95「ダンジョン攻略と帰宅難民のダンジョンマスター3」
――観察1日目
やられたらやり返すのが俺の流儀!
娘のナルディアに諭されて動いたわけではない!
亜神の世界は高度に整えられた世界だ。その為、法と言うものが明確に存在する。
そして数千年の時を生きる亜神にとって、離婚とは特段珍しい事ではない。その為離婚となれば弁護士をたて、調停するのが通例である。
亜神や神とは言え感情があり、間違いを起こす。
間違いを起こした時に量刑が違うのであれば禍根を残すことになる。
その為、神の世界では事例を積み重ねられた『判例』と言うものが強い意味を持つ。
何せその後長い時間生きる亜神にとって不公平な結果は派閥間の戦争すら招く行為だからだ。
さて、現状の証拠を多数抑え弁護士と作戦も立てた。
「迂闊に動くなよ」と弁護士に念を押された。
弁護士とは何か? 亜神の世界での司法・政にかかわる者はダンジョン管理を免除される。そう言った者たちがこの世界には数多くいる。
だが、俺はあえてその忠告に逆らった……。
……犯罪とは証拠を残さねば犯罪ではないのだ……。
俺を甘く見たことが運の尽き、そう全てを失ってから気付いてもらおう……。
そう思って向かった都市で私はあの幼児を見つけた……。
――観察5~9日目
幼児を追跡する。
どうやらこの国の村々を視察、慰問、食糧配給などして回る旅の途中のようだ……。
正直そんな旅の途中、ほんの『もののついで』とばかりに攻略されるダンジョン達に、同じダンジョンマスターとして思う所があった……。
だが……今日、その幼児が目をつけたところもあの男の関係者のダンジョンだった。同情心などどこかに飛んで行った……。
天が俺に味方した……。
神も同行していたので俺は本気でそう考えた。
だが、幼児が行ったダンジョン攻略をみて思わず背筋がぞっとした。
あれは……まるで……家畜を屠殺する農家ではないか……。
……その様子は昼夜休むことなく3日続いた……。
夜になると人間たちが帰り代わりにゴーレムたちが魔物を捌き始める。
深い階層を攻略し始めたこともあって当初よりも徐々に運び出されるモンスターが減少している。
だが、その作業は決められたリズムで淡々と進んでゆく。何より深い階層のモンスターは大きい上に解体が難しくなる。
……ぞっと怖気を感じながら俺はその作業から目を離せなかった……。……途中アースドラゴンが分割して運び出されたのを目にしたときに確信した。これを自分のダンジョンされたらとてもではないが抑えきれないと……。
翌日ダンジョンマスターであるジュドーが引きずり出されてきた。彼を歩かせている女の手にはコアが握られている。
ジュドーは間男の年の離れた弟である。
ダンジョン管理の評価も低く近い将来人間に落とされると目されていた男だ。
そんな男だから同情はないが、簡単にコアを砕かれては恐怖せざる得ない。
果たして彼らは俺の味方になりえるのか……。
――観察10日目
彼らを追い3都市目に到着した。
この都市の近くには、俺のダンジョンと間男のダンジョンがある。
……幼児はどちらを攻めるのか……。
距離で言えば俺のダンジョンだろう。
だが、悪辣な罠でハンターを殺すことをしか考えていない馬鹿なダンジョンは間男のダンジョンだ。俺のダンジョンは自慢ではないが市場調査の結果が反映した素材の取れるモンスターとハンターを育成する段階的な難易度設定をしている。きっと間男のダンジョンへ行くはずだ……。
俺は幼児たちが街を出るのをじっと待った。
1日待った……。
朝一番、目論見通り準備を整えた幼児たちがダンジョンへ出発した。
その行先は……間男のダンジョンだ。
俺は意を決して街に戻ってきた神と幼児に接触することとした。
なんとも都合の良い駒が手に入りそうだ……。





