第七章 二幕 『瓢箪から駒』
「……ぷ、はぁ―――ッ! し、心臓にわ、悪いぜ……!」
息をすることすら忘れてジョージは見入っていた。が、ようやく深呼吸をすると、イリューンの勝ち残りに安堵した。
すぐさま第二試合が始まろうとしている。しかし、ジョージにとって『今』、興味があるのは試合ではない。むしろ、居なくなってしまったディアーダの行方と、先の試合で傷を負ったイリューンの様子の方が気になった。
観客席を外し、廊下へと出た。流石に試合中と言うこともあり、人通りは殆どなく、静かな様子だった。
人混みを避けて会場入りした事もあり、対戦表を見ていない事を思い出す。次のイリューンの相手は何者になるのか。どれだけの数の人間が大会に参加しているのか。
ジョージは出ていってしまったディアーダの行方を追いつつ、対戦表の確認の為、入り口の総合受付へと向かうことにした。
石造りの廊下をまっすぐ進んでいく。アリーナ側からは激しい試合が繰り広げられているのか、時折、地響きのような観客の歓声が挙がった。
やがてジョージは受付窓口へと辿り着いた。既に対戦表を配る仕事は粗方片が付いたのか、がらんとしたスペースがそこに空いていた。
散らかされ、置きっぱなしになっている紙切れをそっと手に取って見る。
対戦表に書かれた人数は五十人余り。AB両ブロックで、それぞれ勝ち抜き戦が行われる様子。あぶれた人間は必然的にシード選手になるようだった。
現在の所、イリューンが順当に勝ち上れば、五戦全勝で優勝となるらしい。軽く見積もっても厳しい状況にみえる。
「最低あと四回、ってことか。…辛いな。……ん? …ッんんん!?」
ジョージは目を疑った。そこに、ある筈のない人物の名前を発見したからだった。
目を擦る。目を凝らす。紙を近づける。遠ざける。そして、
「――げ、げぇぇぇぇぇっっ!?」
素っ頓狂な声を挙げてジョージはかっと目を見開いた。
イリューンと同じAブロックの端。そこに小さく――よく見知った名前が書かれていた。
『アレス・フラット』
コーラス最強の剣士と名高い正騎士万人長――黄金の鷲、アレス・フラット。言うまでもない。ジョージの実父であった。
「な、なななななななななななななな」
あわあわと今にも腰を抜かしそうなジョージだったが、冷静になって考えればおかしな事は何もない。一国を支配できるとまで噂されるような魔剣に、大国であるコーラスが興味を示さないはずがない。そうとなれば、合法的に魔剣を入手できるこの大会に、最強の剣士を送り込んできたとて、何の不思議もなかった。
ジョージの肩から力がすぅ〜っ、と抜けていった。
――終わった。
ジョージの目論見は全て打破された。
イリューンが勝ち抜いたとて、あの父に勝てるとは到底思えない。魔剣の情報を手みやげにといっても、既にそれは皆の知るところ――何の役にも立ちはしない。
もはや、故郷に帰る手段は潰えたのだ。
ガックリと肩を落とし、トボトボと廊下を歩く。観客席へ戻るしかなかった。
試合を見たい訳ではなかった。しかし、今はもうそれぐらいしかする事がなかった。
と、その時だった。悪い時には、悪いことが重なるものである。
「…ま、まさか…ッ!? まさか、そこにいるのは、ジョ、ジョージ様ではッ!?」
聞き覚えのある胴間声。顔を上げる気力もないジョージだったが、声につられて目線を宙に漂わせる。と――視界の端に、またも居ないはずの人の姿を確認し、ジョージは絶句した。
(――う、げ、げぇッ!?)
息を呑み、辛うじて声を押し殺した。そこにいたのは、死んだはずの――
「やはり! ジョージ様ッ! 私です! ゲオルグですッ!」
不精髭、片目に眼帯。屈強さを物語る広い肩幅。鎧に隠されているが、二の腕や首筋に残る数々の傷跡。間違う事なくコーラス白獅子騎士団一の剣士、隻眼のゲオルグその人だった。
ジョージの脳裏に苦い敗戦の記憶が蘇った。同時に、複雑な感情が湧き起こった。
生きていて良かった。見つかってしまった。何故生きている。いや、生きていただけでも神に感謝すべきだ。だけど、もう、敵前逃亡の罪は免れない――
(…は、はは…! な、なんてこった…! …まさか…ゲオルグが生きて…こんなとこで出会うなんて…! …本当に終わりか…ここまで逃げてきたけれど、もうこれで…あとは…もう…短い人生だった、か…く、く…っ…ううぅっ…)
涙が出てきた。嬉しいのか、悔しいのか。悲しいのか、辛いのか。それとも、諦めの境地なのか。様々な感情が浮かんでは消え、ついには年貢の納め時か、とジョージは覚悟を決めるしかなかった。
が、そんなジョージの気持ちなど露知らず。ゲオルグは感極まり、立ち尽くすジョージに篤い抱擁を交わし、
「…ご、ご無事で何より…っ! そ、それより、今までどうされていたんですか…っ!?」
そう言って顔をくしゃくしゃにして喜んでみせた。すわ縛り首か、と思っていたのだが、どうも様子がおかしい。
「……げ、ゲオルグ……お、俺は……! その…っ、……っ!」
勇気を出し、切り出そうとする。が、ゲオルグは相変わらずジョージの言葉も聞かず、
「…と、とにかく無事で良かった。お父上もご心配なさっておられます! 行方不明になられたその節は、盗賊団に拉致されたものかとばかり…!」
そう言って、嬉しそうに肩を叩くばかりだ。
経緯を聞くうち、徐々に事の全容が見えてきた。ゲオルグの話を統括すれば、それは以下の通りらしかった。
――ヴェルダイン出兵の後、総崩れになったジョージ以下新兵達を救うべく、コーラスより精鋭部隊が派遣されたが、現場に部隊が到着した時には既に全兵が撤退済みだった。ジョージ、ゲオルグの二人が見事に殿を務めた為、危うく全滅を免れたのである。
跡地では矢を受け、失血死寸前だったゲオルグを発見。どうにか彼は九死に一生を得た。
が、ジョージの姿だけはどこにも見あたらず――盗賊団に拉致されたか、あるいは既に名誉の戦死を遂げたかではないか、と生き残ったゲオルグによって報告された。
正騎士万人長――アレス・フラットは『栄誉在る騎士としての生き様であった』と涙を堪えつつ語り、コーラス王は生死不明ながらも、勇敢なるジョージに名誉騎士の称号を与え、国家国民一同、その帰りを今も待ち望んでいる――と。
「…マジで?」
「マジです。」
口をぽかんと開け、ジョージは完全に思考停止状態。ゲオルグは不思議そうな顔。
何から口にしていいのか判らない。何を口にしたらいいかも判らない。縺れた糸の如く、頭の中の考えがどうしても上手く纏まらない。
(ちょっと待て…つまり、それは…? 何が言いたいのかというと、要するに…?)
ゲオルグは言った。
「お父上も喜ばれます。是非、『コーラスにご帰還下さい』ジョージ様。」
――つまりは、そういう事だった。
「――ま、ま、ま…マジかぁぁぁぁッッッ!?」
ジョージは飛び上がった。そしてそのまま、その勢いのままゲオルグに抱き付いた。
「――最高、最ッ高だ、ゲオルグッ! 愛してるゥッ!」
「…お、おやめ下さいジョージ様っ!? わ、私にはそのような趣味はッ!?」
何やら勘違いをするゲオルグを余所に、ジョージは嬉し涙を流し歓喜した。
全ては報われた。苦しい旅は終わりを告げようとしていた。イリューン、ディアーダとの珍道中も、遂に終演の時が来たという事だった。
しばしの後、ようやくジョージは落ち着きを取り戻した。離れ際、改めてゲオルグの手を強く握り締めると、もう一度神と彼に深い感謝をするのだった。
「…コホン。…では、お父上のおらせられる控え室に参りましょうか。」
やがて、軽く咳払いをし、ゲオルグは歩き出した。その後ろをついて歩くジョージの足取りは軽かった。心の奥底でイリューンに対し頭を下げつつも、ジョージは胸が高鳴るのを止める事ができなかった。
一方――
順当に試合は続いていた。シードを含め一回戦の全てが終了。やがて、ざわめく会場内に拡声放送が鳴り響く。第二回戦開始の合図だった。
『…これより、Aブロック二回戦第一試合を開始します。二回戦第一試合――イリューン・アレクセイ、バーサス、クリオ・イ・シーダ!』
既にアリーナには、イリューンがスタンバイしていた。興奮冷めやらぬ様子。一回戦第一試合で失ったハルバードの代わりに、バスタードソードを肩口に担ぎ、反対サイドからやってくる対戦相手に強烈な眼光を叩き付けている。
ふらり、と黒い影がアリーナに現れた。と、黒い影はまるで鴉の如く跳躍した。
中央に降り立った黒ずくめの男。全身、靴も、服も、マントも…被ったフードさえ黒だった。まさに影の中から現れたのか、と思わしき姿だった。
両手にはカタール。中東地方で使われる、拳の延長線上に刃のついた武器。その異様な姿から、男が暗殺者だということは否応なしに想像がついた。
「おぃおぃおぃ…なんだ、オメェーはよぉ。…影坊主か、てめぇ?」
早速、因縁を付けるイリューンだが、男は耳を貸そうともしない。いや、聞こえていないのだろうか。目は虚ろ、口元はブツブツと何かを呟き続けている。
「…キヒヒヒ…イイんだよ…影坊主でナ。キヒヒヒ…! 影がどれだけ恐ろしいか、己の身で思い知るがイイさ。…キヒヒヒヒ…ッ!」
最後の一台詞。耳を澄まし、ようやくそれだけ聞き取れた。耳障りな笑い声が、イリューンの苛立ちを倍増させた。
「…面白れぇ…ッ! 見せてもらおうじゃぁねぇかッ!」
やがて、試合開始を告げる拡声放送がアリーナ全体に響き渡った。
『――始めえぃっ!』
掛け声と同時に、シーダが飛び出した。先制攻撃を狙ってのことか。そうはさせじとイリューンもまた併せて踏み込んだ。
勢いに任せて大剣を振り下ろす。銀色の弧がシーダを捕らえたかに見えた。
ガツン、と地面が抉れた。瞬き一瞬、いつの間にかシーダの姿は消えていた。どこか、と左、右と見渡すイリューンだが、その姿はどこにも見あたらない。
「…ば…ッ!? 消え…ッ!?」
イリューンははっとした。既視感があった。背筋を冷たい物が流れる。ゾクリとした殺気を感じ、イリューンは咄嗟に前方へ跳んだ。
一陣の風を後頭部に感じた。髪を切られた。ぐるりと前転し、振り返るや見えない敵に向かって切っ先を突きつけた。いつの間にか、シーダがそこに立っていた。
「…て、めぇ…ッ!」
「…ほぅ…我が初太刀に気付くとは意外。鋭いネ、あんた。キヒヒヒ…!」
「どこかで見たことがある…クラメシア流の暗殺剣技…! まさか、てめぇ…ッ!?」
「キヒヒヒ…知りたければ、倒してみるがイイ…! できるものならなァッ!」
シーダが影の中から飛び出した。右のカタールを振り下ろす。左のカタールを凪ぎ払う。飛び退るイリューンに蛇の如く、シーダの右足が襲い掛かった。
ジャキン、と蹴り足の爪先に刃が現れた。確実に首元を狙っていた。
鉄のぶつかる音――大剣の腹で受け止めた。蹴足を弾き返しつつ、イリューンは大剣を真一文字に振り払った。ぶおん、と大きく風が舞う。体勢を崩しつつも、シーダは残された左足で宙に飛ぶ。
一回転。イリューンの大剣がギリギリでその頭を掠めた。シーダのフードが吹き飛ばされた。長く揺らめく、海藻のような黒髪が露わになった。
宙を舞いつつ、シーダが懐をまさぐる。ナイフが三本、空中に閃いた。
肉に突き刺さる感覚。食い込む音。
鮮血が二人の間に飛び散った。ニヤリとした笑みを浮かべるシーダだったが、次の瞬間、その表情は驚きに変わった。
イリューンは二の腕の筋肉で、三本のナイフを受け止めていた。盾代わりというにはあまりにも乱暴な防御。が、この接近戦では有効だった。超至近距離で大剣を頭上に振り上げ、両手で柄を握り締めると渾身の力を込めて振り下ろす!
咄嗟にシーダはカタールを十文字に構え、大剣を受け止めんとする。が、その勢いは止まらない。カタールの刃を打ち砕き、シーダの体を両断せんと銀色の光が打ち下ろされた。
激突。そして、ガラスと金属とがぶち当たったような――そんな音が鳴り響く。
シーダは寸でで後ろに飛び退いていた。手にしたカタールは砕け散っていた。額からは血が滴っていた。
『ウォォォォォォォッッッ!!』
あまりの破壊劇に歓声が挙がった。
「勝負有りだぜ、オタク野郎。どういうこった? なんでクラメシアが参加してやがる?」
切っ先を向けつつ恫喝するイリューン。しかし、シーダは怯みもしない。
「ケヒッケヒッ…キヒヒヒヒヒ! そうでなくては! そうでなくてはな! 面白いぞ、貴様! キヒヒヒヒヒ!」
狂ったように笑うシーダに当初の暗い面影はない。既にその姿は異様な雰囲気さえ醸し出していた。
「何が可笑しい…!」
苛立つイリューンに対し、シーダはまたも嘲り笑うと、突然袖口から小さなボール状の何かを取り出し、イリューンの足下目掛けて投げ付けた。
途端、ぼん、と破裂音がし、辺りは朦々とした黒煙に包まれる。
「…煙幕か…ッ!」
吐き捨てるように言うイリューン目掛け、闇の中から光り輝く何かが襲ってきた。
咄嗟に大剣で防ごうとする。が、手応え無し! しかし、見えない何かは容赦なくイリューンの肉を抉り取る。
二の腕、腿、腰、足! 一瞬にして全身に傷が現れた。
「ぐ、がうっ、ぐあぁぁぁぁぁぁっっッッ!!!」
光が一瞬、黒煙の中に閃く度。イリューンの体からは霧のように血が噴き出した。傷は決して浅くない。まるでスプーンか何かで刳り抜いたかのように綺麗な痕跡だった。
攻撃は止まらない。何かがイリューンの周囲を高速で飛んでいるのは解る。体に当たった時の感触からして、重い何かだ。
「キヒヒヒ…! さぁ、次こそはその銀髪の乗った頭を抉り取ってやる! 覚悟するがイイ! ケヒヒヒヒヒヒッ!」
耳障りな声。同時に、風を切る音がイリューンの耳元を通過した。
(――!? 耳元…!? まさか!?)
咄嗟にイリューンは大剣を眼前に構えた。刹那、強烈な衝撃が手元に響き渡った。またもヒュン、ヒュン、と風を切る音が聞こえてきた。
――またも、一撃!
「ぐぁっ…! ごほ…っ!」
背中だ。鎧に防がれたものの、既にイリューンのダメージは計り知れない。
殺気が来る方向は前。しかし、攻撃は後ろ。そうかと思えば殺気は背後に。攻撃は前から。後ろと思えば前。前と思えば後ろ。移動する殺気と攻撃の方向はことごとくズレている。
しかし、風の流れはイリューンにその答えを教えていた。
耳元を通過する音。その回転音。不自然な風切音。
イリューンは理解した。この攻撃の正体を。シーダの使う武器の正体を――
「…解ったぜ…! てめぇは…そこだぁッ!」
突如、イリューンは自分の手に填めていた手甲を取り外し、闇に向かって投げ付けた。
同時に、手にした大剣をその反対――強烈な殺気目掛けて突き出した。
何かが絡み付いたような激しい金属音――!
そして、確かな手応え。
肉を貫く生々しい感触がイリューンの両手に伝わる。生暖かい液体がイリューンの体を濡らしていく。――徐々に闇は晴れていった。
煙幕が完全に消え去った時、シーダの体はすぐ目の前にあった。イリューンの大剣は見事にその胸元を貫いていた。気がつけば、イリューンの半身は返り血で赤く染まっていた。
投げ付けた手甲は黒い鋼線の束に絡まり、アリーナの片隅に転がっていた。
「思った通りだぜ…『錘』か。黒色の細い鋼線で分銅を繋ぎ、煙幕に紛れて振り回していた、って訳だな。どおりで音と殺気、威力の方向が全く一致しない筈だぜ…!」
がはっ、と改めて吐血するシーダ。既に致命傷、手加減できる余裕は無かった。
大剣を腹に突き刺したまま、イリューンはゆっくりとシーダに訊ねる。
「…何か言い残すことはあるか?」
シーダは何も言おうとしない。ニヤリと血にまみれた口元を歪め、苦しげに笑うばかり。
が、ただ一言。
「…れ、レ、ミーナ、様に…栄光…あ…レ…!」
その言葉を最後に、もう一度激しく吐血をすると、そのままがくりと息絶えた。
何とも言えない後味の悪さだけが残った。完全に動かなくなったシーダの身体から大剣を引き抜き、イリューンはゆっくりと勝ち名乗りを挙げる。
あまりの惨劇にしばらく辺りは静寂に包まれていた。時間が止まったかのようだった。
しかし、やがて思い出したように、
『――しょ、勝負有りッ! Aブロック二回戦第一試合、勝者ッ! イリューン・アレクセイッ!』
勝利を告げる放送と共に、時間は再び動き出した。大歓声が辺りを包み込んだ。
結果的に相手が絶命したとて、勝者にペナルティは課されない。この大会が遊びではない事の証明だった。
血にまみれた顔を拭い、イリューンは辺りを見回す。激しい視線を感じたからだった。
(――? …レミーナ、か…ソイツが黒幕にしても…なんでまたクラメシアの暗殺集団が魔剣を…? 表舞台には絶対出ないとまで噂された奴等が…何故…?)
当然の如く、相手が誰かも解らず――イリューンは何度もシーダの亡骸と、観客席とを見返しながら、ゆっくりとアリーナを後にするしかなかった。
ほぼ同時刻――三階。いつの間にか、ディアーダが上から試合の様子を伺っていた。
その目に激しい怒りの炎を燃やしている。いつも冷静なディアーダが、いつになく感情を露わにし、憤っていた。集音の理力を唱えたのか、耳元に光が輝いている。先の会話を聴いていたようだった。
「…レミーナ…だと…! クラメシアの暗殺集団が、姉さんの名を…! なら、ユリシーズ査察官の言っていた仮面は…違うというのですか…ッ!?」
それだけを呟き、ディアーダはギリリ、と歯軋りを一つ。拳を痛いほどに握り締める。そして、アリーナに勢いよく背を向けると、またも客席の奥へと姿を消した。
三人の目的は、図らずとも一つの場所で重なろうとしていた。
――まるで運命に導かれるように。何者かの強い意志が働いているかのようだった。