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第3話 豪邸を作ろう①

「さて、まずはこの日本円……『神の通貨』で出来ることを把握しないとな」


 オレは手持ちの13746円と、目の前の村を確認する。

 うん。まずは出来た村を確認しよう。


 家はそれぞれ遠すぎず近すぎずといった感覚で建っており、ちょうど円になるような形で密集していた。

 村を歩く際、地面の土などは整備されており、中央には井戸が設置され、家以外にも必要最低限の設備が整っていた。

 一応、井戸の水を取り付けてあった桶で汲んでみたが問題なく綺麗な水が取れ、飲んでみたところ喉の渇きが癒された。

 うーん。一円だけでこんな大盤振る舞いの創造をして本当にいいのだろうか?


 とりあえずオレは近くの木造りの家の扉をノックし、中に入ってみる。


「おじゃましまーす」


 当然、人の声も反応もない。

 中に入ると、まず玄関と厨房がひとつになった場所が広がっていた。

 そこを上がると寝床と思われる部屋があり、中央には椅子と机があった。

 奥にも部屋が二つほどあり、片方は小部屋。もう片方は風呂場であった。

 それほど広い作りではないようだが、家族三人くらいなら暮らしていけそうな構造だ。

 イメージとしては江戸時代の民家が近いだろうか。

 家具やかまどなど最低限のものもしっかりついていた。


 石造りの家に関しても似たような作りであり、多少の部屋の大きさの違いなどはあっても、どれも似たような構造と広さであった。

 次にオレは二階建ての少し大きめの家に入る。

 そこは入口からして、しっかりとした作りであり中も先ほどの簡素な家とはまるで違った。


「うわ、ちゃんと玄関があって、廊下もある。それに部屋も一階だけで三つもある?」


 そこはまさに新築の家と言っても過言ではない作りであった。

 部屋を確認すると、ベッドや家具がしっかりと揃っていた。

 台所も今までは玄関あたりと一緒になっていたが、この家ではちゃんと台所は別の部屋に用意されており、浴槽も他の家より広めであった。

 また二階には部屋が二つあり、その部屋も一階同様しっかりとしたつくりであった。

 

 二階建ての家は村に五つほどあり、確認したところどれも同じような作りであった。

 なるほど。ここは村の中でも特に力の強い人が住む家という感じかな。村長とか?

 しかし、この二階建ての家だけでも一円の価値あるんじゃ? と色々と感覚がおかしくなってくる。


「けど、こうなってくると10円や100円で街を作ると一体どうなるんだ?」


 試したくなる衝動が湧き上がるが、その前にしなければいけないことがあるとオレは手に握るお金を財布にしまいながら、村から少し離れていく。


◇  ◇  ◇


「さてと、それじゃあ試してみるか」


 場所は先ほどの村から少し離れた拓けた平野。

 相変わらず周りには草原しか広がっていない。

 陽の光と草原を駆け回る風を感じながら、オレは一円玉を握り締めし、あるイメージを抱く。


 それは一つの家。


 先ほどオレは一円玉を投げる際、神様の言った『村』をイメージして、その結果あの村が出来た。

 実際、神の通貨の説明にも一円玉で創れる具体例には『村』とあった。

 だが、もしこの一円玉を『家一つ』を作るためだけに使ったとしたら、どうなるであろうか?

 具体的な答えは説明にも無かった。

 だからこそ、今ここで試しておきたい。

 そう思いながらオレは『家一つ』を頭にイメージしながら一円玉を投げる。

 瞬間、一円玉が空中で光輝き地面に飲み込まれると同時に、その場所を中心に瞬く間に白く巨大な家が立ち上がっていく。


「なッ!?」


 豪邸。まさにそう言っていい、とんでもない家が一瞬にして目の前に生まれた。


 広さはおよそ五百メートル。

 真っ白な巨大な豪邸はまさにハリウッドのスターが住んでいそうな大豪邸。

 敷地内には庭は勿論、噴水、ガーデニング、倉庫、更にはプールまで完備されていた。


 驚きのまま館の中に入るオレであったが、中に入った際の驚きはそれ以上であった。


「……マジかよ」


 目の前に広がるのは映画などでしか見たことのないような広大な館の玄関。

 天井にはシャンデリアがぶら下がり、そこから明るい光が玄関を灯している。

 奥のリビングに入ると、そこはまるで豪華ホテルのスィート並。

 テーブルや家具など必要なものは一式揃えてあった。

 その後、館内の部屋の数を調べると合計二十部屋以上あり、その全てが豪華絢爛な部屋であった。

 さらに、お風呂やトイレなども当然のように設備されていた。


 なるほどなぁ。

 一円玉で村を作るのではなく、一つの家に使った場合、その分、家の性能が大幅に上がって、このような形になるのか。

 だとすると、普通に暮らす分にはもうこの豪邸一つあれば十分なんじゃ?


 オレは一度外に出てもう一度、館を見ると扉の端に奇妙な文字が浮かんでいるのに気づく。

 これは神の通貨の際に見た説明文と同じものだ。

 それに気づくと、すぐさまそれをタッチする。


【豪邸】

 1円を使うことにより生み出した一軒家。

 一つの村相当の価値を持つ豪邸であり、一部の家具には魔力が宿る。


 な、なるほど。水やお風呂が使えたのはこういうことだったのか。

 まさか一円でここまでのものが創れるとは思ってもおらず、オレは知らずこの異世界での日本円、『神の通貨』の使い方に胸を躍らせつつあった。

 こうなると、次は一体何を作ってみようか……。



残り通貨:13745円

【創造物】

豪邸×1

村×1

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