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光の巫女  作者: 雪桃
第6章 機関へ
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1日経って

今回も短めです。すみません。

 次に千花が目を覚ました時には丸1日経っていた。

 飛行船は雲の上を通っているため時間感覚が狂う。


「起きてる時は元気に思えるが、実際そう体は上手く機能しない。だが、おかげで大分軽くなったんじゃないか」


 マーサの言う通り、昨日まで支えられないと怠かった体は疲労が抜け落ちたようにスッキリとしている。

 立ち上がっても目眩がしない。


「オキトと言い、若い奴は回復能力も違うね。年寄りにゃ後2日は必要だ」

「じゃ、じゃあ、もうバスラに行っても」

「それとこれとは話が別。国内で襲ってくる奴がいなくても、1歩森に出れば猛獣も魔物もいる。魔法を満足に使えるようになってからだ」


 マーサに注意され、千花は肩を落とす。

 だが予想できた答えなのでそこまで落ち込むことはなかった。


「このまま休めと言いたいところだが1日寝ておいて目は冴えてるだろ。睡眠薬を連続で飲むのも健康に悪い。訓練場で少し体を動かしたらどうだい?」


 無理はしないように、と念押ししながらマーサは動きやすい訓練着を持ってきてくれる。


「クニヒコは現世に降りて仕事してるから、秘密にしておけ」

「ありがとう、ございます」


 医者から許しが出たなら動いていいのだろう。

 千花は迷いながらも医務室から出ることにした。


(動きやすい。昨日は万全じゃなかったんだ)


 千花は白い扉を探しながら歩く。

 ワープホールを少し進んだ両開きの扉が訓練場だとわかっていればそこまで難しくはない。


(シモンさん……の所には後で行こう。1人であそこに行くと気分がどんどん悪い方向に行く)


 ネガティブな感情を追い払うように千花は頭を振る。

 気分転換のために運動するのだ。


「あ、着いた」


 機関内はそう広くはない。1分も歩けば訓練場に着いた。


(興人、いるかな?)


 邦彦の話では機関の人達はほとんど訓練しない。

 それでも知らない人がいたらと恐る恐る扉を開ける千花だが、中は打って変わって静かだった。


「興人、いないんだ」


 一緒に訓練しようと思っていた千花だが、むしろいない方が集中できるかもしれない。


(興人に指導を頼むと殺されかねないし)


 初めて炎の渦に巻き込まれたことを思い出し、千花は身震いする。

 とにかくまずは固まった体を解さなければならない。


「うーーん……いてて」


 毎日かかさず行っていた訓練をずっと休んでいたのだ。

 体が凝り固まって力が出ない。


「今日は柔軟を増やして、少し魔法を使って終わりにしよう」


 無理をして体を壊したらまた回復に専念しなければならない。

 肝に銘じながら千花は体を動かしていく。


(ギルドの訓練場で1人になることがなかったから、こんなに静かなのも久しぶり)


 ストレッチをした後は準備運動をする。

 準備が大事だと気づいたのも訓練を初めてからだ。


「よし。今度は魔法を」


 千花は異空間から杖を取り出す。

 手のひらに乗る魔法杖を掴み、違和感に気づく。


「あれ?」


 杖の方に視線を向ける。

 自分の身長半分くらいあった杖は、更にその半分に割れていた。


「……あっ」


 思い出した。ゴルベルに見せしめのように破壊されたのだ。


(ゼーラに直してもらったけど、それも意識を失う前に折れたんだ)


 杖が破壊された時の絶望は今でもはっきり覚えている

 千花は表情を暗くしながらも切り替えるように頬を両手で叩く。


(ネガティブになっちゃ駄目! 杖がない代わりに魔法のコントロールを練習すればいい)


 杖や剣はあくまで魔法を正確に打てるようにするための道具だと以前教えてもらった。

 千花は折れた杖をしまい、手のひらから魔法を出す訓練に変える。


泥団子(マッドダンプ)


 千花は遠くの的に向かって両手を突き出し、得意な土魔法を繰り出す。

 杖がなくとも魔法は発動するが、威力は半分以下に落ちる。


「体力の低下と素手のやりづらさがすごく出てる。シモンさん、本当にすごいんだなあ」


 千花が手こずっていた敵も片手で倒していたシモン。

 歳もそこまで変わらないというのに、これが実力の差だとまじまじと実感する。


(すぐに代わりにはなれないけど、私が強くなればシモンさんの命の危険も少なくなる)


 せめて戦えるくらいには魔法を鍛えたい。

 千花は的に向かって更に魔法を撃ち続ける。

 そして健気に奮闘する少女の姿を、リンゲツは複雑そうな表情で見下ろしていた。

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