第 5羽 鳥、のステータス
久し振りに見る空は格別だった。
目に飛び込んで来たのは、何処までも続く蒼天。
ただそれだけ、ただそれだけなのに、……こんなにも、……綺麗だ。
空は、こんなにも美しく、壮大だったのか……。
自らの力で空を飛んでいる事実を噛み締め、実感しながら、俺はしばらくの間その場で滞空し、只々大空に浸っていた。
ふと気が付けば、涙を流していた。
……仕方ないよな。夢にまで見たことが今、実現したんだ。
夢が叶った。前世から20年以上思い描いていた夢が叶った。
もう少し、ここでこうして感動に浸って居たい……。
だがそう思った時だった。突如として俺の全身が光りだした。
「ピィッ!?」(なんだッ!?)
危険は感じなかったものの、全身が熱くなり自らの発する光で視界が塞がれる。
しかしそれは一瞬の出来事で、驚愕している内に光は何事も無かったかのように収まってしまった。
な、なんだったんだ……一体?
そう疑問を感じながらふと、視線を動かして自分の体を見てみると……羽の色が変化していた。
あれ? 俺の羽は赤~薄い赤のグラデーションだったはず。
それが今は根本から先端へ向かって銀色~赤色へのグラデーションへと変化していた。腹の羽毛は完全に銀色だ。
何だ? どうした?
先ほどの光が原因なのは分かりきっている。問題は何故発光したのかだ。
一体、俺の身体はどうなってるんだ?
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名前:――
性別:――
種族:不死鳥(幼)
年齢:0歳
状態:健康
生命力: 15/15
魔力量: 63000/63000(35000+28000)
<固有スキル>
【■■】【■■■■】【■■】【■■■■】【■■■■】
【■■■■】【■■■■■】【超回復】【真眼】
【紅炎】【蒼炎】【聖炎】【天空】
<スキル>
【炎熱系統完全耐性】【神聖系統完全耐性】
【全状態異常耐性・Ⅴ】【消費魔力半減・炎熱】
【属性強化・炎熱】【魔導・炎熱】【最大魔力量増大・Ⅷ】
【業火】【生命感知】【魔力感知】
【烈風】【空間把握】【集中】
【魔喰】【魔力圧縮】
/***************************/
――は? ……なんじゃこりゃ?
突然目の前に半透明の板っぽいのが出現した。
……これは、アレか? ゲームなどでよく目にするステータス画面とかいうやつか?
……いやいや、意味分からんし。
というか俺、今めっちゃ感動してたところだったのに何だよこれ。もう少し感動に浸らせてくれてもいいじゃないか……。
体が光って羽の色が変化したと思ったらステータス画面? ……やっぱ意味分からん。
銀の炎やら、それを食べる鳥(俺)とか、生まれ変わってから訳分からんことの連続だったが、今回のが一番訳分からんな。
……あー、落ち着け俺。
ひとまず降りよう。さっきから滞空したまんまだったわ。
降りる場所を確認しようと視線を巡らす。
……視線を動かしたらこのステータス画面と思われる板も俺の眼前に固定された様に一緒に移動しやがった。何こいつ邪魔。……と思ったら消えたよ。
…………もっかい出てこい。
………………。
出てこねーのかよ。
あーそうですか、わかりました、不思議現象ですね。取りあえず降りますか。
と、今更になって眼下の景色が目に入ってきた。……空ばっかり見ていたからな。
何処までも隙間なく広がる雲海、そしてそこから突き出した岩肌。山の頂き、だろうか。その天辺が凹状になっており、火山の火口の様だ。
その火口に蓋をするように銀炎さんが猛っておられる。相変わらずの銀炎さんだ。
…………あれ? ……復活しちゃってる?
位置的に俺の真下なので、あの火口っぽいところから俺が飛び出してきたのは間違いないだろう。……相変わらずの再生能力だ。流石銀炎さん。
そして相変わらず滞空している俺。はいはい、降りましょう。
はい、降りました。
今の場所は火口っぽい穴の淵部分。ここから5m程飛び降りれば銀炎さんのカーペットに着地(?)できるだろう。
さて、何から確認したものか。
俺の身体か、ステータスっぽいものか、周囲の状況か。
うん、安全確認も含めて周囲の状況をまずは確認しようか。
といっても見えるのは果てしない空、雲海とそこから突き出た山肌。あと銀炎さん。
生物の姿は何処にも見受けられない。雲海に阻まれ地表なんて一切見えない。
雲海から俺のいる火口(もう火口でいいや)までは……100mぐらいか?
この山の標高は雲の上。あの雲は……乱層雲だろうか? にしては何か違う感じがする……積乱雲か? いや、そもそも積乱雲がここまでの雲海を形成するとは思えないが……。
まぁそのどちらかだとすれば雲頂が見えているここの標高は7000m~13000mという可能性が出て来る。
つまりエベレスト級。
しかしそうなると疑問を覚える。
俺はちょっと大きい鳩程度。
アネハヅルやオオハクチョウ等が8000m前後を飛ぶことは知られているが、鳩の飛行報告は聞いたことがない。だが俺はさっきまでここの上空を飛んでいた。
ならばここの標高はそれほど高くない?
――いや、止めよう。本当はなんとなく分かっている。
あのステータス画面に答えがあることを。
どうやら今はこの周辺に脅威となりそうな生物は存在しないようだし、ステータス画面の確認に移るべきか。だからといってこの場で確認作業を始めるのは無警戒に過ぎるな。できれば自室に戻ってから確認したい。
仕方ない、もう一度銀炎を抜けるしかないな。
銀炎の上に降り立った俺。
炎の上に立つとか初めての感覚だな。
ユラユラ揺れているので足場が安定しない。このままだと船酔いならぬ炎酔いしそうだ。
さて、またこいつを食べなきゃならんのだが、如何せんさっき食べたばかり。腹はまだ満腹で……はないな。あれ?
何だか知らないがまだまだ食べられそうだ。飛び出したときは確かに限界に近かったのだがもう消化したのか? ……まぁ細かいことは後で考えるか。
銀炎に向かって口を広げ、勢いよく吸い込みを開始。
ズゾオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッ!
ほわッ!? めっちゃ速い!
前回に比べて速度が尋常じゃないくらい上昇している。
あ……もう食べ終わりそうだ。
あ……終わった。
はい、自室に戻ってきた俺です。
色々と検証したいことはあるがまずはステータスを確認すべきだろう。
そこに幾つかの答えがあるような気がするしな。
おっと、ゲップが出そうだ、流石に食べすぎたか?
「ペップッ」(げっぷっ)
ゴオォォ!
炎が出たな。……ふむ、これが所謂胃もたれというやつか。経験したのは初めてだな。
…………。
さっさとステータスの確認をするべきだな。
という訳で、ステータス、出ろ!
………………。
あぁ、分かっていたさ。どうやらステータスさんはツンデレのツン期真っ最中のようだ。
真面目に考えてみる。
さっきはどうやったらステータスが出てきたか?
確か……体が光って、収まったら羽の色が変化していて、一体俺の身体はどうなったんだ? って――
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名前:――
性別:――
種族:不死鳥(幼)
年齢:0歳
状態:健康
生命力: 15/15
魔力量: 63000/63000(35000+28000)
<固有スキル>
【■■】【■■■■】【■■】【■■■■】【■■■■】
【■■■■】【■■■■■】【超回復】【真眼】
【紅炎】【蒼炎】【聖炎】【天空】
<スキル>
【炎熱系統完全耐性】【神聖系統完全耐性】
【全状態異常耐性・Ⅴ】【消費魔力半減・炎熱】
【属性強化・炎熱】【魔導・炎熱】【最大魔力量増大・Ⅷ】
【業火】【生命感知】【魔力感知】
【烈風】【空間把握】【集中】
【魔喰】【魔力圧縮】
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――出ました。デレ期来た。
何回か出したり消したりしてみる。
どうやら、『ステータス出ろ』ではなく、『俺のステータス出ろ』と念じればいいっぽい。対象の指定が必要なのかね。
では本命のステータス確認を開始しますか。
……ふむふむ……ふむふむ……ほうほう……なるほどなるほど。
どこから突っ込んでいいのか分からんな。
取りあえず心のままに突っ込んでいこう。
……え? 俺不死鳥なの? 不死鳥の癖に生命力15? 生命力と魔力量のバランス崩壊してない? スキルとやら多くない? 読めないスキルあるんですけど? てか俺って名無しなの? 性別……男……だよね?
ふぅ、こんなところか――ってほぼ全てだよッ! 突っ込みどころしかねえよ!