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光の巫女  作者: 雪桃
第10章 フレイマー
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フレイマーへの侵入方法

 千花が復活した翌日。

 機関内で作戦会議が始まった。


「竜人は鼻も耳もいい。それに今気が昂ってるから、正面突破すれば簡単にチカの存在がバレるぞ」

「そうですね。魔王の所へ行きたいと言ってもどうせ仲間なんだろうと阻止されます」


 シモンと邦彦が突破口を見出している間に、「実は」と興人が口を開いた。


「1つだけ、城へ入れる抜け道があります」

「見つけたのか?」

「いいえ、思い出しました。俺が、フレイマーの王族として生きていた時のことを」


 14年前。

 まだ3歳だった頃の興人はつまらない王宮での生活に飽き飽きして部屋に穴を空け、秘密基地ならぬ秘密の通路というものをおもちゃとして作っていたらしい。

 竜人として知能が高かった興人は秘密の通路を上手く隠しながら誰にも気づかれずにいつもその通路から外へ出て、森に少しの間遊びに行っていた。


「ただ、それが仇になって奴隷商人に見つかり、拉致されたようなものなんですけど」

「お前も中々人に心配かけさせる性分だったんだな」

「昔の日向君はそうでしたからね」


 興人の過去を寸分垣間見えることになった千花達だが、その抜け道が使えるとなれば千花が竜人と会うことなく魔王を退治することはできるだろう。


「ただ問題が1つあって。抜け道を作った当時のことを考えると潜り抜けられるのは小柄な田上くらいで」

「必然的に田上さんを1人にするしかないと」


 興人は神妙な顔で頷く。

 いくら魔王が倒しに来いと言っていたとしても、千花1人を魔王に差し向ければまた言葉巧みに惑わされてしまうかもしれない。

 千花もあのイリートの言葉に再び混乱させられてしまうことは避けたかった。


「俺も姿を見られている分、王族なのに悪魔だと見られてしまえば田上を救いに行けない。なのでシモンさん、城への正面突破はお任せしてもいいですか」

「まあ、そうするしかねえよな。俺は幸い姿は見られてないわけだ。で、オキトはどうするんだ?」

「ヒート達は魔王との一件があってから田上を敵視しています。俺は、その制止役に回ります。王族の俺の言葉なら、話を聞いてくれるかもしれない」

「前もそうだったしな。クニヒコ、異論はないか?」


 話を聞いて考え込んでいた邦彦は名指しされて顔を上げ、1つ頷く。


「それが今は最善策でしょう。僕はフレイマーとの国交が遮断された時のことを踏まえて王宮で待機していますが、何かあったらすぐに戻ってきてください」


 人間を嫌い、千花を悪魔の手下だと考えているフレイマーに何人も人間が出入りすることは避けた方がいいという邦彦の思いだろう。

 千花は邦彦と目が合い、力強く頷く。


「今度こそ、魔王を倒してきます」

「よろしくお願いします」






 イアンの扉からフレイマーに着くと、すぐに興人は千花を城の裏側へと案内しようとした。


「シモンさん、城内へはきっと敵も少なく行けるはずです。先程言った通りの場所で待っていてもらっていいですか?」

「ああ、任せとけ」


 そう言うとシモンは自身を透明化させ、素早くフレイマーの中へ入っていく。

 いくら嗅覚と聴覚が発達している竜人でも魔法が使えなければすぐにシモンを見抜けるとは考えにくい。


「田上、こっちだ」

「うん」


 2人は火山と木々で覆われた森を潜り抜け、王宮の裏側まですぐに辿り着く。

 ここの地中を潜り、走り抜けると興人が使っていた部屋に行きつくらしい。


「一本道だから迷うことはないはずだが窮屈だろうから怪我には気を付けろ」

「行ってくるね」


 14年間、誰にも気づかれずに残っていてくれた抜け道に感謝しつつ、千花は中へと入っていった。

 興人はそれを見届けてから、一息ついて背後へと体を向ける。


「いるんだろう。もうわかっている」


 興人が声をかけた森の先には誰もいない。

 そう思われた矢先、2つの影が興人を取り囲んだ。


「どういう了見ですか。王子」

「あの女を、再びフレイマーに連れてくるなど、あなた様も操られているのですか」


 目の前に立っているのはヒートとマーズだった。

 フレイマーに降り立ってからすぐに後をつけられていることを興人は感じ取っていた。


「そんなことを言うならお前達だってどうして俺を止めなかった。森を抜ける間に攻撃してきたらよかったものを」

「王子であるあなた様を攻撃するなど滅相もない。あの女が1人になった時、プラムに退治は任せていますので」


 興人は言われて気づく。

 確かにここに三賢竜の1人、プラムはいない。

 プラムも小柄な体型をしている。先回りして千花を暗殺していてもおかしくない。


(いや、大丈夫だ。今の田上なら、プラム1人対処できる。俺が今やるべきことは)

「ヒート、マーズ、俺を攻撃しないということはお前達は俺の話を聞いてくれる時間があるのか」

「ご用命とあれば」


 やはりフレイマーの竜人は王族への忠誠心が高い。

 昔も、そうだった。


「じゃあ言わせてもらう。ヒート、マーズ」


 興人は大剣の柄を握る。

 攻撃体勢に入るのかと身構えた竜人2人だったが、打って変わって興人は大剣を地面に置き、自身も地面に膝をつく。


「俺を探し出してくれて、ありがとう」

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