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第 2羽   鳥、は速くなっていた

 


 年齢:2歳


 ステータスに表示されたそれを見て、思考を深める。

 あの日、俺は確かに死んだ。

 あの日は『不死鳥の日』とかで、俺の誕生日でもあった。

 あの日、俺は1歳になった。それは間違いない。


 なら、この表記が示すものは何だ? あの日から一年以上経過したとでもいうのか? 【転生】での復活には一年以上掛かるとでも? そもそも復活するまでは死んでいる状態じゃないのか? その状態で年を取るのか?

 ……ダメだな、全然分からない。

 こういうときの為の説明文なのに、復活するとしか記されていないのが腹立たしい。


「くそっ、スキルの詳細説明はこの辺がいい加減なんだ……っ」


 不満が口を衝いて出た。

 こうなってくると、仕組みを知る為には実際に試してみるしかないと思うんだが、【転生】を試みてまた一年以上経過、なんて事になるのは御免だ。そうなってまたここで目覚めて…………ん?

 そこまで考えたところで、頭の中で何かが引っ掛かった。


 ……転生……復活。…………再誕…………目覚める?


 確か、『不死鳥の日』は不死鳥が生誕した日、という祝日だったはず。

 俺は実際に『不死鳥の日』が誕生日。つまり、『不死鳥の日』に誕生して、目覚めたということ。

 そして、【転生】での復活は言うなれば…………“再誕”。


 不死鳥は、『不死鳥の日』に誕生する。

 つまり、復活――再誕も…………『不死鳥の日』に行われる?


 ……もしかして、今日が『不死鳥の日』だなんてことは……ないよな?

 いや、仮にそうだとしても、俺が死んだあの日は『不死鳥の日』だった。ならばその日の内に復活するはずだ。

 …………『不死鳥の日』の0時にのみ、復活する?

 

 ……ダメだな、ここで考えて分かるようなことではないと思う。今日が何日なのか分からない以上、町へ行って確認するしかない。【転生】での復活は『不死鳥の日』に行われるとする仮説だけ立てておこう。


 しかし…………2歳か。

 種族:不死鳥 の後に(幼)が無くなっている。これは、2歳になって成熟したということだろうか?

 鳥の成熟は犬や猫のように人間よりも早いはずだからおかしくはないんだが、不死鳥の成熟期なんて知らないからな……。


 そう思って何気なく自分の翼を広げたとき、何やら身体が大きくなっていることに気付いた。


 1歳のときは鳩並の大きさで、体調は約30cm~35cmぐらいだった。

 だが、今の体長は恐らく60cm近い。翼開長は150cmはあると思われる。鷹や鷲といった大きさだ。

 鷹と鷲の違いは体の大きさだったはず。例外も居るが、確か、タカ目の中で小型なのが鷹、大型なのが鷲だったと記憶している。それを参考にすれば、今の俺は鷹と呼ばれる大きさだろうな。


 ……どうやら本当に一年以上経過しているらしい。随分と大きくなってしまったもんだ。

 そう思い、改めて自分の身体を確認してみる。

 嘴や足の爪や鋭くなっていて、翼がしっかりした印象を受ける。

 それと、なんだか頭の天辺、と言うか額付近に違和感がある。

 見えないので確認できないが、長い何かが生えている気がするな……。


 まあいい、自分の身体についてはこの辺でいいだろう。

 大事なのはスキルだ。

 なぜだか分からないが、読めなかった固有スキルが【転生】を合わせて三つも解放されている。


 これらの確認を終えたら、出発だ。




 ~~




 スキルの確認を終えた俺は、部屋を出て、聖炎天井を突破し、空へと出た。

 火口の上で滞空しつつ、周辺へと視線を巡らせる。


「…………夜か」


 夜空からは星々の輝きが、下方からは聖炎の銀光が俺を挟み、照らしている。

 旅立った時と比べて、見える景色に違いはない。相変わらず山の周辺は死んだ様な土地であり、殆ど変化していないのが見て取れる。

 まあ、あの闇黒世界に覆われていたんだ。一年間陽光を浴びた程度で回復するほうが不自然なのかも知れないな。

 少しだけ違和感を感じたが、その正体を詳しく考察する気は起きない。カルナスへと急ぎたいのだ。


 俺は観察もそこそこに、西方――カルナスへと向けて出発した。





 ――速い。


 出発してからしばらく飛んだ感想だ。

 全力ではないにも拘わらず、時速が100km近く出ていると思われる。【天空】などの強化スキルは何も使っていないのにだ。

 身体が大きくなった為か、以前よりも少ない力でより速く飛べるようになっていた。羽ばたきを一つする度にグンと加速する。体が非常に軽く感じられる。

 この感じだと、スキルを使わずとも今の俺が全力を出せば、時速200kmを超えるだろう。

 因みに、今は雲の下を飛んでいる。対比物がなければ速度を判断できないからな。


 さて、カルナスへと早く到着したい。スキルを使えばどこまで速くなるのか試してみよう。

 飛行を強化するスキルは、【天空】【赫魔天血】【身体強化・Ⅱ】の三つだ。



【天空】:

ありとあらゆる高度、場所での飛行を可能とし、飛行による疲労が生じない。

魔力を消費することで飛行性能を向上させることが可能。

空中にいる際の行動に極大の強化補正が掛かる。

このスキル保有者は、スキル【烈風】【空間把握】を取得する。


【赫魔天血】:

赤々と燃えるように輝く、天の血液。

最大生命力の値に比例して、身体能力が大幅に強化される。

最大魔力量の値に比例して、魔力制御能力が大幅に強化される。

魔力を消費することでさらに強化率を上昇させることが可能。その場合、最大生命力と最大魔力量を合計した分の値に比例してそれぞれが強化される。


【身体強化・Ⅱ】:

魔力を消費して自身の身体能力を強化する。

スキルレベルが高いほど、強化率は上昇していく。




 【赫魔天血】は解放された固有スキルの一つだ。

 何もしなくても身体能力と魔力制御能力が大幅に強化されるという効果が常時発動している。

 ただ、俺の生命力は虫並なので、通常時だと身体能力は殆ど強化されていない。しかし、魔力量だけは守護者級に多いのが俺だ。魔力を消費すれば二つの値をプラスした数値により強化率が決定される為、問題はない。

 部屋から聖炎天井へ向かう時に少し使ってみたが、かなり強力だと思う。思わず壁にぶつかりそうになったからな。【身体強化】の完全上位互換スキルといったところか。

 【転生】の例があるので、まだ説明文に記されていない何らかの能力があるかも知れないと疑ってしまうが、それは今はいい。


 では、この三つを同時発動してみよう。



 ~



 ……これは、凄まじい……と言うか、苦しいな……。


 スキルを解除する。


 ……ふぅ、物凄い速度で景色が後方へと流れていった。

 最初は軽く、と思って全力ではなかったんだが、多分、時速300kmは超えていたと思う。時速285km程度の新幹線に乗った時に窓から見えた光景と近かったからな。

 ただ、通常のスカイダイビングだとヘッドダウン(頭を下にした状態)の落下速度が凡そで時速300kmなのだが、その時の感覚とは違った。スカイダイビングでは周囲に対比物が無い為、落ちているというよりも浮いているという感覚だからだろう。それに、落下と水平飛行ではまた違うだろうし。


 っと、思考がズレたな。


 その後、スキルを全力で発動させて飛んでみたのだが、時速など分からないぐらいの速度が出てしまった。あまりにも速過ぎて空気の圧力により身体が悲鳴を上げていたぐらいである。俺の生命力では全力の飛行には耐えられないようだ。【超回復】ですぐに痛みは引くんだが、そこまでして飛ぶ意味はないだろう。

 衝撃波なんかは出ていなかったので、戦闘機ほどでは無かったとは思うが…………。

 何にせよ、先程の速度だと体に負担が掛かり過ぎるし、急停止なんかもできない。周囲に魔力反応や障害物があるときなどは、よほど急いでない限り全力は出さないでおくことにしよう。あの速度で何かと衝突すれば間違いなく【転生】が発動するだろうしな。


 さて、飛行速度の検証はこの辺で切り上げようか。


 この飛行性能なら全速力でなくともすぐにカルナスに到着すると思われる。

 以前、アーリィと出会うまで八十日もの日数が掛かったが、あれは全く参考にならない。

 西へと一直線に飛んでいた訳じゃないからな。あの時は話ができる知的生物を探していたのでゆっくりと飛び、感知に反応があった対象は全て接触するようにしていたからだ。それに、いろいろと寄り道もしたし、足環を手に入れてからは魔石集めに精を出すなどしてフラフラしていたからあの日数になったのである。

 今回は魔物などは全て無視して、真っ直ぐにカルナスへと向かうつもりだ。と言っても、闇黒地帯の魔物は強力な奴等が多いので、無視し切れない場合もあるけどな。


 さて、どのくらいで到達できるか。


 そう思いつつ、俺は西へと向けて夜空を突き進んでいった。





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