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また一歳児から始めます~多分異世界で~

海人のお正月

作者: 風見ミルク
掲載日:2026/01/01

山なし、谷なし、一歳児がおばあちゃんちでまったりお正月。



「「「あけまして、おめでとうございま~す!」」」

テレビでは新年特番が流れている。

軽快なBGMに乗せて、お笑い芸人たちが一斉に挨拶をしていた。

その番組を、俺――海人はおばあちゃんの家で見ていた。


今日は一月一日、元旦。お正月をおばあちゃんの家で迎えている。

転生してから二度目のお正月のはずだけど、前回の記憶はない。

前世の記憶が戻る前だったからかもしれない。

「お雑煮食べようね」

朝からテンション爆上げのお笑い番組とお雑煮。

それでようやく、お正月なんだという実感がわいてきた。


ただ、雑煮に餅は入っていない。

その代わりに入っていたのは――おふ。

これがこの家だけのレシピなのか、それとも一般的なものなのかは、よく分からない。


「海人様、お餅は誤嚥リスクが高いため、海人様の分には使用しておりません」


横から、落ち着いた声が補足する。

戦闘支援型家事ユニット、

戦闘メイドロボットの「マリ」だ。


「安全性を優先した、お正月仕様のお雑煮となっております」

……うん、知ってた。

俺は一歳児だからな。


「海人ちゃん、あけましておめでとう。今年もよろしくね。はい、これ」

おばあちゃんが笑顔で、小さな布の包みを差し出してきた。


「おばあちゃん、ありがとう!」

俺は受け取って包みを開ける。

中から出てきたのは、小さなコインが三枚。

……なんだこれ?

お年玉?


「お母さん、ありがとう。良かったね、カイ君。あとでカードに入れておこうね」

ママンがそう言うと、


「電子マネー口座への登録を推奨します。紛失リスクが低下します」

すかさずマリが追撃してきた。

「ありがとう、マリ。あとでね」


ママンが慣れた様子で返す。

カード?

やっぱりお年玉なんだな。


「おじいちゃんも、カイト君にプレゼントだぞ。ほら」

今度はおじいちゃんから、同じような布の包み。

中に入っていたのは、小さな石が三つ。

緑色が一つ、黄色が二つ。


「……! お義父さん、これ……こんな貴重なものを、本当にいいんですか?」

ママンの横で緑茶を飲んでいたパパンが目を見開く。


「俺は使わないからな。でも持っていればお守りくらいにはなるだろ?」


……これ、なに?

「これ、なに?」


俺は思ったことがすぐに口に出る。

幼児だからな。

今年の夏から少しずつ言葉を話し始めた俺は、なんでも聞くことにしている。


まだこの世界の常識がよく分からないからだ。


俺はこの世界に転生して、もうすぐ二歳になる。

もうすぐ二歳という事はまだ一歳だ。


何も知らなくて当たり前なのだ。


「これはな、緑の石と黄色の石だ」


おじいちゃんが説明する。

うんそうだね!緑色の石と黄色の石だ。

見たまんまだよね。

(で、何に使うの?)


「もう、お父さんってば説明下手なんだから」

ママンが苦笑しながら続ける。


「カイくん、これはね。植物の成長を助けてくれる石と、怪我が治りやすくなる石だよ」

「せいちょう……たすける? けが……なおりやすくなる?」

怪我が治りやすくなるって、パワーストーン?

スピリチュアル的な?


緑いろの石は肥料?

植物の根元に一粒置いておけばゆっくり溶けて良い花が咲きます、みたいなやつ?


首をかしげる俺にマリが答える。


「補足します。該当する魔石は、植物成長促進用が一つ、自然治癒促進用が二つ。

一般市場価格は――」


「マリ、値段は言わなくていいから」

パパンが慌てて止める。

「了解しました」


……今、絶対すごい金額言おうとしてたよね?


それに魔石?……魔石だ!

(出た! ファンタジーアイテム!

一見、普通の現代社会なのに、こうしてところどころにファンタジー要素が散らばってるんだよな。この世界。)


「良かったなぁ、海人」

パパンが俺の頭をなでながら、石を見せてくれる。


「これはな」

パパンが緑の石をつまむ。


「たまに魔物から取れる魔石で、植物を数日で収穫できるくらいに成長させられるんだ」


「正確には、平均成長速度を約二十倍に加速させます」

マリが淡々と訂正する。

二十倍!?

それもう農業革命じゃん。二十日大根は種をまいて翌日収穫ってこと?


「カイ君、まだよく分からないよね。袋に入れておこうね」

ママンが石を袋に戻す。


いや、待って。

もっと見たい!魔石とかワクワクしかない!

「ぼく、もっとみる!」


「却下します」

マリが即答した。


「誤嚥リスクがあります」

……ですよね。

「みるだけ。さわらないから」


「視認距離を保てば可能です」

一瞬、希望が見えたが、

「ですが、現在その距離を維持できる年齢ではありません」

……論理的に潰された。これはごねても手に入らないパターンだ。


「もう少し大きくなってからね」

ママンが優しく言う。

分かってる。


俺は一歳児。安全第一だ。

でも――

(早く大きくなって、魔石じっくり観察したい)

そう心に誓いながら、

俺の二度目のお正月は、にぎやかに過ぎていった。



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