3羽のうさぎ
ぴょん ぴょん。
うさぎが ぴょん。
ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん。
うさぎが ぴょん。
ぴょん ぴょん。
ぴょん ぴょん ぴょん。
3羽のうさぎが、森のおくへ行きました。
「どこに行くのかなぁ?」
「どこに行くんだろう?」
あなぐまの兄妹が考えます。
「きっと、にんじん畑があるんだよ」
「お花畑かもしれないよ」
「きれいな湖があるのかも」
「おおきなシーソーで遊ぶんだよ」
もっともっと考えます。
「みんなでピクニックに行ったんだ」
「あっちに友だちがいるんだよ」
「おまつりの日だったりして」
「わかった! うんどう会があるんだ!」
うさぎたちの かけっこを 思い浮かべて、あなぐまたちは くすくすと笑いました。
「どこに行ったのかなぁ?」
「どこに行ったんだろう?」
「おいかけてみる?」
「だめだよ! おかあさんに怒られちゃう!」
「じゃあ、うさぎさんたちが帰ってきたら、きいてみる?」
「そうだね! そうしよう!」
あなぐまたちは想像をふくらませながら、3羽のうさぎを待ちました。
でも、いつまでたっても、うさぎたちが戻ってきません。
「どうしたのかな?」
「どうしたんだろう?」
あなぐまたちは、だんだん心配になってきました。
「もう暗くなっちゃうよ」
ゆうやけ空に、一番星がひかります。
あなぐまたちは巣穴に戻らないといけません。
「帰ろう。うさぎさんはきっと、べつの道から帰ったんだよ」
お兄ちゃんが言いました。
「そうだよね。きっと、大丈夫だよね」
妹も言いました。
でも、ふたりとも、心配でたまりません。
* * * * *
その夜、ふたりは おふとんの中で考えました。
「迷子になっちゃったのかな?」
「けがをしたのかも」
「ぬまに落ちちゃったとか……」
「それより、森のおくにはキツネやオオカミがいるんだよ!」
3羽のうさぎがキツネやオオカミにおそわれる様子を想像して、あなぐまたちは ぶるりとふるえました。
「大丈夫かな」
「大丈夫かなぁ」
森のおくへ向かう うさぎの姿を思い出します。
「どうして森のおくに行ったんだろう」
「どうしてだろう」
「なにかから逃げていたのかな」
「安全なところを探しにいったのかなぁ」
ぴょんぴょんと跳ねていく うさぎたち。
じつは、急いでいたのでしょうか。
「明日は帰ってくるかなぁ」
「帰ってきてほしいなぁ」
あなぐまたちは心配で ねむれません。
ずっと うさぎたちのことを考えながら、「どうか無事でありますように」と、心の中でねがいました。
* * * * *
つぎの日、おひさまが のぼると すぐに あなぐまたちは巣穴から飛び出しました。
そして、うさぎたちが走っていった 森のおくを見つめます。
「帰ってくるかなぁ」
「きっと、帰ってくるよ」
そのときです。
昨日と同じように、3羽のうさぎが ぴょんぴょんぴょんと、森のおくへ跳ねていきました。
「うさぎさんだ!」
「無事だったんだね!」
あなぐまたちは大よろこび。
「よかったね!」
「よかったね!」
でも、3羽のうさぎは いつ戻ってきたのでしょう。
「やっぱり、べつの道から帰ってたんだよ」
「夜のあいだに帰ってきたのかも」
「話してていて気づかなかっただけかもよ」
「きっと、草でかくれちゃったんだよ!」
すっかり安心したあなぐまたちは、くすくすと笑いあって言いました。
「どこに行ったのかな」
「どこに行ったのかなぁ」
今日もまた、お空に一番星がひかるまで 話すことになりそうです。
おしまい