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光の巫女  作者: 雪桃
第8章 それぞれの思惑
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属性を操る

 色々考えた末、カイトを毎日トロイメアに連れていくことは控えることにした。

 周りの視線、シモンとの関係性もあるが、それよりも薬が少ないこともある。

 人魚は基本的に海水から養分を吸い取って栄養としている、と聞いた時、ただ風呂場に水を貯めて過ごさせればいいと思っていた千花は焦った。

 結果、カイトには次の戦いに参加してもらうことを条件に、一度ウォシュレイに帰ってもらうことにしたのだ。

 カイトは「それでは母上の意向が」とぼやいていたが、どちらかと言うと千花にはそちらの方がありがたかった。


「次に呼ぶ時はもう少し登場の仕方を考えますから。目立たないように」

「人間は能天気だな」


 12時間が経ち、鰭を取り戻したカイトはウォシュレイまでの海に身を沈めながら千花を見上げる。


「カイトの心意気は本当にありがたいんですが、きっと訓練の仕方も人魚と人間では違うと思うんです。無理にトロイメアに来なくても大丈夫です」

「……我は無理はしていない。ただ、この目で確かめたいことがある」

「確かめたいこと?」


 千花の首を傾げる動作を見ながら、カイトは思い返す。


(あのユキという女が簡単に身を引くとは考えにくい。光の巫女と名乗る……いや、偽るのなら、次は本物の巫女(チカ)を狙って消そうとしてくるだろう)


 囚われた張本人として、ウォシュレイを救ってくれた千花への恩返しとしても、ユキの始末はカイトの手で行いたい。

 そう考えると、トロイメアにそのまま居座っていたい気持ちはあるが、今の薬の段階では四六時中人間と同じ生活はできない。


「カイト?」


 黙り込むカイトに不安そうな声を出す千花に、思考を止め、再度彼女の顔を見る。


「戦いに赴く時には必ず言え。我は必ず、お前の力になる」


 カイトの力強い意思を身に受け、千花は目を見開きながらも安心したように微笑む。


「はい。ありがとうございます」


 千花がお礼を言って頭を下げるのを見届け、カイトは海の中へ体を沈めていった。


(悪魔の脅威が、これ以上巫女を蝕まないように)


 カイトの、千花への強い思いは変わらなかった。






 シモンの言う通り、千花の魔法訓練は加速していった。

 既に2属性の魔法を習得し、光・風属性は何となく覚えるまでに至ったが、シモンは千花に全属性を覚えさせる気でいるらしい。


「少し荒療治にはなるが、原理はどれも同じだ。水も雷も炎も、手のひらに収まるくらいの元素を操ることができればすぐに実践に繋げられる」

「簡単に言いますね」

「慣れたら簡単なんだよ。要は波長を合わせるだの抽象的な事を理解できればなんてことはない」


 シモンはそう言うと透明な四角い箱を3つ用意持ってきた。


「今からここに水と火種、雷を別々に入れていく。慌てなくていいから、操ってみろ。初めに泥人形を作った時みたいに、魔力を手のひらに集中させて」


 魔法を使ったことのない一般人であれば、シモンの言っていることは無理難題だろう。

 事実、千花も魔法が使えなかった頃は一生土の人形なんて作れないと思っていた。

 だが今は違う。経験がものを語るのだ。


(まずは水からやってみよう)


 千花は透明な箱の正面に立って、じっと液体を見つめる。

 どの物体にも魔力は込められていると、シモンから初めに教えてもらった。


「手のひらを椀の形にしてすくってみる感覚を想像してみろ」


 シモンに指示された通り、千花は実際に両手を丸めてその中に水を入れる想像を浮かべながら魔力を持っていく。

 想像ができれば後は集中力の問題だ。

 千花は気を散らさないように深呼吸を意識する。


(私の所においで)


 目の前の水に語りかけるように息を大きく吐く。

 その瞬間、静まっていた水が波打ち始め、千花の手に集まり始めた。


「できたっ!」


 喜ぶ千花だが、そこで集中を切らしてしまうと一気に空中に上がっていた水は全て落ちていった。


「あっ……」

「初めはそれでいい。コツさえ掴めば今度は集中しなくても自然と魔法が使える。今度は火種を指先に移してみろ」

「え、火傷するんじゃ」

「ただの火なら触れば熱い。だが、自分の魔法になればそれは武器になる。怯えずにやってみろ」


 全く想像ができない千花だが、思えばウェンザーズでリョウガに雷の剣を渡された時、痛みを感じなかった。

 魔法になれば原理が変わるのだろうか。


「やってみます」


 強くなるために、自分の身を守れるように、千花は気合いを込めて訓練に入った。

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