16「兄と料理対決!」
皆さん、人権の言葉の意味考えたことあります?
まだ私の中でGO〇GLE先生が健在だったころ……尋ねたことがあります。
確か発明自体18世紀や19世紀、産業革命後……『裕福となり、満たされ、冷静なった』一部の方々が足元の奴隷を見て『自分はそこに落ちない保険』を考えた結果だったと記憶している。『衣食足りて礼節を知る』と中国の故事にあるように満たされてようやく気づいてしまった。逆転される危険について、そして真剣に考えた結果が人権なのです。
自分たちが行った残虐的な蛮行。それが自分に向かないように大きく張り出された【建前】と弱者を踏みにじった【正義】の結晶ともいえます。
日本にいた時も知っておりましたが世界には私たちが知らない『本物の人種差別』は健在です。
自称自由の国では半世紀前でも明確な差別がありましたし、欧州スポーツを見るといまだ度々問題として挙がります。
なぜでしょう?
能力主義の区別は納得しましょう。
生まれや育ちで分けるのは差別です。
なんでそんなことできるのでしょうか?
理屈はわかります。ですが私の本能は理解を拒みます。
さて話がそれました。
人権とは成り立ちこそ後ろ暗いものですが、現在日本での使われ方はいたって健全です。
その健全性を私は大きく主張したい。
……だから……この紐、外してくれませんか?
今日、この時間『まーちゃん番』はザン兄です。
夕食時に向けて、各種野菜の皮むきを真剣に行っております。
目の前の権三郎とならんで包丁使いが見事です。本当に9歳なのでしょうか?
9歳といえばいまだ包丁を使うのに監視が必要な年だったはずです。
ちなみに私の日本にいた時の夢は娘(7歳)と一緒にお料理をすることです。
ゆくゆくはお料理道具の専門店街に向かいイチャイチャデートが夢でした……。
もう、日本に戻ってもかなわない夢なんですがね……………。
それにしても、お2人包丁使い見ごとです。
私もお芋をごしごし洗ってお手伝いです。
ふむ! 思い出した。
こういう時の言葉があったはずです。
私は自己の英知を絞り言葉を紡ぎます。『何とかに刃物』。
あ、いや違った。やばいやばい声に出てませんね。セーフ。まーちゃんギリギリセーフ!
野菜の土を落としながら厨房のほうを見ます。
たまごサンド会副会長が野菜の切れ端を生ごみに仕分けしています。勿体ない。
かき揚げにすれば美味しいのに。生ごみと言ってもそのまま捨てられるものではありません。
肥料とすることが義務付けられているそうです。
江戸時代の日本ほどではありませんが、エコですね。江戸時代の日本なめちゃいけませんよ?超リサイクル社会ですよ。時間がある人は先生に質問するのが良いと思います。
お店の厨房はまさに戦争のような状態です。
いつもお茶らけている【たまごサンド会の会員ども】でも格好よく見えます。
職人補正ってやつですね。
世の女子の皆さん惑わされてはいけません。
愛でるのであればぜひともこの天使系幼児マイルズ3歳に、是非に! 是非に!
……おっと、エキサイティングしました。
『どうどう』と自分をなだめながら戦場の中心地で指揮を振るう父をみます。
ああ、父の料理はどんな味なのでしょうか……。この間おねだりしてみたら『マイルズが自分で稼いだ金で食べに来たら誠意一杯ふるまってやる』と大きな手で頭をごしごしされました。
親の大きさを知る感動のシーンなのですが……。……私の視線は手首に刻まれた荒縄の跡に注目されてしまいます。
いい場面なのです!
ゆくゆくは私のモチベーションにつながる場面なのです!
……なのに、昨晩ご夫婦は何をされているのでしょうか?
え、私の下ですか?
妹希望です!
断固としてかわいい妹がいいです! ……というかまだ作るのですか?
はぁ、魔法力のおかげで全然いける?
なにか魔法力って言葉を出せばすべて許してもらえるような流れですね?
回復魔法とかあるのですか? ……あ、あるのですか。ふーファンタジー(投げやり)。
さて、お手伝いも終了し厨房から食材をもらって私たちのご飯作成です。
自宅の調理場につくと残念兄さん、じゃなくてザン兄が真剣な面持ちで私を見ます。
そんなに見つめられると恥ずかしいです。
でもごめんなさい。同性は無理なのです。
私はそちら方面では清い体のまま生涯を終えたいのです。
いくら大好きなザン兄でもそこは譲れません。
「マイルズ、勝負だ!」
包丁をこちらに突き付けて『ドーン』という効果音です。
突き付けた瞬間、静かに権三郎に取り上げられてお説教されています。
『人に刃物を向けてはいけません!』という事です。……無理からぬことです。
「とにかく、勝負だ」
「何で?」
私は包丁を持てません。火を扱えません。油は接触禁止、禁断の愛なのです!
どんな勝負をするというのでしょうか?
「お前のケチャ料理を食べた時、俺は兄としてこれに勝たなければいけない! と気づいたんだ」
熱い人です。嫌いではないです。
こういう人がいると討論が理論的に進まず難儀するのですが、個人的には嫌いではありません。
ゴルフとか一緒に行くと楽しい人だったりします。接待ゴルフしか行ったことのない私ですが、プライベートでいつか行きたいものです……。
「話は聞かせてもらったわ!」
ミリ姉、貴女、最近神出鬼没な気がします……。
どなたに似たのでしょうか……。私には2名ほど心当たりがございます……。が、口に出さないのが吉でしょう。大人の保身術ってやつです。
「話は私が通してあげる! 2人は準備を進めなさい!」
と言って風のように駆け抜けていきます。
その姿だけは10歳の可憐な女の子なのです。
で、結局やることになりました。
権三郎はパンを焼き、サラダを作って配膳準備です。
ザン兄はどうやらジャーマンポテトを作っているようです。
私は好きですよ。恵比寿のビール工場見学した後、ビール片手に食べた記憶が鮮明です。好きな料理です。そしてその料理、ケチャ大活躍ですね。
平べったいそれをザン兄は9歳の未成熟な体で悪戦苦闘しながら作ってる。がんばれ。
さて私ですが、権三郎がほかの作業で手一杯なのでやることがありません。
皆が集まり始めて権三郎の手が空き始めたところで私の最終兵器を茹で始めます。
権三郎が本日の趣旨を説明して帰ってくるころ、そいつはいい感じでゆであがりました。
そして水気をきり、軽く切れ目を入れてフライパンで焼き目を入れます。
1本20cm。
1人2本程度。
お皿にケチャとからしを添えて。提供します。
そう祖父農園製のソーセージ(既製品)です。
夕食が並びます。残念定食ではない事に皆喜んでいます。……失礼ですよ? 皆さん。
ザン兄は私のソーセージを見て愕然としています。
そもそも私は勝負するなど一言も言っていません。
さて実食です。
うん、パリッとしておいしいです。
なぜだかドイツ語を叫びたくなります。
ドイツビール祭りとかもう一度行きたいですね。
ぜひ異世界まで出張しませんか?
ドイツ人の方々。生活の保障はしませんし、その後は苦労の連続ですが。いかがでしょう?
祖父は日本酒片手にソーセージをつまみます。ジャーマンポテトにもご満悦です。やがて早々にソーセージを食べ切ってしまい寂しそうにしていると、すかさず権三郎がお代わりのソーセージのお皿と空き皿を入れ替えます。『そうなると思っていましたよ、ふふふ』という顔です。
権三郎は案山子です。
いったいどこに向かってどんな風に進化してゆくのでしょうか……。このアンドロイドの行く末が気になります。一友人として幸せになってくれることを切に願います。
さてその後ですが、祖父のお代わりをみたケチャラー3姉妹の目が燃え上がります。
早いペースではないのですが、しっかりとお代わりします。
……おなかのお肉とか大丈夫ですか?
え? それも魔法力? ……ドラえ〇ん並みに便利ですね、魔法力……。
楽しい夕食が終わるとそこには何も残っていませんでした。
お互いの料理が好評を得たためザン兄と一緒にあとかたずけが楽しいです。
今日はザン兄がお風呂に入れてくれると言い出したのでルンルン気分で抱えられました。
その時、皆が存在を忘れていた父が現れました。ご覧の通り一片の料理もございません。
お父さん、お仕事ご苦労様です。
我々家族は、貴方が頑張る姿をひと時も忘れたことはございません。
職場で『研究と称しておいしいものを食べてる』とか『まかないが豪華』だとか『デザート研究と称して野郎どもだけでお菓子パーティーをしてる』とか知っていて閻魔帳にカキカキしてたりなどしないのです。
とりあえず、ザン兄のジャーマンポテトは後日作ってあげることになりました。
お風呂でザン兄が上機嫌です。
本当に料理好きなんですね。
個人的にはハンターのほうが向いてる気もしますが。もう騎士なんか目指したら最年少団長とか狙えそうなくらい刃物扱い上手なんですが。
ん?何?耳が遠くなったのかな?今ぽろっと『料理人になる最低条件はドラゴン討伐』とかいいました?
気のせいですよね?
そんな最低条件だったら料理人だけで世界を支配できますよ?
え? 意外といける?
……今日ザン兄は私の中でまた別な意味での(残念兄さん=)ザン兄になりました。
悪質な大人の洗脳から早めに解放されるといいですね。
……なんかそれより前にドラゴンハントしてくるような気がしてならないです。そう弟としての直感が言っていますが。……うん。見なかったことにします。
では、皆さんおやすみなさい……。