第 2羽 鳥、が蹴られる
よっこいしょと起き上がり、今の事柄について考える。
うーむ、何が悪かったのか? 少女は明らかに怯えている様子だ。
予定では好感度が鰻上りとなり、「お礼をさせてください、ワタクシ共の町へご案内いたします。ささっ、こちらへどうぞ」的な展開となるはずだったのだが……。
まさか怯えられて殴られるとはな。そんなエキセントリックな行為に及ばれる可能性を考慮してなかったわ。というか微塵も想定してなかったわ。
「……あ、あの……」
やはり急に目の前に飛び出したのがいけなかったのだろうか? あの時、あからさまにビクッってなってたしな~……。
それとも挨拶の内容が悪かったのか? “大きな声で元気良く”の部分は完璧だったと思うんだが……。
「えっと……あの……」
あ、そうだよ挨拶だよ。『良い天気ですね!』の部分がダメだったんだよ。これでもかってくらい曇りじゃねーか。しかも森の中で更に暗いし。あちゃーそこでミスってたかー……。ん? でも込めた意思はそうでも実際の発声はピヨピヨ言ってたはずだから内容は関係ないのか?
「……と、鳥さん!」
「ピ? ピッピ?」(ん? 呼んだ?)
……あれ? 今、鳥さんって言った? 何か普通に返事しちゃったけど、君日本語話せるの?
「ひっ、……あ、あの……もしかして、なんだけど……」
あれ? 日本語……じゃない? 何か違和感が……。
「た、助けて……くれたの? ……ですか?」
不思議そうな、というか、恐々といった様子で話し掛けてくる少女なんだが…………口の動きが日本語と違うな。英語……でもないな。しかしなぜか言葉の内容が理解できる。……こういうときは大体スキルが原因だったりするんだよな。どれどれ……
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名前:――
性別:俺『――』
種族:不死鳥(幼)
年齢:0歳
状態:健康
生命力: 18/18
魔力量: 102600/102600(57000+45600)
<固有スキル>
【■■】【■■■■】【■■】【■■■■】【■■■■】
【■■■■】【全言語理解】【超回復】【真眼】
【紅炎】【蒼炎】【聖炎】【天空】【神の悪戯】
<スキル>
【炎熱系統完全耐性】【神聖系統完全耐性】
【全状態異常耐性・Ⅴ】【消費魔力半減・炎熱】
【属性強化・炎熱】【魔導・炎熱】【最大魔力量増大・Ⅷ】
【業火】【生命感知】【魔力感知】【烈風】
【空間把握】【集中】【魔喰】【魔力圧縮】
【毒耐性・Ⅵ】【魔力制御】【姿勢制御】
【身体強化・Ⅰ】【風魔法・Ⅰ】
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……固有スキルに【全言語理解】ってのが追加されている。多分このスキルが発動したのだろう。だが……この位置はおかしい。
……っ! 読めなかったスキルが解放されたのかッ!?
今まで読めなかったスキルの数は七つ。今は六つに減っているがスキルの合計数は変化していない。……どうやら解放されたってことでいいらしいな。
「え……無視? でも返事……。あの、鳥さん……?」
この現象は今回が初めてだ、今までは無視してきたがこうなったからにはしっかりと考えるべきだな。
まずは【真眼】で……
【全言語理解】:
言語と認識された言葉を全て理解でき、一度理解した言語を習得する。
発声器官の違う言語を習得した場合、発声器官の有無に拘わらず魔力を消費して一時的にその言語を口にすることが可能となる。
……マジかよ、なんてチートだ。
言語研究家にでも知られたら、『状態:殺してでも奪い取る』になるぞ。
ふむふむ、成程。確かに少女が喋っていた言語を理解できているな。自然と頭の中に言語が浮かんでくるのだ。この状態で魔力を消費すれば俺もこの少女と同じ言語を口に出して喋ることができるのだろう。
「…………じゅ、【従魔契約】ッ!」
しかしそれはまだ止めておいた方が良いと思われる。鳥がいきなり自分たちの言葉を喋りだしたりしたら不気味さしか感じない。
しかし、なぜこのタイミングでスキルが解放されたんだ? 何か条件を満たしたのだろうか?
――ん、なんか首の後ろが痒いな? まぁいいか。
「……うぅ……、やっぱりダメなんだ……」
少なくともこの世界の人間の生活環境やらなんやらを確認して、喋る鳥がどんな風に扱われるかを知ってからでも遅くはないだろう。
「やっぱり……、もっと弱らせてからでないと……ダメってことだよね? ……うぅ、怖い……でも」
なら、やはりこの少女と友好的な関係を結び、そこからこの世界の人間社会に切り込んでいくべきか? ……っといかんいかん、考えに没頭して少女のことを忘れていた。えっと、どうしたんだっけ? たしか「鳥さん」って呼ばれて――ん? 今なんか物騒な言葉が聞こえ――
「いきますっ、――せいッ!」
「ごふぉっ!」
ズッシャアアアアァァァァァ…………。
………………な、なんでやねん……。なんでまた地面との摩擦を味あわなアカンねん……。
生命力: 1/18
瀕死やないか……俺。
生命力: 18/18
まぁ回復するんですけどね。
……しかし今の蹴りは本気でヤバかったな。素晴らしい角度で俺の腹部にめり込んできたから思わず魔力消費してヒト言語で悲鳴上げちまったじゃねえか。
ムクリと起き上がって少女に視線を向ける。
「ひッ! ……ぜ、全然効いてない?」
いやいや、親の仇かの如く効きましたよ。あと1で死んでしまいますってレベルまで追い込まれましたよ。死ぬか分からんけど。
さて、どうするか。流石に殺されかけても友好的に、って訳にもなぁ……でもなぁ。
彼女が俺に攻撃するのは何か理由がありそうなんだよな。というか結構本気で怖がられてるみたいだし。そして怖がらせたのは俺っぽいし。それで殴られたり蹴られたりするのは俺が悪いのかも知れない。
「も、もう一回――【従魔契約】っ!」
俺に両手を向けて、スキル名らしきものを叫んだ彼女。
……ほう、痒いな。胸毛が痒い。
名前からして攻撃スキルってわけじゃなさそうだな。というか無防備過ぎだろ、俺。
なんとなく危険、というか悪意? を感じないからさっきからやられたい放題だ。
っと、そういえばまだ彼女のステータスを確認してなかったな。女性のステータスを覗くのには抵抗があるんだが、ここまでやられたら仕方ない。どれどれ……
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名前:アーリィ・アカトラム
性別:♀
種族:ヒューノ
年齢:14
状態:通常
生命力: 237/760
魔力量: 12/793(610+183)
<固有スキル>
【従魔契約】【魔力の泉】
<スキル>
【火耐性・Ⅲ】【風耐性・Ⅳ】
【火魔法・Ⅳ】【風魔法・Ⅳ】
【最大魔力量増大・Ⅲ】【魔力回復速度上昇・Ⅲ】
【魔力感知】【魔力制御】【身体強化・Ⅱ】
【集中】【算術】
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「うぅ……何でダメなの? もう、魔力が……」
【従魔契約】ね、……成程。




