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未来を夢見た覇道人生  作者: Jade
第1章
4/17

戦闘直前

 

辺りは薄暮が迫り、村の家々を赤く照らしている。

詰め所から出て一息つけた正吾は


「もう時間が無いな・・・早く対策を考えなくてはとも思うが・・・」


独り言を呟いた。


(正直あのランザスさん一人で何とかなりそうな気がする、しかし何か策は考えておかなきゃな)


そう考えた正吾は、部屋に置いてきたリュックサックを取りに村長の家に向かった。


(もし未来が変わらず、村長宅が燃えることがあればこの荷物は残らず失うことになる。

生活基盤が無い今、失ってしまうのは物凄く痛い)


途中、今日の農作業終えて帰っている男たちや子供たちの姿を正吾は見ることになる。


(やっぱりどの国、世界でも働いたり遊んだりするのは変わらないよな)


村長の家に戻ると、正吾は老齢の女性と出くわした


「おっと、これはどうも」

「おや?あなたはヤンケの言ってた旅人さんね?」

「はい、ショウゴと申します」

「ショウゴさんね、うちの旦那から聞いてます。

私はヤンケの妻のケルシよ、よろしくね」


ケルシは白髪にスラリとした年を感じさせない良い姿勢を持った老婆だった。

正吾とケルシは挨拶交わし、正吾はどこから来たかや、旅の内容等を嘘八百を並べて少しばかりの会話を手早く終わらせた。


(こんなことしてる場合じゃないんだがな)


正吾は部屋へ向かって、手早く荷物をまとめた。


(荷物はまとめた。あとは・・・一応確認か)


正吾はあの時から2時間ほど経った今、"未来を見通す目(フトゥルム・アイ)"を2、3時間後に設定し未来を見た。

すると、部屋は燃えてはいなかった。


(よっしゃあ!未来は変わったな。しかし、まだやることはある)


正吾は部屋を出て、物見やぐらへ向かった。


*****************


物見やぐらに正吾が着くと、既に日は沈み、あたりは暗くなっていた。


(この世界は、日の沈みが地球より早いのか?いやそんな知識は無い。

あの神は俺の居た世界とこちらとの違いのみの知識を渡したはずだ。

俺の記憶に無いということは、ここは日の沈みが早い地域なんだろう。

ん?あれはフィル君だな)


正吾はやぐらの上にいるフィルを見つけ、呼んだ。


「おーい、フィル君。少しいいかい?」

「ん?ああ!ショウゴさんじゃないか」


フィルが正吾の姿を見つけると彼はやぐらから降りてきた。


「どうしたんだ?話を聞かせてくれるのか!」


フィルは期待に満ち溢れた表情を正吾に向ける。


(すまないなフィル君、俺の茶番に付き合ってもらうぞ)


「そうですよ。どうせだから物見やぐらで景色を楽しみながらお話をしましょう」

「やった! 今の時間ならどうせ大人たちは家の中にいるから、どやされねえしあがっちまえ」

「そうしましょうか」


正吾は苦笑しながらフィルと共に物見やぐらに登った。


(よかった。もし彼が拒否したら同じことを言ってたと思うが彼が言ってくれて手間が省ける)


物見やぐらに登った二人は横並びで柵にもたれて、周りを見渡しながら話を始めた。


「さて、何から話しましょうかね。あ、干し肉食べますか?」


(といっても、この世界の街は知識しか無いけどな!)


そう考えながら正吾はリュックサックから干し肉を取り出しフィルに差し出す。


「おっ、ありがとよ、頂くぜ―うめぇなこれ。

そりゃもう、街だよ街!旨い食いモンとかいっぱいあるんだろ?」

「ええ、それだけじゃないですよ。

その領の特産品とか置いてますし、眺めるだけでも楽しいものです。

その干し肉は――」


(どこで手に入るんだろうか、流石にその知識は無いな)


正吾も干し肉を齧り、適当に嘘を話す。


「二つ、三つ前の街で旅立つ前にとあるおばあさんがくれたものです。

恥ずかしながら私は行き当たりばったりで旅をしているもので、どこの街かは忘れてしまいましたが」

「そうかぁ・・・どこか分かるなら食いに行きたいものだけどなぁ――ん?なんだあれは?」


二人が話していると、フィルが何かに気付く


(時間だな、さてあの人は勝てるのかな。この世界は物騒みたいだし、戦いは見ておこう)


正吾はお気楽な考えを持ちつつ、白々しく


「え?どうしたんです?」


と聞くが、フィルはそんな彼を怪しむことなく。


「アレだよアレ!なんか変な集団がこっちに向かってきてないか?」


と北の方角を指差す。


(俺の"普通の目"じゃ見えないんだよなぁ・・・ソレ。一応確認するか)


正吾は"未来を見通す目(フトゥルム・アイ)"を数瞬先に設定して彼が指差す方を見ると、

やはり20数人の盗賊たちがこちらに向かっている。


「盗賊・・・ですかね?」

「村を襲う盗賊だって!?やべぇじゃねえか村を襲うってことはそれなりに腕に自信あるってことだろ!?」

「そうですねぇ・・・普通は防衛の方が有利ですからね、衛兵さんたちもいますし。いやーよく勉強してますね」

「なんでそんなに暢気に構えてんだよ!この村には衛兵は4人しかいねえんだぞ!」

「あぁ・・・それは確かにマズそうですね」


そう確かに、正吾の常識は数の暴力には勝てないと言っているのだ。

だが、それと同時にどこか異世界だから魔法もあるし凄いパワーで勝てるのではないかという浅はかな期待もある。

もちろん、ただ座して村に被害を出させるわけにはいかなかったから、衛兵に警告はした、フィルを誘導し盗賊たちが迫っていることにも気付かせた。

それで十分なのだと彼は思っている。


「村の皆さんに知らせましょう、私は村長と衛兵さんたちに知らせます。

君はそれ以外の人たちにも伝えてあげてください。

私はここの人たちとそこまで知り合っているわけではないので、君が知らせるのが一番でしょう」

「分かった!後でな!」


二人は別々の方向に向かい、各々の役割を果たしに行った。


*****************


正吾が村長宅に向かうと、ヤンケとケルシがリビングで待っていた。


「遅かったじゃけ、何ばしとったんじゃ?」

「すみません、それどころじゃないです。盗賊たちがこの村に迫ってきてます!」


(あなたにも茶番に付き合ってもらうよ、ヤンケさん)


正吾が盗賊たちのことを掻い摘んで説明すると、


「なんじゃって!?おおっごっちゃ!わしゃ、ランザスさんに知らせにゃ!」

「私も行きます、見てきた本人が知らせに行くのが一番でしょう」

「おうじゃけ、一緒に来てくんろ」


正吾とヤンケは衛兵の詰め所に向かう


(しかし、この村で酷く方言っぽいのがキツいのはケルシさんを除くヤンケさんぐらいの年の人だけだな。

まぁ日本でも関西弁のイントネーションが標準語に近づいて来てるのと一緒で、若ければ若いほど変わるもんか)


正吾は緊急事態にも関わらず、暢気にそんなことを考えて一人で納得していた。


***********


正吾たちが衛兵の詰め所に着くと、ランザスと衛兵らしき男たちが3人居た。


「どうしたんです、ヤンケさん。そんなに慌てて」


ランザスがそう問うと、正吾がヤンケに説明した通りのことをそのまま言った。


「やはり君が見つけたんだね?」

「いえ、違いますよ。見つけたのはフィル君です。」


(カマ掛けのつもりだろうが、そうは問屋が卸さないよランザスさん。

一見公正に見る人だが、あんたは間違いなく組織に属している人間だ。

危険と見れば何かしら対処するタイプだろう。

あんた視点では俺が盗賊のスパイである可能性、漁夫の利を狙ったコソ泥、善意の通報者―まあたくさん候補あることだろうね)


「フィル君と私で手分けして村中に伝えようってことで、私がヤンケさんと、衛兵さんたちに伝えるということで。彼は他の人たちに知らせて回ってます」

「そうか・・・君が昼すぎに見た人影は偵察だったようだね?」

「そのようですね」


しらじらしく正吾はそう答えて話を進めるよう、ランザスに促した。


「ふむ・・・数は20数人・・・間違いないね?」

「ええ、そのくらいの人数です」


(4対20でも勝てないことはない相手だな・・・ただの盗賊ならだが)


ランザスは別の可能性を思い浮かべつつ、対策を考える。


「さて私はどうしましょうか。いやはや、大変なことになりました」

「君は村長さんの家で隠れててくれ、下手に立ち向かって君が怪我しては大変だ」


ランザスは即答した。


(おっと、体の良い軟禁か?まぁちょうどいい落としどころだろうな。

旅人が武装するのは当たり前だろうが、武装した外部の人間を野放しにするのは危ないと考えるのは当然だしな)


「ではそうさせていただきます」


正吾は少し考えそう返答した。


「ではヤンケさん、お借りしている部屋に戻ります」

「お、おう。そうしてくんろ」


正吾は詰め所を出て、呟く。


「まぁ、ある意味予定通りだなぁ・・・」

6時に投稿するつもりが遅くなってしまいました。

ゴールデンウィーク中に何話投稿できるかわかりませんが、第一章は終わらしたいと思います。

次回こそ戦闘!

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