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第16羽   鳥、とご主人様

 

「ピヨヨ?」(落ち着いた?)

「……うん、もう大丈夫だよ、ノイン」


 両手で涙の跡を拭い、微笑みを浮かべたアーリィ。


「うっ、ううぅぅ……グスッ……アーリィ様っ……うっ、うぅぅ……」


 エリスさんはまだダメみたいだな。手で顔を覆う事もせずに直立状態でダダ泣きしている。

 にしても……美人さんはこれだけ泣いても美人さんなんだな。


「もうっ、エリスは仕方ないんだから」


 アーリィが苦笑しながらそう言った。よくあることなのだろう。


「それじゃ、ノイン。……いくよ?」


 まだ赤くなっている瞳で俺を見つめ、確認を求めてきた。

 否はないさ。


「ピィ、ピヨッチ」(うぃ、どうぞ)

「じゃ、じゃあいくよ……――【従魔契約】」


 真剣な表情に僅かな緊張を浮かべ、俺に両手を向け、スキルを発動させた。


 ……うん、胸毛が痒い。


 多分この時に同意すればいいんだよな。

 俺は念じる。契約OKです、契約OKです、けいや――


 ――ブオオォッ!!


「きゃあっ!」

「ピッ!?」(うぉ!?)


 なんだ?! 俺とアーリィから銀色のオーラのようなモノが噴き出してきた!?


「っ! アーリィ様!」


 エリスさんが駆けて来てその手がオーラに触れた瞬間――バシンッと音を立てて弾かれた。


「ッ!? 近づけない?! な、何が?!」


 弾かれた手とオーラを見やりながら焦りの表情でそう言ったエリスさん。


「――大丈夫だよ、心配はいらない。これは契約の儀、契約が行われている証だよ」


 アーリィがエリスさんを落ち着かせる様にそう告げた。


 ……成程、言われてみれば確かにそう感じる。スキルの持ち主であるアーリィはより強く、そう感じられているのだろう。


 そして十数秒後、心配そうにエリスさんが見守る中、銀色の奔流は止まった。

 契約が完了したようだな。


「――うん、これで契約は完了したよ」

「ピィ」(おう)

「アーリィ様っ、ご無事ですか?」


 エリスさんがそう尋ねているが、アーリィが無事なのは明らかだ。

 ……というか、なんかさっきよりも肌がツヤツヤしていませんか、アーリィさん?


「大丈夫だよエリス、むしろ絶好調だよっ」


 両手を腰に当て、胸を張り、満面の笑顔でそう言い放ったアーリィ。


「ぜ、絶好調? ですか?」

「うん、なんかこう……力が湧き出てくる感じ?」

「は、はぁ」


 むんっ、と力こぶを作る仕草をするアーリィに対して困惑しているエリスさん。


 もしかして……


/***************************/


 名前:アーリィ・アカトラム

 性別:♀

 種族:ヒューノ

 年齢:14

 状態:通常

 契約:従魔:ノイン


 生命力:   763/763(760+3)

 魔力量: 15613/15613(610+11400+3603)


<固有スキル>

【従魔契約】【魔力の泉】


<スキル>

【炎熱耐性・Ⅰ】【風耐性・Ⅳ】【光耐性・Ⅰ】

【火熱魔法・Ⅰ】【風魔法・Ⅳ】【光魔法・Ⅰ】

【全状態異常耐性・Ⅰ】

【最大魔力量増大・Ⅲ】【魔力回復速度上昇・Ⅲ】

【生命感知】【魔力感知】【魔力制御】

【身体強化・Ⅱ】【集中】【算術】


/***************************/


/***************************/


 名前:ノイン

 性別:俺『――』

 種族:朱輝鳥(亜種)『不死鳥(幼)』

 年齢:0

 状態:健康

 契約:主:アーリィ・アカトラム


 生命力:   94/94(18+76)

 魔力量: 2000/2000

   『102709/102709(57000+61+45648)』


<固有スキル>

【全言語理解】

【■■】【■■■■】【■■】【■■■■】【■■■■】

【■■■■】【全言語理解】【超回復】【真眼】

【紅炎】【蒼炎】【聖炎】【天空】【神の悪戯】

 』


<スキル>

【炎熱魔法・Ⅴ】【風魔法・Ⅰ】【生命感知】【魔力感知】

【魔喰】【炎熱耐性・Ⅴ】【魔力制御】【身体強化・Ⅰ】

【炎熱系統完全耐性】【神聖系統完全耐性】

【全状態異常耐性・Ⅴ】【消費魔力半減・炎熱】

【属性強化・炎熱】【魔導・炎熱】【最大魔力量増大・Ⅷ】

【業火】【生命感知】【魔力感知】【烈風】

【空間把握】【集中】【魔喰】【魔力圧縮】

【毒耐性・Ⅵ】【魔力制御】【姿勢制御】

【身体強化・Ⅰ】【風魔法・Ⅰ】

 』

/***************************/


 ――げええっ!? アーリィさんめっちゃ魔力増えてやがる! ジークよりも高くなっちまったよ!?

 あの兄貴は確か9500前後だったはずだ。

 っていうか、スキルもしれっと強化されたり追加されたりしているものが確認できる。


 にしてもこの魔力量の増え方は異常だな、何か法則が……?


 ……っ! この数値、アーリィの基本生命力と基本魔力量の10%が俺に。俺の基本数値の20%がアーリィへと影響しているのか。


 ――やった! 遂に俺の生命力が50を超えたぞッ! ってそれどころじゃない、俺の魔力量を偽装しないと。

 えっと、アーリィの基本魔力は610だから+61で……よし、完了。


 魔力量: 2061/2061(2000+61)


 これで《板》を使われても大丈夫だな。

 でもアーリィの魔力量の増え方から俺の本当の魔力量がバレたりしないかな……?

 まあ、そこは(亜種)さんに期待するか。


「あの、アーリィ様。ステータスをご確認なさっては如何ですか? 契約により何か変化しているのかもしれません」

「あ、それもそうだね。よし、ステータス――…………ふぇ?」


 アーリィの目が点になったよ。多分、今、魔力量のところ見てるんだろう。

 鳩が豆鉄砲を食らった様な顔ってあんな顔なんだろうな。

 

 ……あれ? 《板》がなくてもステータス見られるのか?


「アーリィ様、どうされました? 何か異常が?」


 ユニークな表情を保ったまま動きを停止したアーリィに、そう呼び掛けたエリスさん。

 異常といえば異常だろうな。色々と。


「……ふぁ? ……えっと、一、十、百、千、万…………一、十、百、千…………万」


 あ、二回確認した。


「アーリィ様?」

「えんねつたいせい・Ⅰ? ひかりたいせい・Ⅰ?」


 それは多分【炎熱系統完全耐性】【神聖系統完全耐性】が関係してると思います。


 ……あれ? 【神聖系統完全耐性】ってことは【神の悪戯】の看破条件である神聖属性魔力での干渉を完全に防ぐのでは? ……あれ、もしかしてこの組み合わせってベストマッチ?

 ……今更何を気付いているんだ俺。


「えんねつまほう・Ⅰ………………炎熱魔法・Ⅰ」


 あー……お姉さんは炎熱魔法が得意だったと言っていたな。


「……これが、【従魔契約】の効果……? こんなに、凄いなんて……」


 惚けた顔で、しかし宙を凝視したまま信じられないという風に呟いた。


 それ多分、相手が俺だからだと思います……。

 【従魔契約】は基本的に自分の能力の一部を互いに強化し合うって感じなんだろうな。俺がステータスを偽装してるから変なことになってる訳で。

 ……これってやらかしちゃったかな?


「――あっ! ……えへへ」

「ア、アーリィ様……?」


 急に笑い出すなよアーリィ、気持ち悪いじゃないか。

 見ろ、エリスさんでさえ少し引いている。


「えへへ……『契約:従魔:ノイン』だって。ほらほらっ、エリス」

「アーリィ様、《板》を使っていないのでそう言われても見えません。……無事に契約を結べたようで何よりです。おめでとうございます、アーリィお嬢様」


 宙を指差して蕩けたような笑顔のアーリィ。

 それを見たエリスさんも、優しい笑顔になりながら祝いの言葉を贈った。


「でへへへ~、ありがとうエリス」


 だらしない笑顔で喜びながら感謝の意を伝えたアーリィ。

 そこまで嬉しそうにされると俺も契約を結んだ甲斐があるよ。


「ねえねえ、ノイン?」

「ピヨ?」(何だ?)

「ノインのステータスではどう表記されてるの?」


 両手を体の前で握り、口角を上げ、ワクワクといった擬音が聞こえてきそうな表情でそう尋ねてきたアーリィ。


 そこが気になるのか。《板》使って確認したら? って言ったら怒るかもな。


「『契約:主:アーリィ・アカトラム』だよ」

あるじ……でへへへへ~」


 両手を頬に当てて全身をクネクネよじりだしたアーリィさん。


 ……嬉しそうで何よりですよ、我が主様。でも少し……いや、結構気持ち悪いです。


「ね、ノイン」


 しばらくしてクネクネを停止したアーリィが真顔で俺の名を呼んだ。


「ピヨ?」(どした?)

「私達、これからずっと一緒にいようねっ」


 目を細め、笑顔でそう宣ったアーリィ。


 俺は従魔になったからな、当たり前だ。


「ピィ」(はいよ)

「えへへ~♪」


 答えたらギュッと抱き着かれた。


 ちょっ、強いんですけど?! 

 それとなくエリスさんに視線を向け助けを……無理だな、生暖かい目をしてアーリィを見守っていやがる。


「ふふっ、私のノイン~♪」


 私のって……まぁそうだな、間違ってはいないか。


「ピィ」(うぃ)

「げへへ~♪」


 擁護できない程の気持ち悪い笑い方になってきたぞ、アーリィ。

 ガ行から始まる笑い声は止めて下さい。


「これからよろしくね、私の従魔さんっ♪」

「よろしく」

「もー、そこは”私のご主人様”って答えるところでしょー?」


 テンションぶっちぎってやがるな、めんどくせぇ。



 ……まあ、いいか。



「よろしく、ご主人様」

「――うんっ♪」





 あ、苦しいのでそろそろ放して下さい。







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