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第10羽   鳥、がやり過ぎる

 



/***************************/


 名前:――

 性別:――

 種族:邪結晶守護者・厄毒龍

 年齢:――

 状態:死亡


 生命力:     0/2183800

 魔力量: 35600/195600


/***************************/




 …………。




【真眼】で奴の一部のステータスが見られるようになりました。

 死亡状態になったら一部分だけ見えるようになりました。



 …………。



 えっと……、その……やり過ぎたようです……。


 眼下に見えるのは、山肌の斜面へと墜落した奴の残骸。

 奴の両翼、それとなんか石っぽいのだけが残っている状態だ。


 当初の作戦通り全力攻撃をかましたところ……こうなりました。


 ……一撃でした。


 どこかの偉い人が言ってたんだ、「強敵だと思うなら相手に全力を出させないことが重要だ」と。

 よって最初に全力で一撃を入れてみて、重傷を負わせれば僥倖、防がれるにしても相手の防御手段を知れる。全力攻撃が通用しないようなら逃走も。反撃してきたなら……、動きが素早ければ……、とか色々考えていたんだが……。


 えっと……コイツ、龍だったんだね、ハハッ。


 ……龍を一撃で殺っちゃったよ。


 訓練して強くなったとは思ってたけど、これほどとは思ってなかった。

 ……そういえば前回、俺は一切攻撃してなかったな。俺のステータスはどうみても攻撃型だ。ひょっとして前回の時点でも聖炎ぶっぱしてたら斃せてた?


 いや、それはないか。今回の一撃は訓練で幾つか開発した切り札の一つだ。

 あの時の俺では今回の威力の攻撃はできなかった。訓練の成果だと考えとこう。


 戦闘とはとても呼べるものじゃなかったが、無事に奴を斃すことができたんだ、素直に喜んでおくか。


 さて、何故死んだ途端奴のステータスが見えるようになったのか。

 死亡することにより妨害スキルが停止、もしくはスキル自体が消滅したのか? スキルが見えていないことから後者の可能性が高いか? 普通に考えれば死体がスキルを所持しているのはおかしいとも考えられるが……。

 サンプルが少なすぎて判断できんな。


 それよりやっぱり俺の生命力は普通じゃなかったようだ。

 この龍の生命力は俺のおよそ十三万六千四百八十七倍だ。龍と比べるのもどうかと思うがそれにしても低すぎる。

 某RPGの初期レベルの勇者でさえHPはもう少しあったはずだ。

 ……これ以上考えたら気が滅入りそうなので止めておこう。

 俺はまだ0歳。これが普通、これが普通……よし。


 それよりも気になるのはコイツの種族だ。


 種族:邪結晶守護者・厄毒龍


 龍だったことはまぁいい。問題は邪結晶守護者の部分。

 字面通りなら"邪結晶"なるモノを"守護"する存在だということだ。

 名前からして邪結晶とやらが世界にとって良いものだとは思えない。


 守護者ならば守護対象の近くで護衛を行うはずだ。

 ならば、この付近にその邪結晶とやらが存在するのか?

 と、そこで異変に気付いた。


 厄毒龍の落とした石っぽいのから黒いオーラのようなモノが沸き上がっていた。

【魔力感知】に反応したことから奴の残留魔力か何かだと思われる。


 聖炎で焼き払おうかと考えたが、何か様子がおかしい。

 立ち昇ったオーラが山の中腹方面へと漂っていっているのだ。


 何が起こっている? ……いや、落ち着いて考えれば予想はつくな。邪結晶守護者の残留魔力が何処かへと流れていくのだ。その先に何があるのか……十中八九"それ"だろう。仮に予想通りのモノでなかったとしても放置するには見逃せない状況だ。


 後をつけるか。

 俺はスキルを最大警戒態勢で展開する。油断などしない。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。……蛇はもう出たな、種族は龍だったけど。




 山の中腹部分、巨大なクレバスのように裂けたその谷間の底にそれは存在した。


 ……大きい。


 地から少し浮いており、光すら飲み込むかのような黒をしたそれ。

 俺とは決して相容れないであろうと感じさせる、闇を纏ったそれ。

 10m程の真円の外周を乱雑に削り取ったかの如き歪さがなんともいえない禍々しさを演出している。


 ――邪結晶。恐らく間違いない。


 周囲はまさに漆黒。【真眼】が無ければ闇以外何も見ることはできないだろう。

 残留魔力と思われるオーラを吸い込むようにして併呑している。

 そしてオーラを吸収し終わったと思ったら、その結晶体は大量の黒い靄のようなものを上方へと吐き出した。

 その靄は見る見る上昇していき…………遥か上空の雲と合流、一体化した。


 ……コイツが原因だったのか。この邪結晶なるモノがあの雲海を形成させている一因となっているようだ。

 そして邪結晶を守る守護者の存在。……自然と出来たシステムとは思えないな。

 何者かが意図してこの状況を作り上げた、と考えるべきか。


 そうだとして、俺はどう行動するか。

 邪結晶の機能はよく分からない。魔力を邪気っぽい霧に変換して上空へ吐き出すだけなのか他にも何かあるのか。



 俺は大空を飛び回りたい。しかしこんな陰気な雲に覆われた世界の空などゴメンだ。


 ……考えるまでもなかったな。

 大空を自由に飛び回ることが俺の夢だ。生まれ変わっても忘れなかった、変わらなかった夢だ。その夢をこんな訳の分からないモノに邪魔されて、はいそうですかと諦める訳がない。


 ――ぶっ壊してやる。


 対象は"邪結晶"。その存在そのものを対象へと指定する。

 確実にぶち壊す、この世界から存在そのものを焼き尽くしてやる。


 発動するは――【聖炎】。


 この世界で、今の俺が持つ最強の盾であり矛である。

 【聖炎】の発動と同時に、漆黒をその眩い銀光が切り裂いていく。


 ――闇と光の世界が入れ替わる。


 邪の名を冠する結晶体が、徐々にその銀炎の奔流に飲み込まれ――焼き失せていく。




 数分後……邪なる結晶体は聖なる炎によって、その存在を完全に焼失させた。








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