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光の巫女  作者: 雪桃
第9章 悪夢のような冬
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激闘走る

 千花が閉じ込められたすぐに激闘は始まった。

 ゼーラもシモンの実力を買っているのかは定かではないが、容赦はしないと言うように魔法を繰り出す手を緩めない。


「お前は何者だ。なぜアイリーンと千花を戦わせる」

「あら、楽しいからに決まっているからですわ」


 氷の矢を弾き返しながらシモンは問う。

 その質問にゼーラは馬鹿にしたように笑いながら答える。


「だって私のお父様を閉じ込めた巫女様がまだ生きているのですもの。とっくに存在を消されたものだとばかり思っていましたのに。これだけ楽しいことはないでしょう」

「お父様……ってことは、お前、フリージリアの悪魔か」

「ええ。父、ゼラオラから魂を分けもらった娘でございます。それで、いつになったら私に攻撃をしていただけるのでしょうか」


 ゼーラが笑いながら氷柱を落としてくる。

 シモンは防御を取りながら、大きく舌打ちをする。


(こいつ、隙がねえ。こっちが攻撃しようとする前に弾幕で標的を逸らしてくる。全く焦点が合わない)


 シモンは防御を取りながら鋭い岩を発射していく。

 ゼーラは軽々と避けては更に氷柱を増やしてくる。


(どうする。まさか1人で対処できないとはな)


 今まで戦い続けてきたシモンでも全く手に負えないとわかると、冷や汗が流れてくる。

 その姿にゼーラも力の差に気づいたのか、つまらなそうに表情を無くした。


「あなたであればもう少し暇つぶしになると思ったのですが、これだけのものだとは思いませんでしたわ。さっさと倒して見物にでも行きましょう」


 ゼーラは一際大きい魔法陣を展開させると、シモンに向かって呪文を唱えようとした。

 だがその直前で炎の渦に陣を解かれる。


「!?」

「シモンさん!」

「お待たせしました」


 シモンが声のする方向に振り向くと、機関から邦彦と興人が走ってきていた。


「お前ら来れたのか」

「今の状況は後で聞きましょう。まずは田上さんの救出に……」

「赤髪の、青年」


 邦彦の言葉を遮ってゼーラが興人を見下ろす。

 その表情はネズミをいたぶる快感を覚えたような醜い笑みだった。


「あなたのこと、ずっと探してましたのよ!」

「オキトお前、危ない女に引っかかったな」


 シモンが強がりに揶揄する横で、興人はゼーラのことを思い出した。

 カイトを閉じ込めたあの女は、最後興人に憎悪に近い怒りを向けていた。


「俺は、こっちにいた方が良さそうです」

「そうだな。クニヒコ、チカへの道は隙を見て切り開いてやる。あっちにはアイリーンもいる。どっちも救ってこい」

「アイリーンさんがっ? いえ、わかりました。お願いします」


 邦彦は氷の壁に向かって走っていく。


「隙を作るのは任せてください」


 邦彦を阻止しようとするゼーラに興人は面から突っ込んでいく。

 その剣でゼーラの行く手を阻むと、シモンはようやく出来た隙を見て氷の壁の一面を破壊する。


「メテオ!」


 分厚い壁になっている氷は全て破壊することができないが、一箇所にヒビが入れば邦彦には十分だ。

 邦彦は拳でヒビの入った中心を殴り、中へ入っていった。


「よくやった、オキト」


 邦彦の行方を見届けてからシモンはゼーラと興人の方へ駆け寄り攻撃を下す。

 ゼーラはシモンの魔法に飛ばされ、後ずさる。


「嫌いな人間が増えましたわ」

「そりゃご愁傷さまだな」


 ゼーラは自分の思い通りに巫女同士戦わせられなかったことに腹を立てているようで、興人だけでなくシモンにすらも殺意を抱いている。

 だがシモンが怖じけることはなく、むしろ興人という味方が現れたことに強気になった。


「あなた方はタダでは殺しませんわ。巫女様への見せしめに、魔力が尽きるまでいたぶってさしあげますわ」

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」


 シモンは挑発に挑発を返し、更にゼーラの怒りを暴発させていく。


「シモンさん、後10分です。10分戦えば、道が開きます」

「10分あれば何か起きるんだな。ああ、行くぞ」

「フレイマー!」

「メテオ!」


 興人とシモンはゼーラ目がけて飛びかかっていった。

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