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光の巫女  作者: 雪桃
第11章 最後の決戦
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王城へ

 千花達も黒い魂にすぐに囚われた。

 人型の魔王と人魚の魔王に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥っていた。

 だが、そのピンチはすぐに脱することになった。


「ようやく我が協力できる時が来たか。チカ」

「カイト!」


 邦彦に襲いかかろうとする2体の魔王を千花と邦彦が苦戦しながら戦っていると、突如地面から渦潮が巻き起こり、人型の魔王は壁に打ちつけられる。

 そして味方はそれだけではなかった。


吹き飛べ(ソフィアビアー)


 竜巻が人魚の魔王を空に飛ばし、その隙に下駄の音が地面に鳴る。


「今の内に行って、巫女様」


 千花は初めて見るその女性にしばし反応ができなかった。

 緑色の長い髪を1つに束ねたヴァンパイアの顔つきの女性。


「あなたが、リンゲツさん」

「話したい気持ちは山々でしょうが、今は緊急事態です。田上さん、急ぎましょう」


 邦彦に手を引かれ、千花は魔王を任せなければならないことに後ろ髪を引かれながら先を急いだ。


「興人もシモンさんも、皆無事ですよね?」


 魔王を召喚する程イシュガルドは本気になっているようだ。

 啖呵を切って飛び出したはいいものの、ここまでの本気にたじろいでしまう。


「田上さん、仲間を信じましょう。あなたが信じていれば、彼らはきっと応えてくれます」

「そう、ですよね。私はやるべきことをやればいい」


 王城に近づくと魔力の結界が張られているからかガーゴイルの数が減ってきている。

 それでもガーゴイルがいないわけではないため、王宮の魔導士が必死になって城を守っている。


「つ、着いた」

「田上さん、今からです。あなたの役目はこれからなのでしょう」

「はい。絶対、光の巫女を説得してみせます」


 千花が邦彦と共に王城の結界を潜り抜けると、すぐそこにはシルヴィーが指揮を執っていた。


「女王陛下!」

「クニヒコ、チカ、これは一体どういうことだ。あれは、魔神か? なぜ蘇っている」

「失礼ながら説明は省かせていただきます。今は防御の陣を張るしか方法はありません」


 シルヴィーはこの際礼儀も詳細の説明も時間が惜しいと考えたのだろう。

 指揮を一度中断し、千花の方へ歩み寄って口を開く。


「チカ、これが最終決戦になるということか」

「はい。今から、降霊の間で光の巫女の魂を呼び覚まします。そうすれば、魔神と決着がつける」

「それは、人間が敗れる可能性もあるのか」


 千花はその問いに対して何も言えなくなる。

 絶対にイシュガルドに勝つ確証はない。

 千花の指揮次第では、リースを一生闇に葬り去る可能性もある。

 だが今は、信じてもらうしかない。


「お願いします。今だけ、私にトロイメアの命運を握らせてください」


 千花の強い言葉に、シルヴィーは厳しい顔つきを崩さないまま杖で奥へと促す。


「今、避難してきた国民は全員七大国の方へ誘導している。その国民を裏切ることは、絶対に許さない。信じているからな、チカ」


 シルヴィーに促され、千花は邦彦と共に奥にある降霊の間へ急ぐ。

 辿り着くと、邦彦は入口の前で足を止めた。


「ここから先はあなたの集中する場です。敵は必ずあなたの元へ行かせませんので、存分に光の巫女様と話してきてください」

「はい」


 千花は扉を開けて、暗闇にロウソクが1本灯る厳かな間へ、1人足を運んだ。






 イシュガルドは異変に気づいた。

 千花の魔力が薄れていくのである。

 街を見渡してみても彼女の姿はなく、イシュガルドはすぐに王城へ向かったのだということがわかった。


「何を企んでいる、光の巫女よ」


 イシュガルドは未だに敗れることのない人間側に怒りを覚えている。

 さっさと諦めて光の巫女を渡してくればいいものを、神に抗うように彼らは戦い続ける。


「私はあの女を物にしなければならない。そうすれば、私はようやく」


 イシュガルドの狙いは光の巫女を手に入れること。

 世界を闇に覆わせるのは単なる手段に過ぎない。

 だからここで時間を食うわけにはいかないのだ。


「もういい。あの女は私には勝てない。浄化の力を使う前に、その身を食らってしまおう」


 光の巫女が完全に絶望すればイシュガルドの唯一の弱点である浄化を使わせることもなくなる。

 だからここまで追い詰めようとしたがそれも時間の無駄だと気づいたイシュガルドは空中から王城へと向かう。


「全員防御の陣に集中せよ! 魔神が来る!」


 そしてイシュガルドの魔力をいち早く検知したシルヴィーは急いで複数いる魔導士に指示する。

 防御の結界を強化した瞬間、強い衝撃が城を襲った。


「巫女を渡せ。愚かな人間ども」

「踏ん張れ! 城に入らせるな!」


 イシュガルドの姿を目の当たりにしたシルヴィーは久しぶりに恐怖というものを覚えた。

 銀色の長髪からは歪に曲がった角が2本、瞳は血のように赤く、牙と爪で結界を破ろうとしてくるその姿は狂気さえ感じる。


「じ、女王、陛下、これ以上はもう」


 魔導士の1人がその姿に怯え、弱音を吐く。

 だがシルヴィーは自分の魔力さえも使って結界を強化する。


「決して巫女の所へ行かせるな! この世界の平穏を、お前達で守れ!」


 魔神イシュガルドとの直接対決が、もうすぐ始まる。

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