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光の巫女  作者: 雪桃
第6章 機関へ
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懐かしき薬草畑

「道案内は?」

「行って帰るまで時間はかからないんだし自分で行ってみろ。入り組んでいるが冒険家が初めて通る道だからそこまで危険ではない」


 甘えようとしていた千花は少し肩を落としながらも、どうやって目的地まで行けるか考えることにした。


「ナビなんてないもんね」

「そう考えればこの世界はかなりアナログだな」


 千花は目の前の大きな木を眺める。

 今まで案内してくれた彼らは何を見て目的地までたどり着いたのか。


「……ねえ興人。幹についてるこのリボン何?」


 色が茶色だったためすぐには見つからなかったが、太い木の幹にリボンが1本巻きついている。


「それが初心者が迷わず行ける目印だ。それを見つけていけば薬草の場所まで簡単に行ける」

「私はともかくギルドに入る人はある程度魔法が使えるんじゃないの?」


 子ども扱いされているようではあるが、この世界にとっての千花は子どもだろう。

 道がわかったので、千花は更にリボンを見つけて進むことにした。


「ビーストモンキーはまだいるのかな?」

「いたとしても今の田上なら1人で倒せるだろ」

「どうかな?」


 初心者向けの猛獣だと言われたビーストモンキーだが、2回戦って快勝とは言えなかった。


「もし何かあったら手伝ってよ」


 千花が不安そうに頼んでくるが、興人は複雑そうな表情を向ける。


(ビーストモンキーより魔王を倒す方が何倍も難しいんだが)

「興人?」

「本当に難しいなら手伝う」


 あえて思ったことは言わず、興人は曖昧な言葉を返した。


 薬草畑へはすぐに着いた。

 以前の草原は千花の目の前で壊されたため、別の場所であることはわかっている。


「白い花は毒だよね。何もついてない物を採るけど、黄色い花は絶対採っちゃだめ」


 念押ししながら千花は緑の草原を探し回る。

 興人も主に千花に危険がないよう見守りながら手分けして薬草を探す。

 たまに黄色い花も見かけたが、採らなければ襲われることはない。


「意外と見つからないね」


 以前も白い花ばかりで苦戦した覚えがある。

 そして今も、目の前は白い花ばかりだ。


「今日のノルマは何本だっけ?」

「20」

「前より多いね」


 やはり2人がかりで探しに来て良かった。

 日が暮れるまでに終わりそうになかった。


「ねえ興人、この世界の日没って早いの?」


 訓練を終えてトロイメアに降りてきた時刻が昼すぎだった。

 日本でも短くとも昼から4時間近く日照時間があるが、この世界ではまだ2時間しか経っていない。


「そうだな。日の出はあっちとそこまで変わらないが、言われてみればトロイメアは日が落ちるのが早い。日没になったら皆仕事を終えて、飲みに行くから」

「夜でも賑やかなんだね」


 機関でも学校の寮でも門限があるため、千花は夜のトロイメアを見たことがない。

 許しが出たら行ってみたいものだ。もちろん誰かと。


(1人で飲み屋はちょっと怖いから)


 印象が違うトロイメアを想像しながら千花は薬草を摘んでいく。

 運良く何もついていない薬草の密集地帯を見つけた。


「興人! こっちいっぱいあるよ。これならすぐ集まる」

「そうか」


 千花は無駄にならないよう根元から薬草を抜き取り、カゴに入れていく。

 ノルマの20本まで興人の分と合わせると後1本だ。


(残りは……)


 ここまで群衆していた場所を見つけると今度はぱたりと見つからなくなる。

 興人も中々苦戦しているようだ。


「あ、あった」


 奥の方まで行くと崖下に1本薬草が生息していることがわかった。

 だがギリギリ手の届くかわからない所にある。


(興人を呼んで……いや、届くかも)


 千花は落ちないように片手で地面を掴みながら薬草に向かって手を伸ばす。

 薬草の葉には手も付けられるが、根元をちぎるには長さが足りない。


(でもこれくらいならもう少しで)


 千花は体を崖の方へ近づける。

 持ち方を変えれば根元まで掴むことができた。

 しかし体はゆっくり崖の方へ落ちていこうとする。


「田上!」


 彼女が危険な状態にあることに気づいた興人が叫ぶ声に千花は体を震わせた。

 その振動で体も重力に逆らわず落ちようとする。


「あっ」


 千花の体が放り出されると同時に、興人が服を引っ張り引き寄せようとする。

 だが一歩間に合わず、2人して崖から落ちていった。

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