喋れるようになりました
私はアンナの姉カレンに運ばれて最初に目覚めた洞窟に向かっていた。このまま洞窟に戻されれば次に人が来るのはいつになるかわからない。その間1人で孤独に耐えることなど最近まで学生だったわたしには無理だ。話し相手がいないなんてきっと発狂してしまう。
(このままあの洞窟に戻されるなんでいやだよぉ〜。アンナちゃんと旅するって決めたんだよぉ〜)
「お、おねぇちゃん。なんだか聖剣さんが不満そうなの。なんでかわからないけど気持ちが分かる気がするの」
アンナちゃんナイスだ。どうやら触れていなくてもある程度の意思疎通は可能なようだ。あまり運命とか信じていなかった私だがこの子にはやはり運命感じてしまう。
しかし直接わたしを持っているカレンには伝わらない。
「あぁアンナごめんなさいねわたしが不甲斐ないばかりに。怖い目にあって気が動転してるのね、さっさと聖剣を戻して家でゆっくり休みましょう?」
このままでは本当に洞窟に戻されてしまう。あの洞窟は古代の遺跡らしいのだが遺跡に興味がない私にとってはただの洞窟でしかない。
カレンから魔力を吸い上げ止める事も考えたがそれではその場しのぎにしかならず根本的な解決にはならないため選択肢から消した。
しばらく考えとある作戦を思いついた。
あとは実行に移すのみだ。
まずはアンナと意思疎通を図る
作戦と役割を伝えると少しおどおどしながらも首を縦に振ってくれた。
作戦はこうだ。
アンナちゃんが私に触れる
私がアンナちゃんの体を借りて発言
それだけだと信じてくれなそうなので少し魔法を使用
カレンちゃん驚き、私を手放す
アンナちゃんそれを持って洞窟と反対側に逃走
そのあとは気合でなんとかする
最後は問題だがとりあえずこの状況を打破しなければならないのでやるしかない。
「アンナちゃん!!作戦開始だ!!!」
「えっ... 今..せ、聖剣が喋った....」
どうやら私は普通に話せたらしい。
目を覚めした時はたしかに話すことはできなかったはずだ。そのため話すことを諦め念話のような方法を取っていたのだが私に何か変化があったようだ。たぶん、いや確実にアンナちゃんと繋がった時だろう。
なんにせよこれでカレンとの会話も可能となった。
「驚かせてごめんね!私ハルカっていうの。きっとあなたたちの役に立つからお願い!あの洞窟にもどすのはやめて!!」
「あ...あ、...」
カレンは驚きで言葉が出ないようだ。それもそうだろう剣が喋ってるのだから。私が逆の立場だったら驚きと恐怖で剣を投げ捨てていただろう。
「は、はじめましてハルカ様。わ、私はあなた様の守護を務めさせていただいているヴァニア族のヴァニアス・カレン・トゥーアと申します。あなた様のお目覚め嬉しく思います。あ、アンナ、あなたもほら早く、、」
「ぁ、ヴァニアス・アンナ・トゥーアと言います...」
そういうとカレンは私下から支えるように両手の平の上に乗せ跪き、私を頭より高く上げた。
どうやら彼女たちは私が目覚めた洞窟もとい遺跡を守っている一族らしい。私について私より詳しそうだ。だから突然喋り出したことに驚いたもののすぐに自己紹介をしてくれたんだろうか。本当は喋るってことが伝わっていたのかもしれない。
「さ、先程までの無礼お許しください。すでに魂が宿っているとは知なかったのです。許されないことをしたのは分かっています。私はどうなってもいいので妹にだけは慈悲をください!」
「え、いや、そんな気にしないでください!別にそんなことしませんから!」
そんな態度を取られたらこちらまで頭を下げてしまう。それにしても彼女たちの中で聖剣はどういう存在なんだろ。そんなに恐れられているものなのだろうか。
実はハルカは聖剣について少し予想していた。盗賊撃退の際に魔法をつかったがその時たしかに魔法の使い方が記憶の片隅に残っていたのだ。おそらくこの体は以前別人の魂が宿っていたのではないかと、そしてその記憶の破片がこの剣に残っていたため初めてでも魔法が使えたのではないかという推論だ。
その推論はカレンの言葉を聞いてより真実味が増してきた。
「そんなことより私について知ってることがあれば教えてくれない?」
「寛大な御心に感謝いたします。それではまず私たちの集落に来ていただけますか?おそらくあなた様の言い伝えをよく知っているのは族長だと思いますので族長の元に案内いたします。」
私は了承し、彼女たちの村に行くことになった。その間私はカレンに両手で支えられたままだった。




