時間は依頼も少ないの」


 それならと千花はアイリーンに甘えることにした。

 この場所は図書館の閲覧スペースということもあり、自由に話せる談話室に移動する。


「そうね、じゃあまずはここの『闇に強く闇に弱い』部分からね」

「はい」


 アイリーンは1つずつ指さしながら説明を始める。


「光属性はね、その名の通り光を操る魔法なの。例えば光線とかライトとか。光って暗闇の中でも唯一輝ける成分だから闇に強い」

「確かに」


 闇と言われると規模が大きすぎるが、暗闇を照らす光と言われれば納得がいく。


「でも、光魔法って便利な分1つの魔法への魔力量が多いの。しかも規模はとても小さい。一方で闇魔法は、魔力量は多いけど一度に広範囲の攻撃ができる。だから闇に強くても一度攻撃範囲に入ると危険が伴うのよ」

「なるほど」


 強力であるからこその代償があるのかと千花は新たに理解する。


「それとこの攻撃と支援が一緒にできる特徴ね。光魔法って、8属性の中で最も支援魔法に特化してるの。特に回復がね」

「支援魔法って?」

「傷の治療だけでなく、その人のステータスを上げられる魔法のこと。例えば光魔法で攻撃強化をすれば2回斬らないと倒せない所を1回で済ませることもできるわ」


 確かに便利だと思う一方で、千花はそれが何と関係しているのか首を傾げる。


「光魔法のいい所は、支援魔法に特化してるから、攻撃の呪文を唱えながら回復ができることなのよ」

「……それ、すごい難しくないですか」

「すっごい難しいわね。シモン君も流石にそこまではできてないから」


 シモンができていないことをさらっと言いのけるアイリーンに千花は顔が引きつる。

 いくら第2属性が光とは言え、そこに行きつくまでには相当な努力を要するだろう。


「最後、『イメージではなく既存の魔法を使う』ね」

「これが一番よくわからないです」

「むしろ一番簡単なことよ。光魔法はもう発動する呪文があるから、それを覚えて唱えるの」


 地属性の1つである土人形を例に教えてもらう。

 今まで習ってきた通りで行くと、はじめに人形の姿を頭に思い浮かべる。

 その後、土を操りながら頭の中にある形を見出し、1つの魔法となることを初心者の頃は教えてもらった。


「でも光魔法はイメージする必要がないの。呪文通りに唱えて、魔力が一致すればその通りの魔法が出てくるわけ」


 確かに魔法入門書の最後のページに光魔法一覧が載っている。

 試しに千花はアイリーンに指された文字を読んでみる。


「ライトアロー?」


 読んだ後に呪文を唱えたら発動するのではと慌てて口を抑える千花だったが、意に反して何も起こらない。


「あれ?」

「これが難しいところなのよ。他の属性ならイメージをしてそのまま魔法が出せるんだけど、光魔法は魔力が適正じゃないと発動しないの」

「え、じゃあどうすれば」

「魔力の流れに合わせるしかないわね」


 アイリーンは簡単に言ってくれるが、魔力が視認できない今どう確認すればいいのか全くわからない。


「さて、私が教えられるのはここまで。後はシモン君に教えてもらって」


 千花がまごついている中、アイリーンは早々に切り上げて自身の荷物を持ったまま席を立つ。


「せいぜいシモン君達の足を引っ張らないようにね」

「え?」


 アイリーンが背中を向けて小さく呟いた言葉が聞き取れなかった千花は顔を上げて聞き返す。

 しかしアイリーンは可愛らしい微笑みを千花に返すのみで、返事はせず図書館を出ていった。

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