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【書籍化・コミカライズ】【Web版】おっさん(3歳)の冒険。  作者: ぐう鱈
7章:宗教戦争で最も悲惨なのは宗派争い
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134「地球帰還魔術1」

すみません。週末にショックな出来事<サッカーファンにとって>ありまして、少し遅れました。

 ……。

 あれから目覚めた初代様は二度寝をしました。

 ……あの空気で二度寝できますか?普通。

 何百年も眠りについていたので細胞が崩壊してしまうのではないかと色々気を揉んでいた学者さんとか、偉大な開祖の復活に胸を膨らませて言葉を待っていたミリ姉とか、理性を失ってゾンビみたいになるのではとひそかにバ〇オハザードを思いていた私とか、皆さんの想像を斜め上に言った感じで初代様は二度寝した。仰向けで寝るのがいまいちだったのか横向きになったりしながら幸せそうにいびきをかいていました。この想定外さん。

 そんなこんなで当日は初代様は二度寝を続けました。

 まぁ、初代様が目覚めたことで本格的に目覚めた遺跡が多くのエラーを出し、制御システムが補修システムを再稼働させるため学者たちに協力を求めるということが事態が発生。学者さんたちは困惑しながらもに知識欲求が満たされる予感がしてニヤニヤしておりました。それから3日。本日に至るまで移籍内部は上から下に大騒ぎでございます。そこで大活躍だったのが竜人学者デスガルドとムライさん。竜人学者さんは前の遺跡での『お遊び』が功を奏したのかあっという間に敵も味方も関係なく中心人物となっていました。遺跡の再稼働にいち早く反応していたのは元々発掘作業に従事していた死の国の作業員の皆さんでした。元より発掘調査を行っていた額のある方々なうえに、宰相さんがこの事態を想定して居たので、普通の作業員ではなく、異常な知識欲を抱えた人が多く……結果捕虜のくせに暴動寸前まで行うという異常事態。それをあの場にいた立場を持った学者連中が歓迎しました。正直くるっている。そんなフィーバー状態に、この地を占拠していた異世界宗教過激派の皆さんは……『地球に帰還できる』という希望を説明され、結果完全にフィーバーに乗ってしまいあっという間に手に平を返し捕虜の作業参加を許可してしまいました。

 学者だけであれば宰相さんはこっそり異世界宗教を招き入れたのでしょうが、死の国の『異世界宗教アレルギー』は想像を超えていました。

 実際に多くの異世界宗教派閥の者どもは、過去文明が失敗した『地球への帰還』よりも『この世界での成功・享楽』に傾き、過去の王弟を調略し国家体制を傾けさせた時の様に、いまだ内部工作を継続している。実際に周辺国家に浸透し、長い時間をかけ南西部から死の国攻略を仕掛けてきています。南西部で勝てたからよかったですが、もし敗北または戦線を後退して居たら、内部から講和派が台頭し、そのすきをついて南東部から連合した略奪軍が侵攻してきたのでしょう。『死の国国民保護のため』とか大義名分を立てておけば世界最大戦力である北部の大魔王陛下貴下の軍は動けませんしね。

 だから宰相さんたちがいなくなり南西部の戦場に現れたと聞いたとき、私はかなり焦りました。そして思いました。『美味しいもの探索隊』を南部に送っておいてよかった♪と。噂の魔法少女リッチさんにも感謝申し上げねば。上司(魔王)さんと親御さんにちゃーんと活躍の映像をお送りしましょう。

 ……え?いつまで現実逃避しているだ?ですって!

 なぜわかった!

 ……はぁ、170話近く付き合っていたらわかる、ですか……。ふむ。


「まーちゃん、そろそろお茶にしようかのぅ」

 ええ、現在初代様のお膝の上なぅ、ですよ。


「今日は羊羹がよいのぅ」

 お膝に乗せた私の頭をポンポンと撫でながら拒否を許さない要求をする初代様。

 ひとつ言っておきますよ。

 おじいちゃん言葉ですが、初代様、見た目は20歳前後の青年ですよ。

 しかも金髪碧眼、どこぞの乙女系の王子様っぽい見た目です。

 おじいちゃん言葉に違和感があったので指摘してみたら、本人気づいていなかったらしく驚いていました。ですが『長年使ってきた言葉は、そうそう変えられんのじゃ』と言っておじいちゃん言葉を継続しております。……確かに、言葉とは立場によって変化し、変化したらなかなか戻せないものです。私も1人称の変化を考えてみると『僕→俺→自分→私』ですからね。小さい頃は僕。大人を目指して強いイメージで俺。社会人1年生としてこれから挑んでいくという謙虚な姿勢で自分。責任者となり公的な行動を求められるようになり私。上に行き立場が確定すると好きな一人称に戻りますが、私はきっと私のままなのでしょう、と思います。それだけ言葉といううのは変わりやすく変えずらいのです。


「了解なのです。食べ終わったらエラーを検出している箇所の補修に向かいましょう」

「うむ、今読んでいた石板の箇所じゃな」

 えっとですね。初代様のお膝の上で私が何をしていたのかというと、タブレット式の情報端末での遺跡仕様書の解析です。

 一見すると絵本の読み聞かせ。その実遺跡システムの読み解きなのです。

 ……個別のデスクでしたい。

 いいですか、想像してください。貴方は会社員です。立場はグループ会社の平社員だとしましょう。その貴方の隣にグループ会社の会長がやってきて仕事をしています。しかもちょくちょく業務についての意見を求めてきます。どう思います?いるだけでプレッシャー。回答内容に関して何が正解か、裏の意図は何かを考え常に頭はパンク寸前になることでしょう。

 はい、それ私です。

 更にいうと疲れ切って横になって寝ようとしていた私に『ねぇねぇ初代様ってどんな方?』『どんな話をしていたの?』『小難しいこと言ってないで分かりやすく説明しなさい!』byミリ姉。

 ……伝説の英雄様ですからね……。幼いころからお家の伝説にして憧れの存在。実際に現れたのは王子様もかすむ美青年。


「実際にお話すればよいではないですか?」

「そんな! 恐れ多いことできるわけないじゃない!」

 姉=理不尽。

 ということで、まーちゃんのイライラはめでたくマックスになりました。ですので反撃を開始します。


「……羊羹とお茶です……」

 給仕の格好をしたミリ姉が羊羹とお茶を運んできました。

 顔を真っ赤にしながら俯きがちです。なんともかわいらしい。

 ええ、昨晩あまりにもうるさかったのでお近づきのチャンスを提示してみました。乗り気のくせにもったいぶって悩んでいる姿は面倒くさい姉……っごほん、可愛らしい少女でしたね。

 はい。ということでこのあたりで追撃いきましょう。


「初代様。こちは我が姉です」

「みみみみみ、ミリアム・バ・アルノ―……と申します」

 緊張で声が尻すぼみになっていくミリ姉。かわいいのです。

 普段であれば私を一にらみするミリ姉ですが、初代様の前では緊張でそのような余裕もないようで、小刻みに震えております。


「ほっほっほっほっほ、マイルズの姉か、『バ』の魔法名を持つとは将来有望じゃのう、しかもこんなに可愛いとはのう、将来美人さんじゃ」

 初代様はミリ姉のあたまに手をのせると優しくなでています。

 はいお久しぶりに出ました『魔法名』。神が敷いた『魔法』という物理法則と同義のルール。物理とは違い希少な事象故レベルと同じくわかりやすく発展させるため神から与えられた特性名、それが魔法名なのです。人間では魔法名を持つ者は1割未満と言われています。幸いなことに私も『デ』というレアな魔法名を持っています。ちなみに初代様は『ロマノ・アイノルズ』。……そう、魔法名をお持ちじゃなかったのです。努力の人。だからこそ魔法理論の基礎構築に大きく寄与した伝説の方なのでしょう。


「……」

 照れて真っ赤になるミリ姉。新鮮なのです。

 そのあと初代様は孫をかわいがる祖父の様にゆっくりとミリ姉の話を促し鷹揚にうなずきながら優しい雰囲気で話を聞いています。


「次代の魔導公爵はミリアムちゃんなのかのぅ」

 お茶が冷めてしまったのでお茶を入れなおすために場を辞したあと、遠い目をした初代様がそうこぼしました。


「いえ、次代は精霊眼をお持ちのバン兄でしょう」

「ほほう、うまれながらの精霊眼持ちとは凄まじい素材じゃ」

「はい。でもそれは理由の1割です。何より6歳にして『アルノ―家の良心』と呼ばれる性格。これにつきます。多少ボヤボヤしていても周りがサポートできるのです」

 一時精霊眼が魔導公爵継承条件とか言われていたことがあるらしく、自身も精霊眼が発言し魔導公爵としての地位を築いたという初代様は目をむいて驚愕しておりました。

 なお、現代においてアルノー家で『その程度では個性になりません』とお伝えすると若干引いておられました。


「何よりミリ姉の未来は世界の歌姫!」

「ほっほう」

「そして私のお財布様、ぐふふふ」

「……まーちゃんよ。健やかに育つのじゃ」

 この後後援者として大魔王様と神王様に話をつけて、くっくっく。楽しみなのです!




ここまでお読みいただきありがとうございます。

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