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光の巫女  作者: 雪桃
第10章 フレイマー
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ドラゴンとの勝負

 シモンはマーズと共に悪魔と化した竜人を倒して回っていた。

 イリートの所へ向かった千花と興人がやけに静かなことに違和感を覚えつつ、マーズに尋ねようとすると、彼は何やら嫌な予感を覚えているようだった。


「おいどうした? まさか竜人にやられたか」

「違う。この気配は、ラヴァー王がドラゴンになったものだ」


 ラヴァー王は今乗っ取られているだろうと言及しようとしてシモンも顔色を悪くするマーズの意図がわかった。

 目の前で襲ってくる悪魔の竜人達を魔法で蹴散らすと、シモンはマーズと共に爆発音が鳴る街の方へ駆け出していく。


(ドラゴンに人間が勝てるか? チカ、オキト、無事でいろよ)


 シモンは少女たちの安否を確認したいがために全速力で走る。

 襲ってくる悪魔の竜人を払い除け、ようやく辿り着いたフレイマーの街をシモンは見た。


「……は?」


 その光景は異様なものだった。

 イリートの襲撃に逃げ惑う竜人達はそれぞれ避難先にされているのだろう王城に逃げ込もうとしている。

 その波に逆らうように立ち止まっているシモンと隣にいるマーズは呆然とその光景を見ていた。


「レビン!」

「フレイムボール!」


 2体の大きなドラゴンがその体よりも遥かに巨体を誇るドラゴンに頭突きをかまし、その上で千花と興人がドラゴンに攻撃している。

 その衝撃で最も大きいドラゴンは一瞬よろめくが、すぐに体勢を整えると街を破壊するように咆哮しながら火を噴く。


「ヒート、プラム、何をしてるんだ!」


 青と桃色のドラゴンがマーズの言う通り仲間だということはわかったが、それぞれ戦いに夢中でこちらには気づいていない。

 よく見れば2体のドラゴンは傷を負っているのに対して巨大なドラゴンは──イリートは傷一つ負っていない。


「空中戦ってわけか。こっちの方が形勢は不利そうだな」


 シモンは言いながらマーズの方を見やる。

 彼はドラゴンになっている同志を見て驚いているのかはたまた魔王の脅威に晒された街を見てなのかわからないが固まっている。


「おい」

「な、なんだ!?」

「お前はこのパニックになってる状況をどうにかしろ。俺はあっちに乗り込んでくる」

「この状況をどうしろと!?」

「三賢竜の1人だろ。それくらいやってみせろ」


 それだけ言うとシモンは風魔法を使い、喧騒に塗れた輪から抜け出す。

 向かう先はもちろん千花の所だ。


「チカ!」

「シモンさん! 無事だったんですね」


 魔法杖を掲げ、土煙に顔を汚している千花がシモンの安否を確認できて安堵している。

 シモンはドラゴンになっているプラムの背中に乗り、千花に今の現状を聞いた。


「大方予想はついていたが、あのデカいのが魔王か。で、今の情勢は?」

「鱗が硬すぎて全く歯が立たないです」

「だろうな。竜ってのは防御力に優れてる。簡単には倒せないだろ」


 その打開策を逃げながら、攻撃しながら模索しているというわけだ。

 その間にも街は破壊されていく。


「このままじゃ街が……」

「1つだけ弱点があるわ」


 イリートの攻撃を受けながらも倒れずに立ち向かっていたプラムが千花の言葉に反応した。


「ドラゴンにはたった1つ、逆向きについている鱗がある。それを剥がせばドラゴンは鱗の上からでも攻撃が効くようになる」

「じゃあそれを見つければ……っ!」

「どうやって見つけるんだって話だけど」


 プラムから冷たく言われ、千花は改めて飛んでいるイリートを見やる。

 プラムの体でさえ数百とある鱗だ。

 ラヴァー王の体から逆さの鱗を探すのは至難の業だろう。


(それでも)

「見つけてみせる。シモンさん、私を魔王の体まで飛ばせますか?」

「お前1人で行くって言うのか!?」


 シモンに問われるが、千花は何の疑問もなく受け入れる。


「私が探している間、引き付け役になってください。急いで見つけます」


 千花の意思にシモンは逡巡するが、諦めたように息を深く吐いた。


「落ちないように気をつけろよ」

「はい」


 話が終わるとそれまで黙って聞いていたプラムは翼を大きく羽ばたかせ、イリートへと突進する。

 捨て身で突撃したプラムのおかげでイリートまですぐ近くに来た。


「行ってきなさい!」

「舌噛むなよ、チカ」


 シモンは千花の背中に手を当て、呪文を唱える。

 背中から押された千花は突風によってイリートの体へと吹き飛ばされる。


(落ちないように、ちゃんと掴まって!)


 千花は飛ばされる恐怖も(かえり)みず、イリートの鱗にぐっと掴まるとその体に着地した。


「自らの体を使って吾輩を倒そうとするか」


 体に乗られたことにイリートが気づかないはずもない。

 イリートは千花に話しかけ、急に旋回し始める。


「うわっ」

「面白い。鱗を探し当てるか、耐えきれず振り落とされるか、どちらが早いか勝負しようではないか。光の巫女よ」


 イリートは愉しそうに告げると、千花を振り落とそうと体を捩らせた。

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