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短編

STO(ショウセツ・トウコウ・オンライン)

作者: 詠人不知

※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、サイト、作品とは一切関係ありません。全ては偶然の一致です。


「これは、小説であっても遊びでは無い」

           ーーバカヤ・アノヒト



□とある教室にて


 《STOショウセツ・トウコウ・オンラインへようこそ!》


 画面一杯に映し出された文字列。

 なぜか得意気にそれを見せつける友人。

 教えてくれ、俺は何て返せば良いのだろうか。


「……で、これがなんだって?」


「おいおい、話を聞いてなかったのか? これが日本、いや世界最大の小説投稿サイトにして世界最大のーー」


 もったいぶってわざわざ一度言葉を切り、ドヤ顔でこう言った。


「ーー“デスゲーム“の舞台なのさ」


「お前は何を言っているんだ?」


 本当に何を言っているんだ???

 頭痛が痛い。やれやれ、俺は帰る事にした。


「待て待て待て待て! 話は最後まで聞けよ!」


「お前がまたバカな話を始めたことはわかった。聞くまでも無く」


「相原さんもこのサイトを見ているらしいぞ!」


 ピクリ、と思わず眉が動く。

 相原さんとはクラスで一番可愛い女子の名前だ。

 可愛いだけでなく俺たち陰キャにも優しい神の如き存在だ。

 いや、もはや女神だな。確定的に。

 あと胸がでかい。


「……聞くだけ聞こうじゃないか」


「お前本当に扱いやすいな」


「なんか言ったか?」


「いや、なんでもない」


 友人(バカ)に肩パンしながら俺は先を促す。


「で、このサイトに小説を投稿しているのか? お前が?」


「そうなんだよ! 見ろよこの獲得ポイントを!」


 画面には『†黒のリキト†』が投稿した何やら長ったらしいタイトルの作品が表示されていた。

 ポイントもいくらかついているようだが……。


「って本名じゃねーか! よく本名で投稿できるな!?」


「何を恥じらうことがある? 世界に俺の名を知らしめるビッグチャンスだってのによ……!」


 なんて胆力だ。こいつは大物か、とんでもないバカかのどちらかだよ……!

 いや、間違いなく後者なんだけど。


 まあ、リキト(バカ)の名前はともかくとして。


「へー、投稿した小説にポイントがつくのか」


「そう! このポイントこそが遊戯(ゲーム)の勝敗を決める!」


 小説を読んだ他のユーザーが気に入れば、その小説にポイントを入れることが出来るシステムのようだ。

 当然、1ユーザーが入れることのできるポイント量は決まっている。


「つまりより多くのユーザーに読んで気に入って貰えば、より多くのポイントを入手できるってわけか」


「ふっ、わかってないな。これはそんな単純な遊戯ゲームじゃない」


リキト(バカ)がカッコつけようと低い声を出しているが、特にカッコ良くはない。


「なんせ……“デスゲーム“だからな!」


「いや死ぬ要素皆無じゃん」


 安全安心の小説投稿サイトじゃん。まずゲームでもないし。

 風評被害やめろ。運営に謝れ。


「お前はこの規約を読んでもそんなことが言えるかな……?」


「規約?」


 ざっと読んでみたが特に変な事は書いていない。

 強いて気になる点をあげれば……。


「一度でもBANされるとアカウントの作り直しはできないんだな」


「そこに気がつくとは、さすが俺が仲間と見込んだ男だ!」


 やめろ。バカの仲間になった覚えはない。

 とは言え。


「この条件は厳しい気もするな……一度BANされればそのユーザーはこのサイトでは死んだようなものだ。なんせもうユーザーとしては活動できないんだから」


「その通り! つまり……BANが本当の『死』を意味する過酷な“デスゲーム“なんだよ、このサイトは!」


 ようやくバカの言いたいことも少しわかってきた。


「BANされても良いゲームなんてぬるすぎるぜ」


「やかましいわ」


 だけどなあ。


「BANされるのなんて規約違反した時だけだろ? 普通に利用してる分にはデスゲームにはならないと思うが」


「クックック……凡夫の発想……!」


 うぜえ〜〜〜だまれ〜〜〜!


 願い虚しく、リキトの言葉は続く。


「お前はまだこのサイトを理解していない。このサイトの本質、それは小説を投稿することではない!」


「言い切ったなおい」


 知らないぞ。運営に土下座するなら今のうちだぞ。

 鳥未満の何かに謝らなければならない予感がするぞ。


「いかにポイントを稼ぎ、ランキングを駆け上がるか! それが全て!」


「全てではないだろ。全読者に謝れ」


 ポイントなんてタダの数字だよ。

 そんなものよりもっと大事なものがある。気がする。

 次は現実世界で会おう。


 だがバカの言うことも一理ある。

 システムとしてポイントがあり、それをもとにしたランキングがある。

 そうである以上、いかにポイントを稼ぐか、ランキングをあがるかを競うのも楽しみ方の一つだろう。

 そう、一理ある……ここまでは。


「そしてポイントを稼ごうとする以上……規約ギリギリアウトの行為に手を染める事になるのも必然!」


「必然じゃねえよ!」


 ただの不正だよ!

 嫌な予感は的中した。


「例えば俺はユニークスキル《二垢流》でポイントを水増ししているが……」


「ただの複垢だよなそれ?」


 なんだよユニークスキルって。


「それだけではランキング上位の《攻略組》には歯が立たない……!」


 なんだよ攻略組って。


「《攻略組》はランキングを駆け上がるためには手段を選ばない。《ギルド》のメンバー間でポイントを与えあったり、ゴニョゴニョをゴニョゴニョしたり色々しているんだ」


 へー色々あるんだね。

 やばいと思った俺はとっさに具体的な部分は濁させた。

 ふいー、冷や冷やするぜ。


「だから俺は……ランキングを奴らの魔の手から取り返したい! 言っておくが俺はソロだ。限界がある。俺に……俺に力を貸してくれないか!」


 お前も不正してるけどな。

 要するに俺はアカウントを作ってポイントを入れれば良いらしい。

 そういうことになった。






「人気ジャンル人気ワード特盛タイトル! さらにユニークスキル《二垢流》!」


「それに俺のポイントを合わせて!!! 初動はバッチリだ!!! いけ、リキト!」


「くらえええええ!!!! 一日十六連投スター・パンスト・ストリーム!!!」


「イケる……! イケるぞリキト! すごいポイントの伸びだ、これなら日間一位に……!」


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 雄叫びと共に連投されるリキトの渾身の作品。

 

 勝てる……これなら……!!!!!






 翌日、複垢がバレたリキトは(BAN)された。

 ユニーク(笑)

※この作品は諸般の事情により予告なく削除する可能性があります。予めご了承ください。

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