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第 7羽   鳥、はやっぱり全裸だった

 


 呆然と立ち竦み、自分の身体を見下ろしている俺の視界には、人間の身体が映り込んでいる。素っ裸の。

 口に銜えていたピアスはいつの間にか無くなっていた。足元を探してみるも、何処にも見当たらない。


 ピアスに魔力を込めたら激痛が走って人間になったと? ……訳が分からんな。

 こういう時はまず、ステータスの確認だ。


/***************************/


 名前:ノイン

 性別:♂

 種族:不死鳥

 年齢:2

 状態:魂体変化:健康


 生命力:    20/20

 魔力量:115650/115650(113500+102150)


/***************************/


 スキル項目には特に異常は無かったのだが、状態項目に変な表示が加わっていた。


「……魂体変化?」


 字面から推測するに、魂が体に変化したという意味か? もしくは魂の体に変化したという事か?

 ……後者が近いか。

 俺の精神は人間の頃と変わっていない。それはつまり、魂を引き継いでいる事と同じだと言えるのではないだろうか。

 魂の体に変化。つまり、人の体に変化。

 証拠もクソもない推論だが、実際に俺が人間の姿へと変わっている以上、この考えが間違っているとは断言できない。

 今はこの推測が正しいとして思考を進めよう。


 ステータスで他におかしい所は……魔力量だな。最大魔力量がちょうど100000の値だけ減少している。

 人化中は常にこの状態であるとするならば、人の姿に成れた事を素直に喜べはしないな。聖炎はとにかく燃費が悪い。その聖炎を切り札とする俺にとっては、魔力量の値は生死に直結するからだ。魔力量がほぼ半減している今の状態はあまりにも痛過ぎる。

 ただ、魔力の増大分を示す()の内部は正常値を示しているので、鳥の姿に戻れば魔力量は元の数値に戻るのではないだろうか。

 

「どうにかして元に戻れないか……?」


 人化した原因があのピアスであることは間違いない。しかし、そのピアスは知らない間に消えてしまっていて、何処にも見当たらない。

 落ち着いて考えてみよう。


「ピアス……耳に付ける物……」


 そう呟きながら何気なく自分の耳に手を伸ばしてみると……ありました。

 いつの間にか、左耳に滑らかな宝石っぽい手触りの物が装着されていたのだ。見えないが感触で分かる。先程のピアスだ。


「……勝手に装着されたのか」


 ピアスを指先でいじりつつ、呆れと安堵が混ざった声が漏れた。


 ――まあいい、これを外してみれば、元の姿に戻れるか分かるだろう。

 そう思い、ピアスを外そうとしたのだが……なぜか外れない。


「……は?」


 予想外の事態に少々の焦りを感じつつ、今度は力の限り外そうとしてみる……が、やっぱり外れない。むしろ耳が外れそうだ。もしかして、このまま鳥に戻れないのでは……という嫌な想像が脳裏に浮かんでくると同時に、じわじわと焦燥感が膨らんでいく。


 まじですか? どうしろと?

 ぬーん……こうなったら【超回復】頼みで耳ごと毟り取って……ってそれは駄目だ、どう考えても痛すぎる。

 落ち着け、良く考えろ、何か方法があるはずだ。

 ピアスを口に銜えて魔力を流したらこうなった。つまり、魔力を流した事で起動したと考えられる。ならば、解除するには……魔力を回収すればいい?


「……やってみるか」


 このピアスから自分へと魔力を流すイメージを浮かべ、恐る恐るそれを実行してみると……魔力が俺の体内へと流れて来る感覚を覚えた。このままいけそうだと判断し、続ける。


 そして、魔力が流れ切ったと感じた瞬間、全身に違和感が走り……視界のど真ん中に、嘴さん。

 自分の体を確認しようと思い、視線を落としてみると……鳥足の横にポツンと落ちている、ピアスさん。

 どうやら変化を解除するとピアスは自動的に外されるみたいだな。


「……よ、良かった。今度は痛くなかったぞ……」


 ホッと安堵のため息をつきながら、改めて自分の姿を確認する。

 ……うん、間違いなく鳥の俺だ。無事に戻れて良かった、本当に。

 最初に変化した時の痛みは相当なものだったからな。鳥に戻る時にまたあの激痛に襲われたら……と、内心ビクビクしていたんだよ。


 さて、ステータスを確認してみよう。



 状態:健康

 魔力量:118800/215650(113500+102150)



 よし、状態の項目が元に戻ってるな。

 魔力は……最大値のみ戻っているな。


 ……くそ、元に戻っても減少した分の魔力は戻ってこないのか。

 人化を解除した時にピアスから俺へと流れ込んできた魔力は、最大魔力量としての魔力の器を形成する為に使われたのだろうか?

 まあいい、もう一度試せば分かるだろう。

 落ちているピアスを今度は足で掴み、魔力を込めてみる。すると、その瞬間にフワッとした感覚に包まれて、また俺は人間の姿へと変化した。


「……急激に視線の高さが変化するから、違和感が凄いな」


 何気なく眉間を揉む俺。特に意味はない。


 お、そう言えば、今回も最初に変化した時のような痛みが無かったな。

 うーむ……最初のアレは、魂体変化プログラムのインストール作業みたいなものだったのかね? 

 ま、痛くないならそれに越したことはない。ステータスを確認だ。



 魔力量:115650/115650(113500+102150)



 ふむ、成程。

 魔力量が五割程度の時に変化して、今は最大魔力値となっている。

 つまり、変化には魔力を100000消費するのではなく、最大魔力量を100000使用するだけだという事で確定だ。


 念の為、また鳥へと戻ってから、再び人化する。

 ステータスは……うん、さっきと変わってないな。それに素っ裸なのも。

 ピアスはまた左耳に付いている。ここに装着されるのは仕様なのだろう。


「……右耳じゃなくて良かった」


 心の底からそう思い、ホッと胸を撫で下ろす。

 俺はゲイじゃないんでね。

 余談だが、女性が片耳だけにピアスを着けるときは、左がレズ、右が優しさと成人女性の証、だったはずだ。……まあ、記憶があやふやだから間違っているかも知れないがな。


 ふむ、大分と理解できてきたな。

 しかしこれ、鳥から人間になる場合はいいけど、その逆だと魔力がガッツリ減った状態になるのがネックである。気軽にポンポン変化しまくるのは避けるべきか。

 と言うか、そもそも人化すると俺は素っ裸状態なのだから、気の向くままにポンポン変化していたら、その度に露出狂が局地的に出現してしまう事になるからダメですね。…………うわ、嫌な想像をしてしまった。

 プロの露出狂にとっては喉から手が出るほどに欲しい能力だろうが、当然、俺にそんな趣味は無い。鳥さん状態では常にフルオープンだったが、あれは鳥さんだから許されたことだ。今のままだと捕まる。騎士団に捕まる。つまりジークに捕まる。


 そうならない為にも服が欲しいな。とにかくこいつを隠さなくては。

 そう思いつつ、“こいつ”へと視線を向け、爽やかな笑顔で挨拶を贈る。


「……やあ、久し振りだな、俺の息子よ」


 どうやら人間状態では性別が♂になるみたいで安心した。ステータスさんも太鼓判を押してくれている。心の底から懇切丁寧にありがとう。息子が存在しているのに性別無しとか嫌だからな。

 しかし、ちょっと見なかった間に息子は不良になってしまったようだ。その髪色はどうしたんだい? なぜに銀髪なんだい? シルバーでも巻きたかったのかい? ならば、意味を履き違えているよ?


 などと息子を諭そうとした瞬間に、記憶をピリッと刺激された。

 ――ん? ……そう言えばこの身体、何か見覚えがあるような気がする。息子も。


「……もしかして、前世の俺の身体か?」


 ……確認してみよう。

 右手を前方にかざし、光魔法の[鏡]を俺の等身大で発動させる。

 目の前に現れた鏡面、そこに映ったのは――


「……俺……か?」


 ――裸体を晒しつつ、驚きと困惑の表情を浮かべた、俺っぽい人物だった。

 というのも、記憶の中の俺とかなり違ってしまっているのだ。主に髪とか目の色とかが。

 俺、サラサラでキラキラの銀髪になってます。しかも、メッシュを入れた様に毛先が紅色に染まっている部分がチラホラと。それに、平均して3cmくらいだったはずの長さの髪が、少々伸びてしまっている。バラつきはあるが、前髪は目に掛かるぐらい、側面は耳の下あたりまで、背面は肩に到達しない程度である。そして……頭頂部から一房の髪が重力に逆らってぴょこんと飛び出ており、『?』こんなかんじを体現している。これってあれだろ? 例のアホ毛ってやつだろ?

 このやろぉ……オールバックトサカの名残のつもりか? ピョンピョンしやがってからに。

 そして、そんな俺のことを、鏡に映った二重瞼の奥から蒼色の瞳が見つめている。


 髪の長さは別にして、鳥さんの特徴を引き継いでいるな。だが、それ以外は前世の俺の体だと思う。身長は前世と同じ175cm前後だと思うし、スカイダイビングの為にそれなりに鍛えていた体もそのまんまである。

 それに、この中間って感じの顔もだ……。


「まさか、またこの顔を拝む事になるとはな……」


 鏡に映った俺の表情は曇り気味だ。顔にコンプレックスを持つ人は多く、俺もその例に漏れていないのである。

 しかし……ほんといつ見てもアレだな、もう少し男前に生まれたかったよ。

 ただ、髪の色と目の色が違うせいで印象が大きく変わってしまい、日本人って感じではなくなっている。

 

 と言うかだな、人の姿になって性別が♂になったのはいいが、何で種族が不死鳥のままなんだ? 鳥さんの特徴を引き継いでいるからか? 

 全く、冗談じゃねえぞほんとによぉ…………とてもナイスな判断じゃないですかっ! つまり、俺は常に鳥さんであるという事が証明された訳だ。

 人化したら♂になり、その上で、不死鳥である。まさに至れり尽くせりである。

 このピアスを作った人は分かってるな、とても素晴らしい人物だったのだろう。是非とも酒を酌み交わしてみたいものだ。

 ……もう生きてはいないだろうけどな。……残念だ。


 ……まあいい、それよりも今は服だ。

 幸いにもここは人工物だと思われる建物の屋上。人が建設した物ならば、この中に人の荷物などがある可能性は高いだろう。

 さて、この中を探索するのは決定なのだが、その前にもう一度ここら一帯を観察しておくとしようか。


 一糸纏わぬ姿で屋上に立ったまま、周辺へと視線を巡らせる。


 ここは何て言うか……何も無いな。

 だだっ広い荒野にポツンとこの建物が存在しているだけだ。トゲトゲした印象を与えてくる茶色の森は、幹と枝だけなのに結構な密度であり、見通しが悪く、奥がどうなっているのかを目視することはできない。そして、どの方角を向いても視界に映り込んでくる、雲まで達する岩の壁。

 ここはあの崖の様な山々によって円形に囲まれた閉鎖空間、といった感じだな。

 ただ、この建物が存在しているということは何かしらの侵入経路があるのだろう。俺のように空から、ってことは無いと思う。守護者が対空攻撃の手段を持っていなかったことからも、上空からの侵入は想定されていなかったと予測できるしな。森と岩壁の境界の何処かに、洞窟の様な通路でもあるんじゃないだろうか。後で森の奥はどうなっているかを調べてみてもいいかもな。

 ただ、森の中にはポツポツと魔力反応が感じられるので、探検気分って訳にはいかないけど。


 それでこの建物なんだが、コンクリートっぽい材質でそこそこ滑らかである。高さは15mほどなので、多分二階建て。扉や窓は木製だった。扉は一階の東側に一つだけ。邪結晶が乗るくらいにはそこそこ大きく、六人ぐらいなら暮らせるのでは? って感じだな。六人って数は何となくだ。

 地表にはこの建物を囲む形で煉瓦っぽいものが二重に並べられ、二つの輪を描いている。内側と外側の円の幅は2mほどだろうか。ただ、出入りの際に邪魔になるからか、扉の前だけは開けてある。時計で言えば3時の部分だけがすっぽ抜けている感じだ。

 ふむ、パッと見、花壇の様な印象を受けるんだが……しかし、その何処にも花などは確認できない。昔は何かの植物で溢れていたのかも知れないな。


 感知スキルには反応が無いことから、今はこの建物に誰も住んでいないと思われる。

 まあ、さっきまでそこで守護者が猛っていたしな、当たり前か。

 反応が無いので突然襲われる心配も無いとは思うが、一応警戒はしておく。


 さて、観察はこの辺でいいだろう。そろそろ探索を開始しますかね。


 地表へと降りる為、俺は屋上から宙へと身を躍らせる。

 そして、落下することによって主観的に空気の流れが発生し、股間に一瞬の清涼感を感じた直後――


「――ぐあっ!」


 全裸の俺がグキっと着地して、その勢いのまま地面へと倒れ込み、苦悶の声を上げてしまった。要するに、足首さんが逝ってしまわれたのである。が、【超回復】さんが頼もしい。もう治ってしまった。


 体に付着した土を払いながら立ち上がる俺。

 地面が柔らかくなければ、膝、腰、背骨まで逝ってたかもな、などと慄きつつ、今の事柄について反省する。


 人間は何て不便な生き物なのだろうか……。体重が増えたのに、身体強化系統のスキルを使う事を完全に失念していた。というよりも、鳥さん状態ならばスキルを発動させずともフワリと着地できていたので、着地にスキルが必要だなんて考えは一片も無かったのである。【赫魔天血】の常時効果が無ければ、足首だけで済んではいなかっただろうな。


 うーん……以前から薄々と感じていた事なのだが、思うに、生命力の数値は防御力も兼任して示しているのではないだろうか? というのも、生命力が20しかない俺が15mも落下して、足首をグキっただけで済んでいる事に不自然さを感じるからだ。だからと言って、足首を骨折しただけで死ぬ、ってのもおかしいからな。

 つまり、『生命力:20/20』という表示は、


 生命力:100%/100%

 防御力:20


 って感じなのではないかと思うのだ。

 そうであれば、あの時の闇槍や、厄毒龍の鬣をぶっ刺されて即死しなかった事に説明がつく、ような気がする。だってどう考えてもHP20の奴が即死しないで済むような傷では無かったしな、あれは。

 例えるなら、生命力が5000の人に拳大の石を高速でぶつけても大した傷にはならないが、生命力が20の俺にぶつけると、下手したら体を貫通してしまう。って感じじゃないだろうか。

 要するに、生命力が20の俺は、ちょっとした攻撃で体を損傷しやすい、という事だ。

 

 などと生命力に対する考察を行いながら、一階部分に一つだけ設置されている扉のドアノブに手を掛ける俺。しかしそれを捻ったと同時、ドアノブだけがベキベキッと扉から解離してしまう。さらに、ノブを失った衝撃で蝶番もやられたのか、奥に向かってゆっくりと倒れ込んだ扉さんが着地と同時に崩壊し、埃が盛大に舞い上がった。そんな中で、呆然と立ち竦む素っ裸の俺。

 ……あーあ、扉無くなっちゃったよ。もう腐ってたんだろうな。風通しが良くなったと解釈しておこう。

 苦笑を浮かべた俺は、右手に握られていたノブだった物をポイっと投げ捨て、扉の残骸を裸足で踏みつつ、そのまま中へと侵入した。足裏がチクチクする。


 うわ、中は埃だらけだ、一歩進む度に埃が舞い上がってしまう。

 家具の類は……めちゃくちゃだな。荒らされたようにして壊れており、原形を留めている物の方が少ない状態である。


 そのまま一階を一通り探索し終えたが、使えそうな物は何も無かった。

 なので、次は二階を探索する事に決めて、軋む階段を登っていく。

 ……踏み抜きそうで怖いな。


 少しビクつきながら二階へと上った俺の目に映ったものは、薄汚く朽ちた廊下。

 どうやら二階の内装は主に木製であるようだ。そしてそのせいか、廊下の壁は殆どが崩れ落ちていて、全ての部屋の中がここから丸見えだった。


 ふむ、合計で六つの部屋が確認できるな。そして、それぞれの部屋の中にはベッドのような物が設置されているので、二階はどうやら寝室として使われていたと思われる。ただ、ベッドは見るも無残な状態であり、辛うじてその体を保っている、といった感じだ。


 さて、寝室ならクローゼットのような物があるだろう。色々と探ってみるか。


 だが期待虚しく、それぞれの部屋を全て調べてみても、有用な物を見つける事は叶わなかった。

 その結果に気を落としつつ、外へと出る。


「はぁ……無駄に埃を被っただけか……」


 結局この建物内にはゴミしかなく、当然俺もすっぽんぽんのまま。

 身体中が埃塗れになったので、蒼炎で[消毒]しておく。


「ふぅ……。どうするかな……」


 期待が外れたからか、変な脱力感に包まれたまま、ゆっくりと空を見上げて思案する。

 せっかく人間になれる手段を得たのだから服を、と思っていたんだが、収穫はゼロ。ならば、町まで行って人間に譲って貰うのが良いかと思ったが、全裸で服下さいとは言えない。その前に捕まる。


 ……この世界でも猥褻物陳列罪とかあるんだろうか? ……下手したら即刻斬り掛かられるかも知れないな。

 まずは最低限の服装を自分で整えることを優先すべきかね。それから町へと入り、ちゃんとした服を手に入れればいいだろう。俺は金銭を持っていないが……まあ何とかなるさ。

 よし、そうと決まれば、次はその最低限の服をどうやって用意するかだな。


 うーむ、葉っぱ一枚で息子を隠せばそれで良い、ともいかんしな。

 その辺の魔物から適当に皮でも剥ぎ取って体に巻くか?


 ――と言うか、そもそも町をまだ見つけてなかったな。今からカルナスに戻るのもあれだから、旅を再開して次の町を見つけてから考えればいいか。

 この建物は相当な年月の間放置されていたようだ。つまり、この周辺もそうだということ。ならば周辺の調査はやらなくていいだろう。何か見つかったとしても、虫だらけのボロ布とかだろうしな。侵入経路とかの調査は始めたら止まらなくなりそうなので、今は止めておく。


 さて、それじゃあ空へ――……と思ったのだが、なぜか飛べない。

 と、気付いた。マヌケにも腕をぶんぶん振っていただけだと。


「――あ、今人間の姿だったな。……ん? でも【天空】があるんだが? ……翼がないと飛べないのか?」


 ……少し試してみよう。

 ふんっ。よいしょ。ほいほいほいっ。そりゃっ。ひっひっふー。


「…………」


 ジャンプしたり、手を翼に見立てて動かしたりしてみたがダメだった。どうやら人間状態では空を飛べないらしい。

 種族が不死鳥なのに飛べないとか……。くそ、舞○術は実現不可能ということか。忌々しいっ。

 恐らく、【天空】のスキルが機能していないのだろう。


 ……他のスキルは使えるよな?

 どれどれ……





 ……一応、使えた。

 なので、足裏サイズの聖炎を質量モードONにして宙に発動。その上に乗れば、一応は空へと登れる。階段を登るようにしてな。……だが、飛ぶことにはなりませんっと。


「あー……なんかもう鳥のままでいいんじゃないかと思えてきた」


 飛べるし、魔力いっぱいだし、飛べるし、見た目イケメンだし、飛べるし。


 よし。鳥モード、変化!


 仮面のバイク乗りみたいなポーズを決めて鳥へと戻った俺。

 ……うん、やっぱりこっちのが落ち着くな。

 では、旅を再開しますか。


 俺はピアスを足で掴み、そのまま上空へと飛び立った。





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