第 1羽 鳥、の目覚め
緩やかに意識が覚醒していくのが分かる。
俺はもうすぐ目覚めるのだと、感覚が訴えてくる。
まだ眠っていたい……この敷布団、気持ちいいんだよ……めっちゃ安心する。
……あぁ、分かったよ。起きればいいんだろ、起きれば。
そう急かさないでくれ、俺よ。何をそんなに興奮しているんだ?
あの時よりもよっぽどテンションが高いじゃないか。
……? ……あの時っていつだ?
あの時はあの時さ……俺が――
――死んだとき。
――ッ!!
カッ! と効果音が聞こえそうな勢いで俺は目を覚ました。
俺は……死んだのか?
記憶はすぐに頭の中で再生された。
うん、間違いなく死んだ。あれでは助からないのは確実だった。
なのに俺はここに居る。助かったのか……?
あれは遂先程のことのように思える。いやに記憶が鮮明なのだ。
「ピヨッピヨ?」(一体どういうことなんだ?)
……うん?
「ピヨ?」(何だ今のは?)
……。
「ピー、ピヨチチチ」(あー、あいうえお)
……。
視線を動かし周囲を確認してみる。
大量に咲き誇る赤い花、青い花。それらがユラユラと光を発している。
俺の下には大量の砂っぽいものが敷き詰められている。
洞窟の中の様な、岩肌むき出しの部屋。
赤と青の光が流動するように部屋内を満たしている。
そしてどこを向いても固定されたように視界の真ん中に入ってくる鳥の嘴のような物体。
……ふむ、まだ夢だったのか。正直意味が分からんが、夢だったら有り得なくもないだろう。夢の中から自発的に起きるにはどうすればいいのかね?
…………。
視線を下げる。
視界に映るのは砂のベッドっぽい物ともう一つ……鳥の足。
爪が前に三本、後ろに一本。三前趾足と呼ばれる猛禽類によく見られる足だ。
それが左右一本ずつ。
俺の右足を動かしてみる。……右の鳥足が動く。
俺の左足を動かしてみる。……左の鳥足が動く。
自分の側面を見るように視線を動かしてみる。
……うん、羽。
あ、これ覚めなくて良い夢だわ。