佐々木
ふぅっ。
お昼の水やりを終えて一息つく。
花屋を開いてからもう10年か。俺も歳とったなぁ。
真っ青な空に眩しい太陽。こんな爽やかな朝は久しぶりだ。
はなうた混じりにホースを道路に向ける。
「すいませ〜ん」
顔をあげると、女の人がこっちを見ていた。
「チューリップありますか?」
僕は少しびっくりして、硬直していた。
「え…あ、あぁ。ありますよ。ちょっと待ってて。あ、何色?」
「赤でっ。」
あの人は女優の丸山美菜子じゃないか!
「はい。赤いチューリップ。500円になります。」
「はいっ。ありがとう!」
素敵な笑顔だ。
丸山が去った後もずっとニヤけていたが、ふと正気に戻り、絶叫した。
「サインもらえばよかったあぁあああ〜っ!!!!!!!!!」
「大丈夫ですか?」
警官が、少し苦笑いでこっちを見ている。
「あ、はい。」
「あの、すぐそこのアパートで殺人事件があったのですが、その件に関して、何か知っている事ってありませんか?」
ああ、そういえば、今朝から騒がしいな。もう死体も腐ってるんじゃないか?
「申し訳ないですけど、何もわかりません。」
警官は、失礼しました。と言って去って行った。
今日は店じまいにするか。




