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未来を夢見た覇道人生  作者: Jade
第1章
6/17

初戦後

2017/5/5 会話が不自然だったので修正しました

ヤンケが村人たちの集団を割って入り、


「こんの愚かもんどもがあああ!」


怒鳴った。


「遠方から来たはるばる来よっただけでなく、

この村を救わんために剣を取ってくれちょった客人になんば言いよるか!

おぬしらの目はどこぞに落としよったか!

ランザスさんもおおっごっちゃ怪我しとっと!

んな相手に戦った人相手をなんば言いよる!」


(おおこええ、家の中であんだけ震えてた人とは思えないな。これが出来るから村長やってたんだろうな)


ヤンケが一通り怒鳴り、ぜぇぜぇと息を切らしていたところ、正吾に肩を借りていたランザスは言う。


「彼がいなくても負けてはいなかっただろうが、あなたたちの中から死者が出ていたでしょう。

そのくらい、奴らは手強かった。私たちの力不足だ、申し訳ない」


実際に戦った、よく知る人物が頭を下げる。

ヤンケの怒声に冷や水をかけられ、ランザスが謝罪する。

この状況で彼らが責めるのは流石に恥ずかしいと思ったのか、村人たちは顔を伏せだす。


「まぁ確かに、状況から考えると私が怪しいのは当然でしょうけどね」


そこで正吾は分かっていながらも煽りを入れる。


「ただ、彼らはまた襲ってくるでしょう。主要な戦力の衛兵さんたちが一人を除いて戦闘不能である今、襲わない手は無いでしょうからね。それをやってくるのが当然と思うぐらいには彼らは統率が取れていた」


(尤も、統率の取れた盗賊たちがこの村を襲う理由がまだ掴めていないが・・・本当にわからないな、情報が不足している・・・)


そう言われた村人たちは、


「なんでこの村が・・・」

「なんで俺たちが・・・」

「ランザスさんたちが戦えないって・・・」

「子供たちはどうなるんだ・・・」


と項垂れる。


(おっとやりすぎたか、失敗失敗。項垂れる未来は見えていても聞こえるわけじゃないからな。まぁそれはいいとしよう、情報収集だ)


そう考えた正吾は、ランザスに耳打ちする。


「ランザスさん、少し相談したいことがあります。詰め所で話しましょう」


ランザスは少し訝しむが、


「ああ・・・分かった」


村人たちを置いて、二人は詰め所に行こうとしたところ、


「おい!ショウゴさん!」


フィルが正吾を呼び止める


「何か手はないのか!?」

「素人の私に聞くことではないですね」


と正吾は苦笑するが


「無くはないですよ。それについてランザスさんと話し合おうと思っていたところです」

「一緒に聞かせてくれ!」

「なぜですか?先ほどの皆さんの言葉ではありませんが、子供が出ていい幕でもありませんよ。私のような素人が出る幕でも本来はありませんが」

「いつか騎士団に入りたいからだ!今回のことは聞くだけでも勉強になるはず!」

「それが足手まといになるとしても?その結果村が潰されることになっても?」


正吾が詰るようにフィルに問うとフィルは負けることなく答える。


「俺の弓の腕をさっきみただろ!俺はランザスさんたちの手伝いをすることができるはずだ!弓を使える俺が何か作戦の手助けにもなるはずだ!」


正吾は聞きたいことが聞けない可能性が出てきて内心舌打ちをするが、そんな様子は顔には出さず


「ふむ、いいでしょう。ランザスさんよろしいですか?」

「ああ、わかった。フィル君、頼む。おーい!キース、来てくれ」


ヤンケと話していたキースはランザスに呼ばれ、四人は詰め所に入っていった。


*******


詰め所ではベッドの上に村医者らしき初老の男に衛兵二人が横たえられ、手当てされていた。


「センメルさん、すまない」


センメルと呼ばれた男はベッドで横たえられている衛兵を手当てをしつつ答える。


「いやいやこれが私の仕事ですよ。これほどの大怪我はここ数年診たことはありませんでしたがね。治癒術士ではないのですぐに治すことはできませんが、とりあえずの手当てはしておきました」


治癒術士とは、魔法を使う者の中で文字通り治癒魔法を使う者だ。

医者とは区別されていて、普通の治癒術士は術者の魔力を消費し被術者の毒を消し傷を癒すだけで病は治せない。逆に医者は傷のみならず、毒、病等全般的に時間をかけて治すことを目的としている。

感染症などを防ぐという意味では彼のような医者が必要となる。


センメルが振り向くと


「っとあなたも怪我してますね」


ランザスの怪我に気付き、詰め所のテーブルを片付け始めた。


「ああ、少ししくじってな、私も年だ」

「あなたほどの人が・・・そちらの方は?」


とセンメルは正吾を目で指して言うと


「ああ、さっき打ち合わせのときに言ったと思うが、この青年がショウゴ君だ。ショウゴ君、こちらがセンメルさんだ。村の医者といったらこの人と思ってくれ。この人は中々凄腕でね、死にさえしなかったら大体助けてくれるさ」

「大げさですよ、ランザスさん。センメルです、よろしくお願いしますね。ショウゴ君、君の話はヤンケさんや、ランザスさんから聞いているよ」


センメルは握手を求める。


「ショウゴです、こちらこそよろしくお願いします」


求めに応じ、正吾はセンメルの手を握る。


「センメルさん、悪いんだが少し席を外してくれないか?」

「何を言ってるんですか!まずはあなたたちも手当てを受けなさい!」


センメルはランザスの矢傷やキースの切り傷に指で差して言った。


「そうだぜ、ランザスさん」


フィルは詰った。


「俺のはかすり傷だし、いいっすよセンメルさん」

「なら最低限の止血はしなさい」

「う・・むう・・・」


キースは呻るが何も言えないまま、座らされセンメルに手当てされた。


「しかし・・・なぁ・・・いや分かった、医者の命令に従おう。ショウゴ君、それでもいいか?」


ランザスが正吾に尋ねる。


「ええ、元よりそのつもりでしたので。というか正気ですか?そこまで出血してないとはいえ、矢を抜かずに喋るつもりだったんですか?」

「いや・・・」


(そのつもりだったんだな・・・)


正吾は老人の胆力にため息を吐く


「まぁ話しながらでいいので、手当てされててください」

「ああ、とりあえず今後のことだな」

「ランザスさん。座って、テーブルに腕を乗せてください」


センメルが釘抜きと包帯、ガーゼを持ってそう言う。


「ああ、頼む。それで、盗賊たちがまた襲いにくるっていう話だ」

「押さえてて」


センメルが正吾とキースに言うと、二人はランザスの腕を押さえる。


「少し痛いですよ」

「ああ、知って――ぐっ・・・」


センメルは慣れた手付きで鏃を抜き、ガーゼで傷を抑えて包帯を巻き始めた。


「奴らは思いのほか、統率が取れていた。連携し、被害が大きくなった途端すぐに撤退した。通常の盗賊とは思えないほどの動きだ」

「そうですねぇ。相当機を見るに敏な盗賊の頭が居るってことですかね」

「そうだろうな・・・だが・・・」

「では次はその足です、テーブルの上で寝てください」

「ああ」


ランザスがテーブルの上で寝転ぶと、


「ショウゴさんはランザスさんの体を押さえて、フィル君は太股を」


キースが太股を押さえ、正吾がランザスの肩を押さえる


「頼むぞ」


ランザスが正吾にそう言うと


「任されましたよ」


正吾は答えた。


「抜きます」

「やってくれ」


センメルがランザスの太股にやはり慣れた手付きで鏃を抜き、同じようにガーゼと包帯で手当てした。


「一応、応急処置をしましたが、激しく動けばまた出血しますから大人しくしててください。それでは私は外に出てます」

「ああ、ありがとうセンメルさん」


センメルがそう言うと詰め所を出て行った。


「どこまで話したか。そうだ、統率力のあるリーダーが居るというところまでだったな」

「ええ、それでなんですが。そんな考える頭を持った人間がこの村を襲うっていうのはおかしいと思うんですよね、リスクとリターンが吊り合ってないというか」

「確かに君のその疑問は当然のことだ。だが、それを考えるのはまたの機会にしよう」


(あ、はぐらかしたなこの人。まぁ実際今考えるべきは対策だしな)


正吾はそう思ったが、


「そうしましょうか、とりあえず来る次の襲撃の対策を練りましょう」


話をあわせた。


「ああ、次の襲撃のタイミングは間違いなく今夜中だろう」


(そうだね、それは"知ってる"よ)


「そうなったら、私たちに防ぐ手段は殆ど無い・・・」

「あー・・・私に策がありますよ一応」

「何?」


正吾は昔考えた(妄想した)、とある作戦を説明する


「まず、いくつかの湿らせた丸太、木材を用意します。それを障害物のように村の中に立てて置きます、その後村の照明という照明を消します」

「まてまて、ショウゴ君、そんなことしたところで燃やされるだけだと思うが・・・そもそも燃えないように湿らせたとしても、そこまで効力があるとは思えんのだが」

「燃えにくくなればそれでいいんです、時間が稼げますから。盗賊たちが火を持ち出しても村人は民家の屋根に上り、弓矢で奴らを鴨撃ちにすればいいでしょう。幸いなことに狩猟用の弓を持った人がそこそこいますし」

「やはり村の皆を巻き込んでしまうか・・・」


とランザスはため息を吐く


「そんなものは今更でしょう、ここまで防衛戦力に被害が出たんです。諦めてください、怪我人が少なくなるような作戦ですから上手くいけば全員無傷ですが・・・」

「ですが?」

「奴らにも弓持ちがそこそこの数いるのは確定しています。あれだけの矢の飽和攻撃を出せるんですから伏兵もいたんでしょう」

「そうだろうな、そいつらに対する対策はどうする?」


(やぐらで”見た”とき伏兵には気付かなかったな、本当に見えないように移動してきたんだろう。

だから目の力でも見えなかった、あの矢の雨は予想外だったよ・・・甘かった)


正吾は見えないところで反省しながら話を続ける。


「そうですね、村の中にある程度盗賊たちを引きつけて、相手に味方撃ちをさせないことぐらいでしょう」

「相手がそのまま構わず矢を放ってきたらどうする?」

「どうしようもないですね、そこまで残酷になれる相手なら勝ち目はありません。戦いはどこまで残酷になれるかで勝負が分かれますから」


正吾の素っ気ない態度にランザスは呻った。


(まぁ、撤退命令をちゃんと出すヤツが味方撃ちを恐れず矢を放つとは思えないがね。少なくとも味方を撃ち殺すリスクを考えてる相手だろうからね)


そう、指揮官が味方を殺す作戦を実行するということは部下からの信頼、信用を失うということなのだ。

それを構わずやれる人間は何も考えていないか、全員が”組織”に忠誠を誓っているか、目的のために死を恐れないか、恐怖で配下を支配する非道な人間。


(前者はありえない、たかだか村に策を練ってくるんだ。なら残り3つ、しかし恐怖だけで支配しているわけでも無いだろう。多少威厳を保つためであっても、それで長続きするわけがない。こういう相手なら尚更理解しているはずだ。おっと忘れていた)


「ああランザスさん。盗賊たちは出来るだけ殺さないようにしてください」

「は?あ、いやちゃんとした理由があるんだろう、先ほど君は戦いはどこまで残酷になれるかで決まると言ったんだ。日和った考えでそう言ってるわけでもないだろう?」

「ええ、もちろん。今回奴らは”普通”の盗賊と比べてあまりに統率が取れています。捕まえて尋問してみるのも一考かと。もちろんこちらに余裕があればの話ですが」


正吾がそう言うとランザスは一頻り考え


「ふむ、私は戦えないと思うが。キース、少し気を使って戦ってくれ」

「了解」


キースが素直に答えるのを見てランザスは頷く。


「しかし、奴らが火を持ってこなかった場合はどうするんだ?普通の村人たちはフィル君ほど目は良くないぞ」

「そのときはキースさんと私が一人一人各個撃破していけばいい話です。奴らが如何に連携を取れていようと、月明かりだけを頼りに慣れない暗い場所で室内戦闘をやるようなものです。地の利はこちらにあります」


ランザスは矢傷を受けた腕を撫でながら考え


「うーむ・・・わかった。君の案を採用しよう」


そう決断した。

次回

彼の策は上手くいくのでしょうか 


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