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光の巫女  作者: 雪桃
第6章 機関へ
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カルロのオシャレ作戦

 その後、フラフラと出店に吸い寄せられそうになる千花を捕まえながら2人は教会に着いた。

 熱心な教徒というわけではないが、光の巫女の像を見上げていると無意識に祈りたくなる。


「ふう……」

「疲れたか?」


 像を前に小さく溜息を吐いた千花に興人は気をつかう。

 千花は否定するように首を横に振る。


「色々考え事してただけだから。さ、次に行こう」

「もういいのか」


 教会には今来たばかりだというのに、千花は少し像を見上げて祈るとすぐに出ようとする。

 元々長居する場所ではないが、その顔がここから出たいと言っているような表情にも見える。


「もう用事は終わったから。いいでしょ?」

「……ああ」


 空元気にも見える笑みだが、興人は気づかえる程の言葉を持ち合わせていない。

 下手に傷つけるよりかは応じた方がいいと捉えた。


「次はカルロさんの所?」


 ここから一番近いのは3番街にある隠れ家のようなカルロの店だ。

 入り組んでいる所にあるため興人に案内してもらいながら隠し扉に辿り着く。

 一度経験しているため驚かない。


「アドラメレク」


 興人が扉をノックして合言葉を唱える。

 そう言えば色々ありすぎて合言葉の意味を聞いていない。


「ねえ興人、それってどういう意味……」

「いらっしゃいオキト! 会いたかったわよぉ!!」


 千花が話しかけると同時に扉が勢いよく開き、ピンク色のチュチュを纏った筋肉ムキムキ、スキンヘッドの男が飛び出てきた。

 紛うことなきカルロである。


「あら? やっだチカちゃんもいるじゃない! もう、いるなら教えてよぉ!!」


 カルロに背中をバンバン叩かれ興人は小さくむせる。

 興人でこうなるのだから千花が受けたら骨1本犠牲になるのではないだろうか。


「こんにちはカルロさん。お元気そうで何よりです」

「これでもかってくらい元気よ! 産まれてこの方風邪なんて引いたことないわ。それで? 今日は何を所望かしら」


 寒そうな格好をしているが、筋肉が守ってくれているとでも言うのだろうか。

 カルロに入り用を聞かれ、千花は返答に困る。


「あの、最近会ってなかったので様子を見に行こうと思って。冷やかしに来たわけではないんですけど」


 買う物もないのに店に来たらやはり迷惑だったろうか。

 しかし千花が申し訳なさそうに縮こまる中、カルロは全く気にしていないようだった。


「あらあらそうだったの。どうぞ中に入って。今お茶を淹れるからね」


 カルロが足取り軽やかに店の奥へと入っていく。

 怒っていないその雰囲気に千花はほっと力を抜いた。


「気を悪くしてないみたいで良かった」

「カルロさんの店に来るのは買い物客よりお茶しに来る人ばかりだからな。むしろこっちが普通だ」


 確かに慣れてしまえば何も用がなくても話に来たくなる陽気だ。

 ピンク1色の店内を素通りしながら千花達は小部屋へと入る。


「お待たせぇ。クッキーも焼いたからどうぞ」


 カルロの言葉に千花が瞳を輝かせる。

 成長期だとしてもあれだけ食べてなぜまだ食べ足りないのか、興人はかなり不思議に思った。


「最近オキトすら顔を見せないから私も不安だったのよぉ。こうやって遊びに来てくれるだけでも嬉しいわ」


 カルロは頬に片手を添えて喜びを表す。

 カルロにも千花の正体を隠している手前事情を話せないことは心苦しい。


「来れなくてごめんなさい」

「あら、気にしてないわ。トロイメアは皆忙しそうだからね。ここではゆっくりしていってちょうだい。特にそのお肌、ちゃんと栄養とってる? ボロボロよ」


 楽観的な思考のカルロの言葉に何度も救われる。

 だがカルロの次の言葉で千花は自分の頬に手を置いて首を傾げる。


「ボロボロですか?」

「まあ! 気づいてないの? 見たらわかるわよ」


 「わかる?」と興人に問うが、彼も首を横に振る。というよりこのピンクに染められた部屋でよく顔の状態がわかるものだ。


「オキトも鈍感ね。女の子の変化はしっかり気づきなさい」

「はあ、すみません」

「本当にわかってるのかしら」


 生返事をする興人に呆れた溜息を吐くカルロは、手を伸ばした先の棚から小瓶を1つ出した。


「こっちへいらっしゃいチカちゃん。せっかくのお休みでしょ。おしゃれしちゃいましょ」

「あ、私そういうのは興味が……」

「何か言った?」

「いいえ。お願いします」

「オキトはここで待ってなさい」


 断ろうとした千花だが、カルロの圧力に負けて場所を移動することにした。

 移動した先はメイクをするための三面鏡が置いてあった。


「チカちゃん普段スキンケアは?」

「全く」

「まっ! あなたね、10代だからって甘く見てると一気に崩れるからね。1日サボっただけで粉吹くわよ」


 グチグチ説教されながら千花は鏡の前に座る。

 何をされるのか不安と期待が混じっている千花の後ろでカルロは小瓶を開け、手のひらに液体を落とす。


「もし痛かったら言ってね」


 痛いことをするのか、と千花が身構えた瞬間、カルロが両頬に手を置いた。

 少しひんやりとしたが、ベタベタせず、肌によく馴染む。


「化粧水ですか?」

「そう。天然木の葉をすり潰して保湿できるように加工したの。レア物だからね」


 筋肉体のカルロだが、やはり心は乙女らしい。

 手つきが優しく、化粧水を押して馴染ませてくれる両手がマッサージのようだ。


(このまま寝られるかも)


 千花が癒されているタイミングでカルロは次の工程に移る。似たような液体を2つ程塗られ、恐らくカルロが言っていたボロボロの肌はモチモチ肌に戻った。


「さあ、次は髪よ」

「え!?」

「肌で終わりなわけないでしょ。この際とことんお手入れしていくわよ」


 いつの間にかカルロの横にはケア用に道具が並んでいた。

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