彼女の秘密を俺は知る(2)
その次また俺は早く家を出た。
俺は教室に着くと教室には今日も涼風さん一人だけいた。
俺は荷物を席に置き涼風さんの席に向かった。
「おはよう涼風さん」
「おはよう湊君」
挨拶を終えると彼女は机から一冊のノートを出してきた。
「湊君、昨日言ったことなんだけど……」
そう彼女は恥ずかしそうに言うと
「これが湊君が見たノートなんだけど……」
彼女はそう言うとノートを広げた。
そのノートはびっしりと埋まっていた。歌詞の意味、歌うときの注意点、しゃくりやこぶしのポイント、点数の推移、喉のケアの方法など歌に関することについてびっしりと書かれていた。
(いや、これは歌についてと言うより……)
「涼風さん、このノートは……」
「私がカラオケで歌うときに大切だと思っていることをまとめてるんだけど……」
(やっぱり、書いてあることの中にいくつかカラオケでしか当てはまらないことがあったしな)
「すごいねこのノート、涼風さんはなんでこんなの作ってるの?」
俺がそう聞くと彼女は顔を赤くしながら
「実は私ね、テレビでやってる〇〇っていう番組に出たいの」
その番組なら俺も知っている。週末、母親がいつも見ている番組だ。
日本中のカラオケが上手い人を年齢やジャンル別に集めて点数を競わせる番組だ。
「なんで出たいの?」
「小学校の時に転校しちゃった友達がいたんだけどね、その子転校直前まで教えてくれなくてね。また会いたいんだけどどうすれば会えるか考えたら、彼女が〇〇に出たいって言ってたのを思い出したんだ」
「なるほどね、けどその子〇〇に出れるくらい歌が上手いの?」
「大丈夫! 彼女は私の100倍は歌が上手いから」
彼女はそう笑顔で断言した。
「そうなんだね。涼風さんなら絶対にいけると思うから頑張ってね!」
そう言って俺が席を立とうとすると。
「待って」
彼女は俺の手を掴んだ。
「湊君に私の歌の練習に付き合ってもらいたいんだけど良い?」
彼女が何を言っているのか俺は理解できなかった。
「俺が涼風さんの練習を手伝えれるとは思わないけど」
「そんなことない! 湊君が歌ってたクリヤミの歌すごくうまかったよ」
クリヤミとは最近流行っている女子高生シンガーのことだ。
確かに俺はクリヤミのことが好きだし、声質が合ってるのかカラオケでも意外と点が出たりするが……
「なんで涼風さんが俺がクリヤミ歌うこと知ってるの?」
「ごめんなさい! 実は湊君が私の歌を聴いた日に私も湊君の歌聴いちゃったの」
どうやら彼女も俺と同じことをしていたらしい。
「ごめんなさい! 勝手に歌聴いちゃて」
「良いよ、俺も勝手に聴いちゃたわけだし」
(涼風さんの秘密を教えてもらったわけだし俺だけ言うこと聞かないわけにも行かないな)
「分かった、練習付き合うよ」
「ホント! ありがとう」
こうして彼女の練習に付き合うことになった俺は今週の土曜日にカラオケに行く約束と連絡先を交換すると自分の席に戻った。
(そういえばなんでクリヤミが上手いだけで選ばれたんだろう?涼風さんならクリヤミの曲も俺より上手いだろうに)