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クロス・ワールド  作者: 永津 剛士
序章
12/17

四人の巫女と四人の守り手



「お待たせしましたわ!青龍領の巫女、スワイリーゼ・Ad・セルレインですわ!」


大声で自己紹介をするその巫女に四人は呆気に取られて誰も言葉を発しない。それに不満を持ったのかツカツカと歩いて行き、貴賓席の席の位置まで行くと


「私が!青龍領の!巫女!スワイリーゼ・Ad・セルレイン!ですわ!」


と、先程より大きな声で自己紹介をした。


「聞こえてるわ!うっせぇよ!耳元で大声出しやがって!自己紹介は一度で良いんだよ!アホかてめぇは!」


ハルクは立ち上がりその巫女に対して怒鳴る。


「うぐっ、そんなに怒ることないじゃない!私だって分かってますわ!何も言って下さらないのが悪いんです!グラス!この者を懲らしめて下さいませ!」


「いやいや、てめぇの自己紹介に答える義理なんてねぇから!そもそも、開けてくるなりいきなり自己紹介とか常識無さすぎだからな!」


「まあまあ、ハルクも子供相手に大人気ないわよ。少し落ち着きなさいな。」


シンクが間に入り言い合いを辞めさせる。セルレインはまだ睨んでいるがハルクはもういいと言って座り直す。


「あのー、そろそろ入っても大丈夫ですかね?巫女様も落ち着きましたか?」


と、扉の影から隠れて中の様子を見ていた女性が恐る恐ると言った様子で言ってくる。


「グラス!守り手なんですからもっとシャキッとしなさい!そして青龍領の者なら胸を張りなさい!」


「巫女様、私人前はダメだと言ってるじゃないですか!この服恥ずかしいんですよぉ!」


グラスと呼ばれた巫女の守り手が青龍領の巫女に抱き着く。完全に守る者と守られる者が逆なのだ。その場に居た四人はなんとも言えない状況に困惑する他なかった。


「改めて自己紹介を。私は青龍領の巫女、スワイリーゼ・Ad・セルレイン。こちらは私の守り手、ミングレー・Ad・グラスフィリア。どうぞお見知り置きを。」


場が落ち着くまで暫く待ち、青龍領の巫女であるセルレインは改めて名乗った。セルレインは青を基調とした色の巫女服を着ており、金髪のお嬢様という印象を受ける。が、問題はグラスフィリアだ。ぴったりと肌に張り付く様な服に身を包み、胸と脚と腰周りにのみ防具をつけ、腰に短刀を装備し、龍の顔を象ったお面をしていた。髪の色は藍色で長めの髪をポニーテールにしている。その出で立ちに不気味さを感じた四人だった。


三人がそれぞれ自己紹介をして最後に朱雀領の巫女が自己紹介を終える。


「朱雀領の巫女です。宜しくお願い致します。」


「ふざけてますの?名前を言わないとは失礼だと思わないのですか!」


その自己紹介に不満を持つのはセルレインだ。名前は親から授けられる最初の贈り物。それを名乗らないとは相手に対して以上に親への失礼に他ならないと考えられている。


「すみません。私には記憶が無いもので名前も覚えていないのです。」


その返答にセルレインは何も言えなくなり、グラスフィリアは失礼しましたと、一礼する。


そして、ハルクは無表情なまま爪がめり込むほどの力で握っていた。


シルクはハルクに昔、話を聞いた事があり事情を知っている。それはシルフィードにも伝えてあったのでシルフィードは疑問はあったが聞こうとはしなかった。


そんな空気の中トントンと扉を叩く音が響く。ガチャ、と開けられた先でその人物セイルは部屋を見渡し


「間が悪かったですかね?」


なんて悪戯に笑ってみせた。


それに笑い返すのはハルクとシルクである。久し振りね!とシルクが言い抱き着きに走り、遅ぇじゃねぇか!とハルクが言うと笑みを漏らした。その後ろを昨日の服で入ってくる白虎の巫女。



「私達が最後でしたか。やはり、昨日のうちに買い物を済ませておくべきでしたね。」


「そうじゃな。所で妾の席はどこかの?歩き通しで疲れてしもうた。」


「ハルク、席はどこかな?」


ハルクに席を尋ね、適当に座っとけと言われた白虎領の巫女は迷う事なく王が座るであろう貴賓席まで行くとそこに躊躇せずに座った。なっ!と数名の人間が声を上げたが気にするそぶりもない。


「ユークリフト様、ここは白虎領では無いのです。ここは王都のルールに従いませんと。」


「なんと、ここは妾の席では無いのか。」


「左様でございます。ここの主人である王の席だと推測します。」


「ふむ、では仕方がない。妾はその隣に座るとしよう。」


ユークリフトは左側上座の席に座っている玄武領の巫女の隣に座った。

ハルクはなんだこいつと思いながらも今回は巫女が呼ばれたのだから席は上座は巫女達が、下座は自分たち守り手が座る方が良いかと考えて、守り手四人へと話をした。その話をした後、セイルに巫女の紹介をするよう言った。


「セイル、お前の巫女だけ自己紹介してねぇんだ。お前からで良いからとにかく自己紹介してくれ。」


「そうよ!入ってきていきなりの事すぎて自己紹介すら出来てないじゃない!」


「そうですね。・・・では改めまして、私の名前はグランスタッド・Wt・セイルです。そしてこちらが白虎領の巫女、エンブラント・Wt・ユークリフト様です。」


「なぜ今名前を呼んだのだ?」


「皆様にユークリフト様のお名前を覚えて頂くためでございます。」


「そうか。では許そう。」


「ありがとうございます。」


「よし、それじゃあ私から自己紹介するわね!私の・・・」


「よい、皆の顔と名は知っておる。が、お主だけは知らぬな。名を名乗れ」


シンクの自己紹介を遮りユークリフトは全員の顔を見るように左から右へと視線をずらしていき、ある人物に視線が固定される。


「わわ、私ですか!?わ、わた、私、は、青龍、領

の、ミミ、ミン、グレー・Ad・グラス、フィリアと、言い、ます。」


いきなり指名され、しかも全員の視線に晒されたグラスフィリアは一気に緊張し、言葉も途切れ途切れになり、尻すぼみしてしまう。


ほう。とユークリフトが含み笑いを浮かべた後、どこから出したのか手帳の様なものを取り出し、面白いものが見れたと書きながら呟く。


しかしそこに青龍領の巫女が手帳の様な物を右手で掴み床に叩きつけ、机を左手でバン!と叩く。その目は先ほどハルクにしたのよりも純粋な怒りを孕んでいた。


「私の守り手であるグラスの事を笑わないで!」


「笑う事が悪いのか?妾が笑わずして誰が笑う?この様な面白き事を笑わずしてどうするのじゃ?」


クフフと笑う白虎領の巫女へ青龍領の巫女は限界を超える。右手を上げ振り下ろす。


「ダメです、セルレイン様。今それをしてしまえば白虎領を敵に回すことになってしまいます。それだけは回避しなければなりません。私の事でお怒りなのは重々承知していますが今はどうか抑えてください。」


後数センチでユークリフトの頬に当たるという所で後ろからグラスフィリアが抑える。その速さに誰もグラスフィリアを目で捉える事が出来なかった。


「・・・・・・わかったわ。」


そして青龍領の巫女は力を抜くと白虎領の巫女の反対側、朱雀領の巫女の隣に腰掛けた。


今のやりとりを見ていた他の者達も居心地が悪くなり白虎領の巫女ユークリフトの隣に玄武領の巫女シルフィードが座りその隣にセイルそしてシンクが。反対側には朱雀領の巫女、青龍領の巫女セルレイン、ハルク、グラスフィリアの順で座った。



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